能登半島で最大震度7を観測した地震から1週間。各避難所には全国から集まった支援物資が続々と届けられている。そんな中、問題となっているのが、個人の被災地入り。石川県は、物資の持ち込みやボランティアなどを控えてほしいと呼びかけているが、被災地入りする人が後を絶たず、中には迷惑系YouTuberとされる人もおり、SNS上で批判が殺到している。一方で、行政の支援が遅く、個人の支援が喜ばれるケースも。
果たして個人の被災地入りは本当にダメなのか。そして今できる支援は何か。『ABEMA Prime』で議論した。
■必要な支援物資は? 被災地の現状
2日から震源に近い被災地で支援活動中の「災害NGO結」代表の前原土武氏は、現状について、「物資の数は結構あると思う。ただ、ラストワンマイルを見ると、届いていない所もある状態」「避難所には高齢者の方々が多く、やはり体の心配があったり、インフルエンザが流行り始めていたりする。避難所の環境が厳しいというのを感じる」と説明。
支援が滞っている要因については「半島なので上や横から入ることができない。根元のほうから行かなければならず、孤立している集落も結構ある。山が崩れ、火事が起き、津波もやってくるなど、複合的なことが起きた。それで道が通れなくなり、物流が滞ったという点が、今回の能登半島地震の難しさ、特徴だと思っている」との見方を示す。
今一番必要なのは「暖かい環境と食べ物、健康面」だといい、「食生活がインスタント系だ。野菜を食べていないので、お通じが硬くなってしまったりする。トイレに行きたくないという思いから、水を摂らなかったりする方もいる。中には血圧が高い高齢者もいるので、厳しい状況になっていく」と懸念を示した。
■個人の被災地入りに批判の声
個人ボランティアのニーズについて、前原氏は「すごく難しいと思いながら活動している。正月の16時というタイミングで、みなさん着の身着のまま逃げてきて、寒い夜を過ごした。翌日、行政の方々も頑張ったと思うが、正月休みの職員もいるわけで、やはりスタートラインが遅れてしまう。その中で避難所を回った時にあったのが、不揃いの大きさの水やインスタントラーメン。4、5日後に支援物資が届くようになるまで、駆けつけてくれた方々によって命を繋いだ人たちがいたというのは、現場を見て思ったことだ。物資がある今、民間に求められるのはニーズに合わせた支援。ただ、被災者は何に困っているかがわからないということがよくある。私たちのほうから“こういったことで困っていないか?”“こんなものが用意できる”とアウトリーチすることで、初めて“それが欲しい”“それがあったら嬉しい”と言えるわけだ。メニューのない食堂に行っても頼めないのと同じで、こちらから提示することが大事だ」と話す。
EE JUMPの元メンバーで千葉県八街市議会議員の後藤祐樹氏は、市の了解を得て、ベテラン支援者と共に4日に石川県七尾市へ。水や食料(カップ麺等)、ガスコンロ、カイロ、生理用品、オムツ、ドッグフード等を届けた。
石川県は5日、3連休を前に「能登への不要不急の移動は絶対に控えて」と呼びかけた。後藤氏は「私が向かった時点では、個人で動かれている方はそんなに見受けられなかった。今回は政府の初動が遅かったという印象がある。最初に動員された自衛隊も1000人で、被災地ごとにバラバラになったらわずかな人数にしかならない。マナーでいえば賛否を呼ぶ行動だと思うが、間違ったことはしていない」と主張する。
後藤氏には、「軽率な行動」「同じ人が1万人いたら被災地は大混乱」などの批判が寄せられたが、ある程度想定していたそうだ。「阪神·淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などでボランティア経験を積んだ方たちと現地に入った。ガソリンは満タンにして行く、渋滞が起きないように迂回をする、前もって役所や避難所に連絡して要請があることを確認した上で届ける、許可を取るなど、最低限のことは下調べをして、経験や知識がある方と同行するのが最善の策だと思う」とした。
■4月発生の熊本地震では直接死の4倍以上…「災害関連死」を防ぐには
こうした中、石川県は9日、珠洲市で、6人が災害関連死で亡くなったと発表した。能登半島地震で災害関連死が確認されたのは初めて。災害による負傷の悪化や、避難生活などの負担によって死亡した場合は「災害関連死」とされる。2016年の熊本地震では、地震による直接死は50人だったのに対し、災害関連死はその4倍以上の215人だった。
前原氏は「熊本地震が起きたのは4月で、暖かくなっていく時期。しかし、今回は1月で、これからさらに寒くなっていくと、関連死は倍ぐらいになると思う。暖をどう確保していくかが大事で、避難所に居続けるのではなく、広域避難をしたほうがいいかもしれない。仮設住宅は土地がある所だったらできるが、半島なので広くて安全な所がなく、いつになるのか。雪が解けるまで避難所にいるのか、ということになってくる」と指摘する。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は「災害関連死は、必ずしもプロフェッショナルな支援を受けた人だけではなくて、全く違う地域の人が入って会話やコミュニケーションをとるだけでも、実は効果が出たりする。いろいろな側面があり、個人が物資を運ぶことだけがボランティアや災害支援だということではない」と述べる。
前原氏は、「命と避難をどうしていくかは、国や県全ての方々と連携しながら考えていくことが大事。災害救助法だけでは足りないものが絶対にあるし、予算をつけてもらわないと県や市町村では厳しいというのが現状だ。特に国会議員の方々には現場に来てもらって、一人ひとりの感情も踏まえながら、まずは助かった命をどう次につないでいくかを考えていかないといけない」と主張した。(『ABEMA Prime』より)
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