人気小説「青春ブタ野郎」シリーズ(電撃文庫刊)原作の劇場アニメ「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」が2023年6月23日に劇場公開された。主人公・梓川咲太(あずさがわ さくた)の妹である梓川花楓(あずさがわ かえで)の進路をめぐる物語が描かれたが、その続編となる「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」が12月1日より上映中だ。
シリーズを通じて、思春期特有の感情が「思春期症候群」と呼ばれる不思議な現象を引き起こすという青春ドラマが描かれていくのが本作のキーポイントだ。
恋人の桜島麻衣(さくらじま まい)の卒業式の日、七里ヶ浜の海岸で麻衣の子役時代にそっくりなランドセルを背負った謎の少女と遭遇する咲太。「おでかけシスターの夢を見ない」にて、自らの意思で進学先を決めるなど一歩を踏み出した花楓だったが、長期入院していた母親から会いたいという言伝を受けた咲太と花楓は、父親とともに久しぶりに家族4人で再会することになる……という導入だ。
咲太の存在が世の中から消えてしまうという、これまでは麻衣や花楓に起こっていたような思春期症候群が咲太に起こり物語が展開されていく「ランドセルガールの夢を見ない」では、咲太が物語の中心となる。
咲太を演じる声優の石川界人は、「おでかけシスターの夢を見ない」公開前のインタビュー時に、「これまではいわば「そうあらねばならぬ」という感じだったのが、「おでかけシスターの夢を見ない」での咲太は「そうであろう」として立ち振る舞っているように見えていて……。「そうであろう」とする咲太の気持ちを大事に演じました」と語っていた。
「ランドセルガールの夢を見ない」の公開前に、収録を終えた石川に本作の咲太の置かれた状況について、改めて尋ねてみる。石川は「達観した立場で誰かにアドバイスをしたり手を差し伸べたりすることが多かった咲太ですが、「差し伸べている自分って一体何者なの?」ということに強制的に向き合わされた感覚でした。ふとした瞬間に自分と向き合うことって誰しもがあると思うのですが、それを強制的にやられてしまうと人間ってすごく嫌な思いをすると思うんですよ」と語る。
その気持ちを踏まえてどのように本作で咲太を演じていったのか、深堀りする。「これまでいろいろな人と向き合って思春期症候群を一緒に乗り越えてきたので、嫌な気持ちはしていないしどう思春期症候群と向き合うのかも(咲太は)分かっているのだけれど、向き合いたくないという無意識の葛藤みたいなものがずっとあるような気がしていて。振り返ると芯を食ったような台詞があまりないように演じていったのかなと思います」と答えてくれた。
「おでかけシスターの夢を見ない」では花楓を兄としてサポートすることに徹していた咲太だが、「ランドセルガールの夢を見ない」ではその咲太を含めた家族の物語が描かれる。他人に対してではなく自分と家族との向き合いに直面した咲太に対して、石川はこう語ってくれた。
「これまでのエピソードでは思春期症候群を起こしているのが他人だったので、他人の悩みを解決するために奔走して感情的になる面がたくさんありました。しかし自分の感情に疎い咲太は、自分のこととなると取り乱すことがないんですよね。TVアニメシリーズでは家族ではない他人と向き合うことが多かったのですが、「おでかけシスターの夢を見ない」では花楓という近い関係性の他人と向き合ってきて、「ランドセルガールの夢を見ない」ではお父さんとお母さんの2人が出てくる。
花楓の兄という立場は変わらないのですが、今までとは違う、息子としての咲太がどう感情を発露するのか? そこが改めて本作で意識して演じたポイントになります」
「青春ブタ野郎」シリーズの《高校生編》完結の物語として位置付けられている「ランドセルガールの夢を見ない」にて、咲太が家族に対して、そして自身に対してどのように向き合ってどのような結末を迎えるのか。ぜひ劇場でその行方を見届けてほしい。
青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない
2023年12月1日劇場公開
【公式HP】https://ao-buta.com
【公式X】https://twitter.com/aobuta_anime
(C)2022 鴨志田 一/KADOKAWA/青ブタ Project
取材・テキスト・写真/kato