かつて日本のリングでも活躍したWWEスーパースター、シェイナ・ベイズラーが日本時間11月26日に開催されるPLE(プレミアム・ライブ・イベント)『サバイバー・シリーズ』のPR記者会見のために来日。会見後、独占インタビューに応じ、WWEの魅力と日本への想いを語ってくれた。

聞き手・文/堀江ガンツ


――シェイナさん、よろしくお願いします。

「ハイ。ヨロシクオネガイシマス。アリガトウゴザイマス」

――日本語の発音がすごくいいですね。

「6年前に少し日本に住んでいたので。この前、サウジアラビアの『クラウンジュエル』からカイリがWWEに戻ってきて、彼女と久しぶりに話したら自分の口から日本語がどんどん出てきて、「意外と憶えてるな」って思ったばかり(笑)」

――その日本にWWEスーパースターとして戻ってきた気持ちはいかがですか?

「すごくうれしいです。日本が大好きなので、WWEのパートナーシップから、いろんなことが広がっていったらいいなって思います「

――シェイナさんは日本では、「ジョシュ・バーネットの教え子」という印象が強いですが、ジョシュとトレーニングするようになったきっかけはなんだったんですか?

「それに関してはおもしろい話があるの。ジョシュは女子のMMA(総合格闘技)がまだマイナーだった時代から、女子MMAをすごくサポートしてくれていた人だったので、ずっと会いたくて。初めて会ったのは、2007年にコスタリカで開催された『ボードッグファイト』という大会。『いつも女子格闘技を応援していただいて、ありがとうございます』って挨拶に行ったの。

 それでいろんな話をして。その時、私はトランプのマジックができるから、スペードのクイーンを使ったマジックをやってみせたら、それ以来、ジョシュが私のことを「スペードのクイーン」って呼ぶようになって。そこから私のMMAでのニックネームが“The Queen of Spades”になったの(笑)」

――そんな由来があったんですね(笑)。そこから一緒に練習するようになったんですか?

「私が『一緒に練習したい』って言う話をしたら『「カリフォルニアに来なよ」って言われて。それまで別のところに住んでいたんだけど、ジョシュのジムがあるカリフォルニアに引っ越して、そこから一緒にトレーニングをするようになったんです」

――ジョシュとシェイナさんは、ともにプロレスファンでMMAトップファイターという共通点がありますよね?

「最初はジョシュがプロレスを好きだなんて知らなかったの。私はもともとアマチュアのフォークスタイルレスリングから始めて、それからブラジリアン柔術に変わっていったんだけど。ジョシュはキャッチレスラーでしょ? 彼に『柔術じゃなくて、キャッチレスリングをやれよ』『プロレスのサブミッションはMMAで使えるんだ』って言われて、そこでジョシュがプロレスを好きだってことを知ったの。私は小さい頃からプロレスが好きだったし、ジョシュが点と点をつないでくれたというか、MMAとプロレスの橋渡ししてくれた気がします」

――憧れのプロレスラーはいましたか?

「小さい頃は、“マッチョマン”ランディ・サベージが大好きで、フォークスタイルのテクニカルなレスリングを知ってからは、ジョー・マレンコとディーン・マレンコのマレンコ兄弟、ウイリアム・リーガルね」

――女子で憧れたレスラーはいなかったんですね。

「私が小さい頃は、アメリカでは女子プロレスがあまり人気がなかったの。WWEでも女性で活躍した人といえば、たとえばマッチョマンのマネージャーだったクイーン・シェリー(マーテル)がいたけれど、私はクイーン・シェリーじゃなくて、マッチョマンになりたかった(笑)。

 でも、私は女だからマッチョマンみたいにはなれないと思ってたんだけど、ある時、全日本女子プロレスのVTRテープを取り寄せて観たら、すごいハードヒットのプロレスをやっていたので驚いて、「女の子でもマッチョマンみたいな人たちがいるんだ!」って感動したの。私が女子プロレスラーになりたいと思った原点は、そこかもしれない」

――日本の女子プロレスからインスパイアされたんですね。

「すごく影響を受けています。それは私だけじゃなく、WWEにいる多くの女子レスラーがそう。日本の女子プロレスを観ていて自分もやりたくなった子か、メキシコのルチャを見てやろうと思った子に二分されるくらい。私は完全に日本の女子プロレス派ね。プロレスだけじゃなく日本のMMAもパンクラスやPRIDEを観ていたから、日本は私のルーツだとも思っています」

――シェイナさんは、鈴木みのる選手のファンなんですよね?

「そうなの! スズキさんは私のいちばん好きなレスラーのひとりです。もう大好き! スズキさんとはおもしろいストーリーがあるの。ある時、イヨ(・スカイ)から電話がかかってきて、『今から一緒にトレーニングしよう。その後、ご飯も行きたいから来なよ』って言われたの。その時、私は疲れていて、体を休める時間に充てるつもりだったから『ご飯だけ行こうかな』って言ったら、『それはダメ。トレーニングから絶対に来て』って強く言うから仕方なくジムに行ったら、イヨが『この人が今日のあなたのトレーニングパートナー』って言って、そこにスズキさんがいたの。

 『えーっ! なんでここにいるの!?』って、もうビックリ。スズキさんはプロレスの試合で(フロリダ州)オーランドに来ていて、イヨが私を驚かせようとして呼んだみたい。でも、一緒にトレーニングさせてもらって、すごくうれしかった」

――以前、鈴木さんに話を聞いたら「スパーリングやったけど、シェイナはめちゃくちゃ強い」「今までやった女子選手でいちばん力が強い」って言ってましたよ。

「でも、スパーリングでやられたのは私のほうだから。私が柔術の選手とスパーリングをすると、柔術の選手はキャッチレスリングを知らないからキャッチの技がばんばん極まるんだけど、スズキさん相手だとそれが通用しないの(笑)。私はジョシュやビル・ロビンソンからキャッチレスリングを習って、スズキさんもキャッチレスラー。師弟の系譜図で繋がっている気がする」

――ジョシュさんの先生がビル・ロビンソンで、鈴木さんの先生はカール・ゴッチ。そしてロビンソンとゴッチはかつて、イギリスのスネークピットでビリー・ジョイスからキャッチを学んだ同門ですからね。シェイナさんがMMAからプロレスに転向する時、どんなきっかけがあったんですか?

