元K-1三階級王者の武尊（team VASILEUS）が、ONEデビュー戦でONEキックボクシング世界フライ級王者スーパーレック・キアトモー9とのタイトルマッチに臨み、無念の判定負けを喫した。試合後のマイクで人目をはばからず号泣した武尊は直後、左足に包帯とアイシングをぐるぐる巻きの痛々しい姿で車椅子に乗り、病院へ直行した。その直前、K-1レジェンドの魔裟斗が通路で搬送直前の武尊に遭遇。その際に交わした言葉、両者の反応はファンにとっては胸がアツくなる瞬間。その貴重なやり取りをカメラは捉えていた。
「最高な試合だったよ」
失意の武尊に声をかけたのは、K-1 WORLD MAX 2003・2008世界王者の魔裟斗。K-1のレジェンドはこの日、武尊の雄姿を見届け、解説するために会場を訪れていた。
「今できる限界がアレです」
魔裟斗のねぎらいの言葉に、武尊はリング上でも口にした言葉を返した。
「でも…」
そう武尊の言葉を遮った魔裟斗は、ポンと車いすに座る武尊の左肩に手を置くと「もっと強くなるぞ」「俺はわかるよ」と続けた。
その言葉を聞いた武尊はしばし無言で魔裟斗を見つめたが、しばらくして「はい」と小さく返答。笑顔を浮かべた。
「今からマイナスにするんだよ。５Rロー効くのわかるだろ？ 次は蹴らせないっていう勉強になったはずだよ。絶対強くなるよ」
魔裟斗はそのように話すと「めっちゃ面白かったよ。超燃えたよ」「あの３Ｒ…めっちゃ（スーパーレック）効いてたからね。めちゃくちゃよかった」と頷いた。
すると、再び悔しさがこみ上げたか…笑顔だった武尊は唇をかみしめ、再び涙を流した。
試合後の会見でチャトリＣＥＯは武尊の引退を否定。次戦以降についての展望を口にした。あの日、あの瞬間、武尊が有明アリーナ、または画面を通じて声援を送ったファンの胸を熱くしたことに偽りはない。またリング上で笑顔を浮かべて楽しそうに殴り合う武尊の雄姿を見ることができる日まで、ゆっくりと心とケガの回復を待ちたい。
