2023年4月からTVアニメが放送された「マッシュル-MASHLE-」(原作:甲本 一)は、ギャグシーンとシリアスなバトルシーンの絶妙なバランスが特徴的で、声優同士の軽妙かつ迫力ある掛け合いも魅力の一つとなっている。2024年1月からはTVアニメ2期「神覚者候補選抜試験編」が放送中で、神覚者と呼ばれる実力者も数多く登場、より一層迫力を増すバトルシーンが描かれていく。
【動画】『マッシュル-MASHLE-』神覚者候補選抜試験編
 
 魔法が当たり前に使える世界で魔法が一切使えないものの、持ち前の筋肉のパワーを駆使して戦う主人公のマッシュ・バーンデッドが、仲間たちとともに神覚者を目指すストーリーだ。1期の10話では、神覚者であるレイン・エイムズが登場してマッシュと対峙した。
 
 本記事ではマッシュ役の小林千晃(こばやし ちあき)とレイン役の梶裕貴(かじ ゆうき)にインタビューを実施して、アニメ初共演となった本作でのお互いの印象や、小林が梶から受けた影響について熱い話を伺った。
 
――本作がお二人のアニメ初共演となったわけですが、もともと共演を願っていたとのことで、まずはお互いの印象からお聞かせください。
 
梶:まだ一緒にマイク前でお芝居をすることは実現していない(※)のですが、「マッシュル-MASHLE-」を見ていて(小林の)声が聞こえてくると、シンプルにいい声だなって思います(笑)。
 
※編注:インタビュー時点。「マッシュル-MASHLE-」1期10話にてマッシュとレインが対峙するシーンが描かれているが、アフレコは分散収録だったため直接顔を合わせていないとのこと。
 
小林:いやいや(笑)。
 
梶:自分が同じくらいのキャリアの時に、ここまで地に足がついた芝居が組み立てられていたのかと言えばそんなことはないので、先輩後輩関係なくリスペクトの気持ちがあります。最近の若手声優さんの基礎力はもの凄く高い。素敵だなと感じるところがあれば、自分でも表現できるようになりたいなと思いながら日々勉強しています。
 
――小林さんのマッシュのお芝居について、具体的に良いと感じられた部分はどんなところでしょうか?
 
梶:役者をやっていると、どうしても"盛った表現"をしたくなってしまうもの。でも、マッシュ役を演じている時の千晃くんで言えば、(気持ちを)抑えるところはしっかり抑えて、引き算のお芝居をしているところでしょうか。緩急を大切に、決めるところを決める。そういった繊細な技術が見事だなと感じています。
 
――梶さんの言葉を受けて、小林さんはいかがでしょうか?
 
小林:恐れ多いですが、嬉しいという気持ちでいっぱいです。僕が声優になる前から存じ上げていた方からそのようにおっしゃっていただけるのは、身に余る光栄ですね。
 
――梶さんからお芝居や取り組み方について、影響を受けていることなどはありますか?
 
小林:自分が勝手に思っているだけですが、梶さんのアフレコへの取り組み方と近い部分があると思っています。たとえば、台本を読み込んでどう演技しようかということを、理屈じゃないですけれど言語化できるようにしてからアフレコに臨むことが多いのですが、いざマイクの前に立った時には、わりと肩の力を抜いて頭をからっぽにするようにと言いますか。
 
 掛け合いをする相手の声優さんやスタッフの方のディレクションにすぐ対応できるようにそういう意識で取り組んでいるのですが、かつて梶さんがラジオやインタビューでおっしゃっていたことをきっかけにして、自分でもはじめてみました。そのやり方が僕にとって心地よいと言いますか、性に合っていたので、そういうところは恐れ多くも似ているところ、影響を受けたところなのかなと思いますね。
 
――梶さんはラジオのほか舞台やテレビ出演など、かなり多方面にわたる活躍が印象的ですが、小林さんから見てそのあたりはいかがでしょうか?
 
小林:舞台やドラマなど、声優として自分が戦いやすいフィールド以外の場所に飛び出して、身を削りながらご自身の経験値を上げていくとうことは、なかなかできることではないと思っています。
 
 挑戦したいという気持ちはあっても、それを行動に移せる人は少ない中で、一度や二度ではなくコンスタントに挑戦を続けられている。その上で、一番大切な声優としてのホームは崩さずに活躍されている方なので、背中を見ているとすごく刺激を受けます。
 
 それこそ僕と同年代の役者は、ホームというか声優業界の中で自分の居場所を築いていくことや技術を磨くことだけで精一杯なのですが、そこからさらに次のフィールドに出て行って、声優業界だけでは得られない経験則を獲得して前進し続けている方だと思っています。
 
梶:(しみじみと聞きながらうなずき)ありがとうございます。
 
――小林さんのお話を聞かれて、率直なお気持ちは?
 
梶:まさに僕自身そういった気持ちで声優業に向き合っているので、よく見てくれているなと(笑)。"自分は声優である"という事実に誇りと責任を持っていますし、シンプルに、何よりアフレコが大切で、楽しいんです。その気持ちを大前提として、ほかのフィールドに挑戦していかなければなとは思っていますね。
 
 なので、もしそういった部分まで伝わっていて、実感してくれているのだとしたら、本当に嬉しいです。もちろん、全員がそうしたらいいというわけではありませんし、それぞれタイミングの問題もあります。でも、その上で後輩たちが、僕のやり方をポジティブに受け取ってくれているのだとしたら非常に嬉しいですし、これからもそうありたいなと思いますね。
 
――最近は梶さんも含め声優さんの活動の幅が本当に広がってきていると、いちアニメファンとしても感じています。
 
小林:広がっていく分だけ見失いがちと言いますか、自分はいったいどこがホームでどこを伸ばしていきたいのか。多岐にわたるどの道に進んでいくのかというそれぞれの課題はありますが、梶さんは声優の仕事や業界のことを愛してくださっていますし、そこをホームとして胸の中にいつでも秘めていてくださる。
 
 そこが一番リスペクトしているところで、どんなにいろいろな場所で活躍されても梶さんのハートは声優にあるということが素晴らしいです。
 
梶:それが伝わっているのが、心の底から嬉しいです。
 
小林:僕なんかが言うのもおかしいのですけれど……。
 
梶:いやいや、伝わっているんだなぁって。涙が出そうになります(笑)。何かに挑戦する際には、そのフィールドへのリスペクトを欠かしません。加えて、その道のプレイヤーとしては初心者になるわけで、当然ですが、それ相応の覚悟と努力も必要だと考えています。……毎度、自分の出来の悪さに、とても惨めで歯がゆい思いをしています。「なんて情けないんだ!」と(笑)。