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 WWEスーパースター中邑真輔と、ABEMAプロレスアンバサダーでWWEホール・オブ・フェーマー武藤敬司のスペシャル対談。後編は今後PLE(プレミアム・ライブ・イベント)のPPVも本格化していく中で、日米のプロレス界の展望と可能性を語ってもらった。

聞き手・文/堀江ガンツ

武藤 真輔は今の日本のプロレスを少しは知ってる? どういう奴がやってるかとか。

中邑 X(旧Twitter)やInstagramで目にするくらいですね。

武藤 もし真輔がWWEのスカウトマンだったら、どんなヤツがほしい?

中邑 とりあえずサイズのあるヤツがいいなとは思います。武藤さんが「俺、デカいフェチだから」って言うのと一緒で、そこは日本人のイメージを崩すっていう意味ではすごく大きいんですよ。僕もミート・アンド・グリートでファンの人たちとしゃべったりするときに、「シンスケってこんなにデカいと思わなかった」ってよく言われるんです。

武藤 昔からアメリカで成功する日本人レスラーはデカかったよね。キラー・カーンとか(ジャイアント)馬場さんとか。マサ(斎藤)さんだって、横幅はデカかったから。それが、どこからか崩れたんだな。

中邑 まあでも、世界的なレスリングスタイルの変化とともに、身体はあまり大きくなくても動くっていう選手が多くはなってますけどね。

武藤 そう考えると、今の日本にはなかなかデカいのはいねえもんな。

中邑 あとはガッツのあるヤツですね。アメリカに来る上で、不安を挙げればキリがないんですよ。たとえば言葉の問題にしてもそうだし。でも、活躍して、実力を示すことができればビザも取得してもらえるし。まずは挑戦するしかないんだろうな、とは思います。

――10月からWWEが日本でも放送開始したことによって、日本のファンや選手にとってWWEが身近なものになりつつあるというか。これから現実的な夢として、目指すレスラーもより増えてくる気もします。

武藤 俺もWWE目指したい人の新人発掘番組みたいなのやろうかな? ロスでやったWWEのトライアウトを観に行ったんだけど、すごかったよ。人数もすごかったし、有望なヤツがたくさんいた。

中邑 オリンピック選手や格闘技のチャンピオンとか、女子はチアリーダーとか、このまえクビになっちゃったけど元ミス・インディアナの女性とかもいるし。プロレスとは畑がまったく違うところからでもWWEを目指す若者が多いですね。

武藤 今なんか感覚的に海外が近いじゃん。俺の時は遠かったよ。だって、携帯電話がないんだよ!?

中邑 僕も最初に海外に行った頃はテレホンカードでしたね。まず交換手につないでもらってっていう時代だったんで。いまはそういう障壁が少ないと思うんですよね。それこそ知らない道でもスマートフォンが一個あればナビで行けますし。

武藤 昔は地図を買ってそれでドライブしてさ。柄が悪いところに行ったら、道を聞いても反対のことを教えるからな(笑)。

中邑 そういう時代を経て、いまは知らない街に行ってもお店もジムもすぐ見つけられますから。

武藤 地球上がグローバルな感じになってる今だからこそ、プロレスもグローバルに考えていったほうがいいよな。

中邑 でも、逆に危険なのが、実際に行ってないのに知った気になっちゃうところですよね。やっぱり生で味わう体験がどれだけ貴重かっていうことを知ってほしいなと思います。特にコロナ禍でバーチャルが増えてきたとは思うんですけど。だから若い人たちにはマジで行ってみてくれとは思いますね。

ーーいま世界中のマーケットでは事実上プロレス=WWE、もしくは「WWEとその他」という状況になってると思うんですけど。WWEの無料放送が始まったことによって、日本もそうなっていく可能性は大きいと思いますか?

中邑 でも、日本のプロレスはいい意味でガラパゴスだと思うんですよ。ガラパゴスがダメだと言ってる人もいますけど、他から影響を受けづらかったからこそ独自の文化も発展してきた思うし。世界に類を見ないコンテンツを生み出す力は非常に高いと思うんですね。日本のプロレスが海外のプロレスにも多々影響を与えてますので。

 だから放送が始まったことによって影響は受けるかもしれませんけど、WWEのビジネスモデルとかいいところは盗みつつ、独自のものを追求していったほうがいいんじゃないかと思うし。そこにWWEが入って共存できればいいと思いますね。だって、いくらアメリカに住んでいてもやっぱり和食は恋しくなりますから(笑)。

