子どもたちの目にはどんな姿が焼き付けられただろうか。将棋の藤井聡太JT杯覇者(竜王、名人、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が11月19日、日本シリーズJTプロ公式戦の決勝戦で糸谷哲郎八段(35)に149手で勝利し、連覇を果たした。本棋戦では各会場での対局勝者による来場者見送りが恒例となっているが、藤井JT杯覇者も約40分に渡る“神ファンサ”で対応。来場者は直接祝福の言葉を伝えるとともに、わずか数メートルの至近距離で八冠王を目にすることができる至福の時間となった。
前人未踏の八冠制覇から約1カ月。藤井JT杯覇者は、連覇のかかる日本シリーズに臨んだ。本棋戦は前年覇者、タイトルホルダー、賞金ランキング上位者から12人が選出されるトップ棋士たちによるトーナメント戦とあり、誰と対戦してもゴールデンカードに。決勝戦では、初優勝を狙い勢いに乗る糸谷哲郎八段(35)との対戦となった。
日本シリーズは公開対局として開催されるため、タイトル戦など通常の公式戦とは異なる環境で指すことになる。勝ち上がるとともに観戦者と熱気が高まり、決勝では最高潮に。藤井JT杯覇者も「これだけ多くの方に直接観戦していただくという環境は他にはないので、力は入るところがある」。さらに、「封じ手の場面では見ている方のどよめきがあったり、反応も感じる部分がある。盤面には集中していますが、公開対局は普段の対局とは違う魅力がある」と語った。
プロ公式戦の前に「こども大会」も開催されているとあり、多くの子どもたちも憧れのトップ棋士の雄姿を目に焼き付けた。決勝戦は、角換わりの出だしから大熱戦へと展開。終盤では、糸谷八段が入玉を目指したが藤井JT杯覇者が冷静な対応を見せて勝利した。連覇を達成した藤井JT杯覇者は「苦しい中でも粘り強く指せた。優勝という結果を嬉しく思っています」と話し、喜びの気持ちを来場者へ報告した。
本棋戦では、勝利者による来場者のお見送りが名物となっている。ファンにとっても棋士にとっても貴重な機会とあり、会場は最後まで熱気は冷めない。決勝戦後には、約40分間にわたり藤井JT杯覇者が来場者のひとりひとりに会釈して退出を見送った。特に優しい目線を送るのは“未来の棋士”とも言える子どもたちへ。緊張しつつも「おめでとうございます」と連覇を祝福する子どもたちには、手を振って応える姿が幾度となく見られた。
間近で目にすることができるトップ棋士は、子供たちにとって憧れそのものだ。藤井JT杯覇者をはじめ、今期のJTプロ公式戦には永瀬拓矢九段(31)、菅井竜也八段(31)、斎藤慎太郎八段(30)と過去にこども大会を経験した棋士たちが“凱旋”出場している。彼らを夢見た子どもたちが棋士となり、この舞台に帰ってくる日もそう遠い未来ではないはずだ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)