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 1月26日、愛媛県・今治市でピアノ教師の女性が首を切られ殺害された事件。警察は殺害された女性の娘への暴行容疑で34歳の男を逮捕し、殺害の重要参考人として詳しく話を聞いている。

【映像】著名人へのストーカー被害「スターストーキング」とは

 逮捕された男は娘の元交際相手で、以前から交際のトラブルがあったという。警察によると、去年11月、娘自ら警察に「暴力を受けた」「別れたいと言っても応じてくれず困っている」と相談。ただ、男への警告や処罰は望まなかったため、警察は危険を感じたら躊躇せずに110番通報を促すといった防犯指導に留めていた。

 今回の殺人と交際トラブルの関係はまだわかっていないが、警察に相談したにもかかわらず殺人に至ったケースは後を絶たない。警察の対応はどこまで効果があるのか、正しい防衛策は。『ABEMA Prime』で議論した。

■多くは防げている事実も…「“処罰してほしい”という本人の意思が重要」

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 警察の対応について、元埼玉県警捜査一課の佐々木成三氏は「男女のもつれによる人身安全関連事案の処理に失敗した経験を踏まえて、警察署と本部が連携して対処する体制をとっている」「人身安全対策課の中に捜査1課も入るようになった。相談内容を聞いて防犯指導で終えていたところから、ストーカー規制法だけでなく各種法令を駆使して逮捕できるものはしよう、という対策はできている」と説明。

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 2022年のストーカー相談件数は1万9131件、そのうち警告は1868件、禁止命令などは1744件、ストーカー規制法違反で検挙したのは1028件。「警察が対応・介入したことでストーカーが止まっているというケースが圧倒的に多い」。

 ストーカー規制法違反は被害者からの告訴がいらない非親告罪。佐々木氏は「内縁の男性から暴行を受けた女性が“何もしないでください”と。しかし、現場を見ると髪の毛が大量に落ちている。そんな状況なので被害届なしに男性を逮捕したが、結果すぐ釈放になった」とした上で、「女性が“別れたい、会いたいくない”と拒絶すれば警察も強く出られる。被害者の意思は事件化する上でとても大切なことだ」と話した。

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 犯罪心理学が専門の桐生正幸・東洋大学社会学部教授は「どういう人にどんな警告をするべきかといった傾向は、おそらく全国の警察のデータベースを精査すると見えてくるはずだ。そのエビデンスに基づいて、警察だけではなく行政機関や相談窓口などを多く設けるなどしないと、今のままで対応は難しい。被害者の方々には言うに言われない事情がたくさんあり、それを汲み取る仕組みが必要。今の法整備はそこまで至らないので、もう一歩踏み込んで問題解決に結びつける立て付けがいる」と指摘する。

 警察が動くことによって加害者が逆上するなど裏目に出てしまう可能性もある。佐々木氏は「全て事件化することが果たして対策なのか、逮捕することが問題解決に直結するのか。これは危険だというときは被害届を出すよう説得するが、断わられた場合、警察ができることには限界がある。逮捕できなかった場合に、強制力をもって被害者をシェルターに入れることができれば守れるかもしれないが、それも合理的なのか」と苦悩を明かした。

■ストーカーはカフェ店員などにも 1対1ではなく“1対組織”の構図を

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 アイドルや俳優、政治家など有名人へのストーキング行為は「スター・ストーキング」と呼ばれる。ジョン・レノンの殺害や1989年の女優殺害などがきっかけで、1994年に全米で「反ストーキング法」が制定された。

 桐生氏は「いわゆる手の届かないスターに対するストーキングだが、様々なツールの登場によって、密接な人間関係を結んでいる方や手の届かない存在でもない、ちょうど中間の存在にストーキングできるようになってきた。そうなると厳罰化ではなく、被害者と加害者の双方に寄り添っていくような福祉的な取り組みがいる」と指摘する。

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 さらに、昨今では「ギャラリー・ストーカー」も注目されている。画廊などで作家や美大生につきまとう客やコレクターのことで、食事の誘いや支援を装って連絡先を聞いてくることがある。作品を買う客のため作家は断りにくい実情があることや、「必ず特定の場所にいる」ことで被害に遭いやすい。カフェ店員や美容部員、図書館司書などが被害に遭うこともある。

 佐々木氏は「相手の立場や生活も踏まえて“注意だけでいいです”と言うが、女性は自身を守ることを優先してほしい。警察が一番恐れているのは、被害を訴え出なかったことで、警察に認知されないまま重大事件になってしまうことだ」と話す。

 また、桐生氏は「1対1で対峙しないこと」を促す。「ギャラリー・ストーカーは、カスタマーハラスメントの調査をすると必ず出てくる案件だ。弱い存在である女性が、男権主義的な人から被害を受けることがある。こうした場合、お店や会社、事務所の担当者が前面に出て、“ストーカー対組織”の関係を作ることが重要だ」とした。

 佐々木氏は、トラブルのほとんどが「すれ違い」だと体感したという。「コミュニケーションのすれ違いで、女性が何も言わないのを男性は好意を持っていると誤解する。それを組織、警察や会社に言われて気づくことが圧倒的に多いので、まずは警察に相談してほしい」と呼びかけた。

(『ABEMA Prime』より)

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