12月16日(土)東京・両国国技館にて「RUF presents RISE WORLD SERIES 2023 Final Round」が開催され、RISE世界バンタム級王者・志朗が見事なカウンターでのKO勝利で4カ月ぶりの再起戦を飾った。
今大会でフィナーレを迎えたRISE WORLD SERIES 2023 -54kg Tournament。志朗はトーナメントの優勝候補に挙げられていたものの、準決勝でクマンドーイ・ペッティンディーアカデミーにダウンを奪われて判定負けを喫し、決勝までたどり着くことができなかった。
捲土重来を期する志朗の復帰戦の相手に用意されたのはクマンドーイと同門のブンロン・ペッティンディーアカデミーだ。ブンロンはサウスポーから繰り出す左ミドルキックを武器とし、その蹴りで対戦相手の右腕を折ったこともあるムエタイの猛者。復帰戦にしては危険すぎる相手だ。
志朗はブンロン対策として、タイのPKセンチャイムエタイジムでの武者修行を行った。現地でブンロンを知るトレーナーから指導を受け、ブンロンの左ミドルを受けても壊れない右腕を作るためにタイ人に右腕を蹴ってもらったり、棒で右腕を殴ってもらう“荒行”も行った。
いざ試合が始まると、ブンロンが会場に衝撃音が響き渡るような左ローと左ミドルを蹴ると、志朗も距離を潰してパンチで前に出ても左ボディからパンチをまとめて先制のダウンを奪う。
立ち上がったブンロンはダウンのダメージがなかったかのようにフルスイングの左ミドルを蹴って前に出ていくが、ここで志朗がカウンターの右ストレートを一閃。この一撃でブンロンをマットに沈め、難敵ブンロンから勝利をもぎとった。
試合後のマイクでは開口一番「蹴りが強すぎですよ…」とこぼした志朗だが、その言葉通り、ブンロンの左ミドルを受けた志朗の右腕は赤黒く腫れあがっていた。
また一般的に相手の蹴りを自分の脛でカット(ディフェンス)すると、蹴った方が足を痛めるものだが、ブンロンの蹴りをカットした志朗の右脛の方が腫れており、ブンロンの蹴りの威力がいかに凄まじいかを物語っていた。
ブンロンが左の蹴りで志朗の右腕を壊すか。それとも志朗がその前にブンロンを仕留めるか。そんな試合展開だったが、決して志朗は一か八かの博打を打っていたわけではない。例えばフィニッシュにつながる前の場面で、志朗はブンロンの左ミドルを右脛でカットし、致命傷を避けている。
ブンロンの左ミドルを空振りさせる=スウェーではなくカットしていたのは、タイ修行でアドバイスされたもの。また左ミドルを蹴られても下がらない・距離を詰めることも現地のトレーナーから授かった作戦の一つだ。
「タイのトレーナーから『ブンロンの左ミドルは低めを蹴ってくるからスウェーでは避けきれない。カットした方がいい』と言われていたんです。あとは左ミドルで距離を取られるのが一番面倒くさかったので、蹴りをカットしたらインローを蹴り返す。相手のガードの終わりにボディを狙う。そこは出来ていたかなと思います」
またONEムエタイでタイ人がオープンフィンガーグローブ(OFG)で相手を一発でKOする姿を見て、一撃の威力を上げることも意識して練習していた。フィニッシュとなった右ストレートはその賜物だ。
「ONEのムエタイやOFGの試合を見ていると、タイ人の一発の殺傷能力が上がっていて、確実にヒットポイントを狙って効かせているんですよね。日本人は手数で効かせる選手が多いですが、世界で戦っていくためには一発で倒す技術も必要だと思い、そういった練習も続けていました」
2018年からRISEを主戦場に戦う志朗だが、格闘技の原点はムエタイだ。原点回帰とも言えるタイでのムエタイ修行が復活の勝利につながり、再浮上のきっかけになったと言えるだろう。来年の目標として志朗は、RISE世界バンタム級王座の防衛戦として、トーナメントで敗れたクマンドーイ、「THE MATCH 2022」で敗れた玖村将史へのリベンジをぶちあけた。2024年を飛躍の年にすべく、志朗が会心の勝利で1年を締めくくった。