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■中邑「『レッスルマニア』はオリンピック招致に近いシステム」武藤「真輔が現役でいる間に日本で『レッスルマニア』をやりてえよな」

――11月26日のPLE『サバイバー・シリーズ』から、WWEのPPVも始まります。日本でも武藤さんの引退試合をきっかけにプロレスをPPVで観る習慣が根付きつつありますけど、アメリカではもう定着しているわけですよね。

中邑 いろんなスポーツのPPVを買って、みんなで集まって観るというのが普通に定着してますね。家族みんなで観たり、誰かの家に集まったり、バーに行って大勢で観たりとか。そういう空間を共有するための手段としても使ってほしいなと思いますね。

武藤 これから日本でもそれが主流になっていくと思うんだよ。実際にウチの子どもとかは地上波のテレビは観なくなってるのに、WWEは観てるからさ。若者はああいうのを簡単に購入するんだよ。

中邑 簡単に買えるシステムが出来上がっているし、「体験を買う」ということが普通になってるということですね。

武藤 でも、どうせなら生で体験してほしいから、真輔が現役でいる間に日本で『レッスルマニア』をやりてえよな。たぶん向こうがやる気になったらすぐにでも可能だよ。プロレス界だけじゃなく、日本の経済的にもいいと思うよ。

中邑 『レッスルマニア』は市とかが招聘していて、規模は違いますけどオリンピック招致に近いシステムなので、世界中から立候補の声は上がってますね。

武藤 『レッスルマニア』を東京で開催したら、世界中から東京まで観に来るわけだから、その経済効果を説明したら小池百合子都知事だって乗ってくるだろ(笑)。

――『レッスルマニア』開催都市は、本当に街中プロレスTシャツだらけになりますもんね。武藤さんも今年、実際に行っていてあらためてその規模には驚きましたか?

武藤 そりゃそうだよ。フットボールのスタジアムを2日間連チャンで満員にして16万人だよ。その前後にも小さめの会場でもやるけど、それでも日本武道館くらいあるじゃん(笑)。そこで俺はホール・オブ・フェイムのイベントやったんだから。で、『レッスルマニア』の翌日もあるんだよね。

――『レッスルマニア』翌日は『RAW』をやるのが恒例ですね。

武藤 それにひっかけて、いろんなインディー団体がその周辺で興行をうってるんだから、もうロサンゼルス中がプロレスなんだよ。

――『レッスルマニア』じゃなくてもPLEを東京は十分ありますよね。

中邑 アメリカに行ってから、「お前、日本人なのか? 俺は日本に行くのが夢なんだ」って、いろんな人に言われますよ。人生のバケットリストのうちのひとつに「日本に行く」っていうレスラーやファンは多いので。だから、「どれだけ俺が四天王プロレスが好きなのか」「どれだけ俺がケイジ・ムトーが好きなのか」っていうのを僕に一生懸命伝えてくれる同僚とかもいるんですよ(笑)。

ーー日本の90年代プロレスが大好きなWWEスーパースターが(笑)。

中邑 たとえば、わざわざ小橋建太Tシャツを着て、「見てみろ、シンスケ!」って言う奴もいるんです。グンターっていうんですけど(笑)。

――“皇帝”は小橋さんがお気に入り(笑)。

中邑 「それ海賊版じゃねえか。正規のジャイアントサービス製じゃないよ」って言っておきましたけど(笑)。だから日本のプロレスに対するリスペクトはまだまだありますね。

――ファンだけでなく、WWEスーパースターの中にもあるわけですね。

中邑 いま僕らの世代でたとえば90年代の日本のプロレスを観ようとしたら、海賊版のVHSビデオをわざわざ借りたり、プロレス雑誌の文通コーナーを通じて手に入れて観ているヤツらばかりなので、筋金入りなんですよ。今みたいにネットでちょろっと検索して観るヤツらじゃなくて、ホントに変態なんです(笑)。

――マニア度が違うわけですね(笑)。

武藤 それを思えばいまは海外のプロレスがリアルタイムで簡単に観られるんだから、いい時代だよ。そういうボーダレスの時代を生きている真輔には、これから日本と海外の懸け橋として、ますます頑張ってほしいよ。今回も日本は1泊か2泊するだけで、アメリカに帰ってすぐ試合なんだろ?

中邑 月曜日にRAWがありますからね(笑)。

武藤 大変だけど、身体だけは気をつけて頑張って! 俺もなるべく観るようにするからさ。

中邑真輔が初激白 WWE挑戦を後押しした妻の一言 武藤敬司との対談で明かした本音 | インタビュー・特集 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ
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