2023年ドロ沼3連敗、圧倒的劣勢のなかカウンターの一撃で形勢を逆転。地下格出身選手がみせた劇的な勝利。朝倉未来への「夢と希望を与えてくれ、人生を変えてくれて本当にありがとうございました」のひと言にラウンドガールが頷きながら目を潤ませるひと幕もあった。
12月31日にさいたまスーパーアリーナで開催された「にゃんこ大戦争presents RIZIN.45」で、新井丈とヒロヤが対戦。試合は2ラウンド劣勢のヒロヤがカウンターの右フック一撃で大逆転。一気に連打からハイキックと畳み込み、修斗2階級王者を撃破するアップセットを演じた。
現修斗ストロー/フライ級2階級王者の新井と、「朝倉未来1年チャレンジ一期生」のヒロヤは今年DEEP、RIZINで3連敗中と正念場の一戦だ。
1ラウンド、新井の強いプレッシャーにヒロヤが下がりながらテイクダウンを狙う序盤。中盤は新井もコーナーで押し込み組みに転じるが、ヒロヤも身体を入れ替え攻めさせない。
距離感をうかがう攻防では、新井の強い打撃とカーフがことごとく当たる。ヒロヤも頭をくぐらせたトリッキーな攻撃でパンチを当てるが単発ぎみだ。新井は終了間際にはコーナーでのパンチ連打などもみせ、攻めの姿勢のままラウンドを終えた。
この日の副音声で解説したRIZINフェザー級王者の鈴木千裕は「寝技勝負になりそうだが、新井の打たれ弱さが心配」と懸念を示していたが「（新井）丈選手は打撃を打つときにガードが凄い下がる。ヒロヤ選手はリターンが上手いので、一発当たるとフラッシュダウンを奪う可能性は十分ある」と分析。新井優勢の空気のなか、驚くことに2ラウンドでその言葉が現実となった。
ゴングとともに組んで勝負にでるヒロヤだがあっさり新井に剥がされ1ラウンド同様スタンドでの勝負。ヒロヤのハイは空振り、逆に新井のヒザからコーナーで押し込まれワンツーをもうらうなど、苦しい状況。この間も解説の鈴木は新井のガードが下がる“クセ”を再三指摘した。
そんななか勝負に出た新井が、相手をコーナーに追い詰めて連打を放つと「バコッ」と鈍い音。しかしヒロヤもカウンターでコンパクトに右フックで返す。鈴木は「丈選手今の効きませんでした？」とコメントするなか、ここまで圧倒していた新井の表情が歪み、失速ぎみに。
一気に局面が変わったヒロヤはミドルと右のストレート連打、さらにハイキックと当てるジワりと新井が前から崩れてまさかの試合ストップ。
戦前からの逆転シナリオや攻撃パターンなど次々と的中させた鈴木に実況も大逆転のヒロヤではなく真っ先に「鈴木千裕お見事！」とひと言。「でも勝つ予想は丈選手だったんですよね…」と正直に明かした。
勝ったヒロヤはマイクでドロ沼連敗続きの2023年からの最終日での脱出を「3度目の正直です、諦めそうなときに応援してくれたみんな本当にありがとう」と絶叫。
師匠の朝倉未来に向けて「僕が格闘技を始めたきっかけは朝倉未来です。あの人の背中を追って地下からチャンピオンに勝ちました。僕に夢と希望を与えてくれ、人生を変えてくれて本当にありがとうございました」と感謝の言葉とともに「日本の格闘技のトップに行く」と宣言。
この言葉に心打たれたか、トロフィーを渡したラウンドガールも“うんうん”と頷きながらやや目を潤ませながら拍手で祝福していた。