「私はもっと早くプロレスを始めたかったんだけど、ジョシュとロビンソンが本当の強さを身につけるまでプロレスをやらせてくれなかったの(笑)。あの二人は「プロレスというのはキャッチレスリングの黒帯がやるべきもの」という考え方の人たち。

 だから技術を磨いて強くなってUFCで闘ったあと、これからどうしようかなと思っている時、ジョシュが『少し休んでからプロレスやりなよ』言ってくれたので、それでプロレスに踏み出すことができた。そしてプロレスにしっかりと取り組んだことで、またMMAへの愛情もよみがえってきたの。いまは趣味でMMAのトレーニングをしながら、視聴者としてUFCなどを楽しんでますね」

――WWE参戦前、2017年に日本のプロレスを経験したことは、シェイナさんにどんな影響がありましたか?

「私は日本で試合をしたことで、自分のプロレスに自信を持つことができたの。当初、プロレスをやるなら見栄えのする飛び技とかをたくさん覚えなきゃいけないと思っていたんだけど、ジョシュから『おまえがやってきたことは誰もできないことなんだ。その身につけた技術を使うべきだ』と言われて、日本のファンは私の技術やバックグラウンドを理解してくれた。それによって、私のスタイルができあがったと思っていますね」

――そして2017年9月からWWEに参戦し始めて、どう感じましたか?

「最初はスケールの違いに驚きの連続で、試合で入場するとき、観客席を眺めながら『こんなにもお客さんがいるんだ!』って心の中で思っていた。WWEに上がり始めてから自分の生活も変わって、以前は日本にいてもお金をそんなに持ってなかったから、好きなフィギュアもそんなに買えなかった。でも、今はいっぱい買えるようになったから、今回の来日ではおにぎりとフィギュアは必ず買おうと思ってます(笑)」

――ここ数年のWWEはウィメンズディビジョン(女子部門)の巨大化が顕著です。この流れについてどう感じていますか?

「今、WWEには女子の世界最高峰のレスラーが揃っているので、すごく充実していると思う。さらにNXTには、次世代を担う才能あるアスリートもたくさんいる。私はNXTのチャンピオンの時にメインロースター昇格の話が来たんだけど、いまのトップ選手はベッキー・リンチもベイリーもシャーロット(・フレアー)もみんなそこから出てきた人たち。彼女たちがウィメンズ・ディヴィジョンのレベルを底上げして、さらに下の子たちもよくなってきていますね。

 私は子供の頃、『マッチョマンになりたい』と思っていたけど、女だからなれないんだと思っていた。でも、いまの女の子たちは私たちを見ることができる。だから今後、女子プロレスラーになりたいと思う女の子たちもどんどん増えていくと思うし、これからすごい才能がもっともっと現れるはず」

――今、シェイナさんたちの世代は女子の歴史を作っている最中ですよね。

「そうね。このクレイジーな状況は、自分でも『これ、ヤバくない?』って思うくらいで(笑)。今後、どれだけ女子プロレスが発展するのか、私自身、すごく楽しみです」

――今「スマックダウン」には、アスカ、イヨ・スカイ、カイリといういずれもシェイナさんと深い関わりがあった日本人スーパースターがいます。彼女たちの活躍をどう見ていますか?

「カイリは自分のキャリア最大のライバルで、イヨとアスカは世界最高のレスラー。とくにイヨは最近、個性が際立ってきていてすごく良くなっている。アスカとカイリも他にはいないタイプなので、彼女たちのユニット『ダメージ・コントロール』はすごくいいチームだと思いますね。彼女たちとは、闘えば必ずいい試合になるので、今後も闘っていきたいライバルたちです」

――日本では無料放送が始まって以来、これまでWWEやプロレスを観たことがなかった人もWWEを観るようになってきていいます。ビギナーのファンに「WWEはこう楽しんだほうがいいよ」というアドバイスはありますか?

「まず、WWEは“点”で観るのではなく、“線”で観るもの。1試合の勝ち負けより、ストーリーが重要だということを理解してほしいです。だから、そのストーリーを理解するためにまずは連続して観てほしい。テレビの連続ドラマの1話だけを観ても本当の良さはわからないのと同じで、毎週続けて観たらその魅力がきっとわかると思います」

――WWE熱がさらに高まったら、ぜひ数年ぶりとなるWWE日本公演が実現してほしいですね。

「それは多くのファン、そして多くのWWEスーパースターが思っていることだと思います。私自身、日本でプロレスするのも大好きだったから待ちきれない。早く日本に“凱旋帰国”したいですね(笑)。

――では、日本のWWEユニバースにメッセージをいただけますか?

「私にとって日本は特別な場所です。近い将来、WWEのシェイナ・ベイズラーとして成長した姿をお見せすることを約束します。ぜひ、会場でお会いしましょう!」 

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