先月発生した、消防車45台が出動した東京・杉並区の住宅街での火事に関して、Xのあるポストが話題になった。「怪我をしていれば救急搬送です。怪我をしていない、戻るところがなくなってしまった人は行くところがありません。火災で焼け出されているのにお金を持っていないとどこにも行けないということがあっていいのか」。
投稿したのは、現場で被災者の支援を行っていたという日本共産党の小池めぐみ杉並区議だ。背景について「皆さん自分が悪いわけじゃないのに、そこまで訴えない。『これが足りない、あれが足りない、なんでこうしてくれないんだ』と強く言わず、逆に『すみません』という感じ。その課題を多くの人と共有したいと思った」と説明する。
火災当初は、避難してきた人たちであふれていたという現場も、深夜0時を過ぎると大半の人が帰宅。そんな中、自宅が焼けてしまい、帰る場所がなくなったという一人暮らしの高齢の女性が。ケガをしておらず、お金を持っていないため、病院にもホテルにも行けない。しかも、認知症も患っていた。このまま一人にさせておくことはできないということから、職員付き添いのもと、一晩だけ区の施設で過ごすことに。翌日、ケアマネージャーにつながり、新たな施設へ入居することができたという。
これからの時期に増えると言われる火事。もし家が燃えてしまったら、お金などはどうしたらいいのか。意外と知らない対応について、専門家と当事者と共に『ABEMA Prime』で話を聞いた。
■火事被害ここが大変…自宅全焼の当事者に聞く
火事で自宅が全焼し被災の様子を発信している、元NHK番組プロデューサーで「FUKKO DESIGN」代表理事の河瀬大作氏は「僕と妻が家を出た後の午前8時頃、火事になっていることに娘が気づいた。長男が娘2人を逃がして119番通報してくれたが、火の回りが早く、あっという間に燃え広がったそうだ。息子から泣きながら電話をもらって、半信半疑で帰宅すると、家の前に非常線が張られものすごい数の消防車がいた。“本当に燃えたんだ”と思ったのをよく覚えている」と当時の様子を振り返った。
火災直後は「区の保健福祉課と思われる方が来て『今日どこで寝られますか?』と聞かれた時に、『寝るところがないんだ』と初めて気がついた。ホテルを押さえてもらっていたのだが、1人あたり5000円ぐらいで、5人家族だと一晩で2万5000円。長期戦になるとわかっていたので、Airbnbを探した」と話す。当日は、その寝床を探すことと、子どもたちの靴と服がないこと、警察と消防の調査の対応、保険会社や仕事先、自治体等への連絡に追われたそうだ。
約2週間後、知人の一軒家で仮住まいがスタートし、火事で焼けた家財道具などの処理作業を開始。「とりあえずの日常」を取り戻すために河瀬氏は3週間ほど仕事を休み、娘たちは学区を越えて通学するようになったという。
火災保険には入っていたものの、「まず消防と警察が調査し、放火の疑いがないかなどを調べる。その上で、保険会社が被害の程度や周りへの影響を調査して、2〜3週間後くらいに保険金を受け取った。それがないと家の再建ができないので、出るまで生きた心地がしなかった」と答えた。
自宅を再建するまでにかかったのは約1年。「大変なのは、仮住まいに入るまで。やっぱりAirbnbでの暮らしのは『生活』ではない。荷物を最小限に抑えるために、ダンボールを1人1個。知人宅に移ってから、ようやく生活を立て直すことに気が向いてくるが、それまでは何もできなかった」と語った。
■自治体の対応は
火事被害にあったときの対応について、元東京都消防庁警防部長、危機対応人財育成研究所所長の佐藤康雄氏は「基本的には市区町村の長が責任者になっているので、その自治体が対応する。消火活動や人命救助は消防の役割だが、その後は自治体の福祉の方に引き継ぐ。ただ、どのレベルまでできるかは、それぞれの財政状況によるのが実態だ」と明かす。
夜中に火事が起きた場合も担当者は来てくれるという。「0時過ぎの場合は交通手段がないので、夜が明けた頃になることはある。また、雨が振っていたり、冬の寒い日などの場合は、消防団に対応をお願いする」と答えた。
■逃げる時間はたった5分?命を守る行動を
河瀬氏は、火災時に財布と携帯電話を持っているかどうかで再建のスピードが変わってくると話すものの「物を取りに戻るのは、絶対にやらないほうがいい。それで亡くなった方もいる。火の回りは想像以上に早い」と語る。
佐藤氏も「火事が起きている家に戻るのは絶対にダメだ。携帯や財布、免許証が大事だと言われるが、一番は命。今は石油製品が多く、例えばプラスチックなどが燃えると有毒ガスになり、吸うと卒倒してしまう。また、燃えていない部屋があったとしても、可燃性のガスによって爆発的に火に包まれることもある。消防隊は概ね5分で駆けつけるので、逃げ遅れた人がいたとしても任せること」と警鐘を鳴らした。また、身分証などについては「運転免許更新センターに行けば1日で再交付してもらえるので心配しないでほしい」と呼びかけた。
さらに、逃げる時の姿勢については「姿勢を低くして逃げるのは絶対だ。煙の中に入るのは、墨汁の中にドボンと浸かったような、自分の手が見えないぐらい濃いものだと思ってほしい。また、煙は熱を持って上に溜まるので、下にまだある新鮮な空気を吸いながら逃げる。早く逃げようとして立ちあがると、その煙を吸って卒倒するか煙を拡散してしまう。下からなら見られる出口も見えなくなってしまう」と述べた。
また、乾燥注意報の意味について、「肌が荒れるということではなく、火災が起きやすいことへの注意報だ。特に冬場は一番燃えやすいということを意識して、ストーブや火の元に注意するのが大事」と注意喚起した。
(『ABEMA Prime』より)
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