「貧しさ」が世界を動かしていく… “オランダのトランプ”が躍進! 下院選挙で極右政党が勝利した要因とは?
【映像】勝利演説をする“オランダのトランプ” ウィルダース氏

 オランダ下院総選挙で難民の受け入れに反対している極右政党が勝利し、第1党になる見通しだ。

【映像】勝利演説をする“オランダのトランプ” ウィルダース氏

 22日に投開票されたオランダ下院(定数150)の総選挙。公共放送によると、極右の「自由党」が改選前から20議席増やし37議席を獲得する躍進で、第1党の座を確実にした。自由党はイスラム系移民の排斥やモスクの禁止などを掲げており、党首のウィルダース氏は過激な発言から“オランダのトランプ”と呼ばれている。

 オランダでは近年、アフリカや中東からの移民や難民が増え続けており、今回の選挙でもその受け入れが大きな争点に。ウィルダース党首は反移民感情を背景に支持を伸ばし、「住宅不足の要因は難民申請者にある」などと主張してきた。支援者を前にした“勝利演説”でも、「難民と移民の津波に終止符を打つ」と宣言し、今もその強硬な姿勢を崩していない。

 また、反EUを明言し、新規加盟の阻止などを訴えているほか、自国の防衛に武器が必要だとしてウクライナへの軍事支援を停止すべきとも繰り返し主張している。

 “オランダのトランプ”ことウィルダース氏は首相になるのか? そしてこの選挙はヨーロッパにどのような影響を及ぼすのか? オランダ政治史が専門で千葉大学教授の水島治郎氏に話を聞いた。

■オランダがヨーロッパ統合に水を差す?

 “自由党の勝利の要因”について水島氏は「『増加する移民・難民ではなく自国民を守るべき』という自由党の主張が支持を集めたが、オランダ人が極右を強く支持したわけではない。背景にはウクライナ情勢などによる物価上昇・生活困窮があり、この点を解消できない既存政党が信頼を集められていないのだ」と分析した。

 極右政党・自由党とはどんな理念を掲げているのか?

 水島氏は「ウィルダース党首の主張の基本は反イスラム・反移民・反難民にある。またヨーロッパ統合にも批判的で、イギリスのブレグジットと同じく、国民投票によりEU離脱を決めるべきだと主張している。なお、ウィルダース党首は政党名の由来について『イスラムによって西洋文明の護ってきた自由が脅かされようとしている。その自由を守るために自由党を設立した』と訴えている」と説明した。

 過激な政策を掲げる自由党が政権を取れば、本当にその主張が取り入れられるのか?

 水島氏は「オランダは常に連立政権なので、独自の政策をただちに実行できるわけではない。単独過半数にほど遠い自由党は連立交渉の中で、各党が妥協を重ねることで、ようやく政権が樹立できる。今回の選挙後、ウィルダース党首は政権入りを目指すことを明言しているため、極端な政策がいきなり実行される可能性は低い。そこは大統領制のアメリカとは異なる点だ」と説明した。

 また、ウィルダース党首の人物像について「今年60歳のウィルダース党首は攻撃的な言葉遣いで敵と味方がはっきり分かれている政治家。自国第一主義を掲げ、イスラム批判を明言し、移民難民に厳しい規制をかけていこうとする姿勢はアメリカのトランプ前大統領と重なる。また、リベラルやインテリを敵視しながら自分を“庶民”の味方であると称するところ、オールバックの金髪というユニークな髪型もトランプ前大統領と共通する点だ」と述べた。

 この選挙結果がヨーロッパに与える影響については「ヨーロッパの選挙は互いに結果に影響を与えあっているため、特にEU各国は強い衝撃を受けている。特に来年はEU加盟国でヨーロッパ議会選挙が控えている。オランダの動きがヨーロッパ統合に水を差し、またウクライナ支援でも足並みの乱れが出てくる可能性がある」と分析。

 さらに、アルゼンチンで中央銀行廃止や臓器売買の合法化などを掲げる、やはり極右とされる候補者、ハビエル・ミレイ氏が大統領に当選したことを引き合いに出し、「今は政治のアウトサイダーが表舞台に出て主役をつかみ取る、いわば『アウトサイダー・ポリティクス』の時代なのかもしれない。ヨーロッパに限らず、今の世界で生じている変化に目をむけることが重要だ」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)

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