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AIが生成した『ブラック・ジャック』の新作
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 漫画の神様・手塚治虫さんの作品『ブラック・ジャック』がAIを使って蘇った。『ABEMAヒルズ』は、“漫画の神様“に挑んだ約5カ月の制作期間に密着した。

【映像】AIが生成した手塚作品の新キャラクター

 2023年7月、第1回の制作会議。映画やドラマを手掛けてきた著名人や、手塚治虫さんの長男の手塚眞さんら、手塚作品を知り尽くした面々が顔を揃えるなか、人工知能が専門の慶應義塾大学・栗原聡教授は「TEZUKA2023プロジェクト」ついて次のように語った。

「人工知能を使うことで良質なコンテンツがいっぱい出来る。『こんなことがしたい』という人間の思いを人工知能がどうサポートできるかが、元々の目的だ」

 今回開発されたAIは法外な代金と引き換えにどんな手術も成功させる天才外科医を描いた『ブラック・ジャック』200話分など、手塚治虫さんの過去作品を学んでいる。AIと人がタッグを組んでストーリーと作画を進めていくという。

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 まずはストーリー作り。例えば、環境問題をテーマにして登場人物の設定をした上で、AIに対して「地球を治す」と指示をいれると短いストーリーがいくつか出力された。そこからやり取りを繰り返すことで完成させていくそうだ。AIを初めて使った感想について、TEZUKA2023の総合ディレクターを務める手塚眞さんは─。

「なるほどなるほど。非常にシンプルだ。今見た限りで『使い物にならない』という感じではない。ただ、自分が求めているものではない」

 8月の会議には、AIを使って作ったストーリーをそれぞれが持ち寄った。

「AIと20時間くらいこのプロットで向き合いました」(手塚プロダクション・日高海さん)

「『私はこう思います。その意図はこれです』とAIに伝えると、意図を汲み取った上で新たな案を提示してくれる」(脚本家・舘そらみさん)

 プロのクリエイターたちがAIと向き合い、作り上げたストーリー。最終的に採用されたのは、映画監督の林海象さんの案だった。テーマは「アンドロイド」で、過去の作品でも登場した人工心臓の手術にブラック・ジャックが挑戦するというものだ。

 ストーリーができると、取り掛かるのはキャラクターの生成。9月に行われていたのは、今回の物語で核になる「マリア」というキャラクター作りだ。性別やサイボーグといったキーワードをAIに入力し、手塚作品らしい「顔」をいくつも生成。顔を決めた後は身体や細かい部分の設定を作り込んでいく。

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 キャラクターを作ったのはAIだが、最終的に漫画を書き上げ魂を吹き込んだのは人の手によってだった。その理由について手塚さんは次のように説明した。

「AIが作った絵はそのままでは使っていない。AIが生成した絵を『商業的に使用していいのか』という議論や法的整備の問題もある。なので最終的には人間の描いた絵を使っている」

 AIと人間で半年あまりの時間をかけ制作された新作は11月にお披露目された。アンドロイド「マリア」の心臓にできた腫瘍の手術。AIでできた完璧なはずの「機械の心臓」がなぜ病気に侵されたのか―─。テクノロジーで命を長らえることの是非や、人間とは何かを問う内容だという。

 今回のプロジェクトにおける制作の半分以上はAIが担ったが、その“限界”も浮き上がってきたと手塚さんは語る。

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「感情って実はすごく抽象的なものでデータ化できない。感情を表現した“漫画の絵”は、学習できるがその裏に込められた感情については、分析もできなければ解析もできない」

 絵の裏にこめられた感情を効果的に伝えるための“演出”は、人間の手でないと難しいという。

「手塚治虫の漫画のすごさとは演出のすごさ。ブラック・ジャックの手塚治虫がやっている演出は“演出の極み”だ。非常に複雑な話を書いてるはずなのに、それがスーッと読者に入ってくる描き方をしている。そういった演出を一言や一コマにキュッと集約して描けるというのが手塚治虫のすごみだと思う」

(『ABEMAヒルズ』より)

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