日雇い労働者が多く集まる、大阪・西成のあいりん地区。約4人に1人が生活保護受給者の西成区で、うどんを無料提供する元暴力団組員がいる。
【映像】元極道が営むうどん店「淡路屋」和歌山の新店舗（店内の様子）
うどん店「淡路屋」のキンちゃん（48）と、取材陣が出会ったのは2023年9月だった。「おなかを満たしていれば犯罪も減る」との思いから、生活に困っている人にうどんを振る舞っている。キンちゃんは、覚醒剤の使用や傷害など、逮捕歴が5回以上ある壮絶な人生を送ってきた。身に覚えのない犯罪容疑をかけられて、フィリピンへ逃亡したとき、転機が訪れた。食べるものに困るなか、現地の人に食べさせてもらい、「涙流しながら食べて、人間の温かさをわかった」と振り返る。
そんなキンちゃんが、新店をオープンする。店長を任せたのは、元暴力団組員の阿久津さん（56）だ。13歳から極道の道へ。覚醒剤の売買と使用で、逮捕歴が7回。西成に流れ着いたのは、42歳の時だった。現在は生活保護を受給し、家賃5万円で、収入は生活保護の約11万円。7年前に結婚した妻も、覚醒剤使用で服役。刑務所内で男の子を出産した。
阿久津さん店長任命から1カ月、その後を追った。新店となる淡路屋和歌山店は、うどんや鍋料理をメインとした居酒屋で、生活困窮者へのうどん無料提供も行うという。しかし、物件契約までには課題もあったという。
「保証会社を通したら（審査に）落ちた。保証会社なしでと、ダメもとでオーナーさんにつないでもらった。僕のボランティア活動をやっているのとかを見てくれていて、『わかった、使え』と言ってくれた」（キンちゃん）
暴力団排除条例などで、暴力団離脱後も約5年間は関係者とみなされ、銀行口座の開設や賃貸契約ができないことが多い。キンちゃんは「刑務所出てきて約15年やけども、銀行口座を作れたのは去年、おととし」とさらなる苦労を語った。
阿久津さんは店長就任を機に、「生活保護は切る」という。「嫁もおるし、子どももおるし、いつまでも生活保護に頼っているわけにはいかない」。そんな姿にキンちゃんも、「頑張って欲しい。できる限りは俺も応援したい」と背中を押した。
和歌山店のオープン当日、店内は満席で大忙し。しかし阿久津さんは思うように動けず、想像以上のストレスからか、ついに働くことができなくなる。そして数日後、キンちゃんから取材スタッフに連絡があった。
「実は阿久津の事なんですが、急に連絡も無しに和歌山の店に来なくなり、何回も電話しても出なくて、LINEしても既読も付かずで、消えました」（キンちゃんからのメッセージ）
阿久津さんの現在を、キンちゃんは心配している。「情緒不安定で、もしかしたら薬物をバチンといってるかもわからない。薬物をやってないことを願う」と語った。
（『ABEMA的ニュースショー』より）
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