日本人の平均睡眠時間は7時間22分でOECD(経済協力開発機構)33カ国最短であり、日本の睡眠不足による経済損失は15兆円(米シンクタンク調査)とも言われる。
一方で、“宝の山”とも言われるスリープテック業界において「チームジャパン」に大きな期待が寄せられているという。“睡眠ビジネス”の最前線についてテレビ朝日 経済部 国吉伸洋デスクに聞いた。
━━睡眠に対する関心は高まっているのか?
「長く続く健康ブームにおいて食事と運動がスポットを浴びてきたが、ここにきて睡眠が注目を集めている。コロナ禍において在宅時間が長くなったことが影響しているとされるが、直近で多くの人が関心を持ったきっかけは大谷翔平選手だろう。彼はもともと10時間以上寝ることで知られていたが、去年5月にヌートバー選手の食事の誘いを睡眠の確保を理由に断ったと報道され、睡眠の重要性が改めて認識された」
━━日本人は世界一睡眠が短いとのことだが、海外ではどのくらい眠るのが一般的なのか?
「様々なデータがあるがOECDの調査では中国=9時間1分、米国=8時間51分、英国=8時間28分、韓国=7時間51分となっており、睡眠の“満足度”においても日本人は32%と主要国の中で一番低い」
━━なぜ日本人の睡眠時間は短いのだろうか?
「昔から言われるのは『働き過ぎ』だ。バブル時代は『24時間戦えますか』というキャッチフレーズが流行し長時間労働を“美徳”とする文化があった。また最近は『スマホの使い過ぎ』も睡眠時間を短くしているといわれている」
━━そもそも、適正な睡眠時間は?
「個人差があるので一概には言えないが、厚労省は目安として小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を推奨している。昼間眠気を感じない程度の睡眠時間がよいのではないか」
━━睡眠を改善しようという関連ビジネスには、どのようなものがあるのか?
「もともとはベッド、枕、布団など寝具中心だったが、『ヤクルト1000』に代表される機能性表示食品、スマホ・スマートウォッチなど睡眠計測デバイス、最近注目を集めた『ポケモンスリープ』などのゲームアプリなど多岐にわたる」
━━特に注目している企業は?
「固定電話事業が落ち込む中、一昨年から睡眠ビジネスに参入したNTT東日本だ。NTT東日本は睡眠をテーマにした企業コミュニティ『ZAKONE』(ザコネ)を主導し約100社が参加している」
━━企業コミュニティをつくる狙いは?
「睡眠ビジネスは世界的にも未知の領域であり、今は各社とも手探り状態。そこで各社のノウハウを共有し、協業に繋げる狙いのようだ。例えばNTTと長谷工が組んだ『快眠のための家』は賃貸マンション内にIoT機器を設置し、睡眠状態をモニタリング・分析し、データを睡眠改善につなげる取り組みだ」
━━アプリによる睡眠改善も進んでいるのか?
「スマホアプリを使った不眠症治療が間もなく始まる。医師が患者に処方する『治療用アプリ』としての承認取得は国内3例目であり、不眠症向けでは初めてだ。医師が処方箋を出して患者が睡眠データを打ち込むことでAIが助言してくれる仕組みであり、薬による副作用もコストも抑えられる利点がある」
━━睡眠ビジネスは有望か?
「世界の著名な経営者であるウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ会長)は8時間、ジェフ・ベゾス(Amazon.comの共同創設者・取締役会長)は8時間、ビル・ゲイツ(元マイクロソフト最高経営責任者)は7時間、イーロン・マスク(テスラCEO)は6時間と多忙な中においても睡眠を重視しており、今後も先進国を中心に需要は高まっていくと予想される」
(ABEMA/倍速ニュース)