日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Bリーグ1回戦・第2試合、関東B 対 九州が2月10日に放送された。8チーム中最多の48人がエントリーした関東Bに、最少の10人という九州という対照的な顔合わせになったが、九州が若手とエース棋士の奮闘が光りフルセットの末、関東Bを撃破。少数精鋭の九州男児が、熱い魂で厳しい初戦を突破した。
【映像】激戦を制し深浦康市九段は「理想的な勝ち方だった」とニッコリ
タイトル経験者から売り出し中の若手まで、ずらりと揃う大戦力・関東Bを、固い結束力を持つ九州が打ち破った。この試合でMVP級の活躍を見せたのは1人目に指名された古賀悠聖五段(23)だ。第1局から、いきなりタイトル31期を誇る渡辺明九段(39)と対戦になったが、ぶつかる立場からすれば失うものはない。古賀五段の先手番から横歩取りに進むと、渡辺九段が途中からひねり飛車模様の進行に。じわりと渡辺九段が有利に進んでいたが、中盤の激しい駒の奪い合いから、古賀五段の優勢に転じた。対戦経験は練習将棋の1度だけ。自分の手の内を知られていなことを逆手に取り、激しい攻め合いに競り勝った。
続く相手は、圧倒的な研究量を誇るタイトル5期の永瀬拓矢九段(31)。相居飛車で永瀬九段が急戦模様、後手の古賀五段が雁木に構えると、序盤に永瀬九段に誤算があったのか古賀五段がスッと有利に立つと、ここからはリードしたポイントを必死に守り抜くような将棋に。粘りに粘る永瀬九段をなんとか振り切って、タイトル経験者を連破する大きな仕事をやってのけた。
チーム最年少の若手が見せた気持ちいい将棋に、先輩たちも奮い立った。3番手で出てきた佐々木大地七段(28)は第5局に登場。第3局、第4局と連勝して波に乗るレジェンド・森内俊之九段(53)を食い止めた。佐々木七段の先手番から相掛かりで始まると、どっしりとした持久戦から緩やかな流れになり、序盤から少しずつポイントを稼ぐ理想的な展開に。中盤、終盤にかけても手厚い将棋に終始して、重厚かつ鋭いベテランに快勝し、関東Bの流れを食い止めると、第6局でも順位戦A級入りを目前にしている増田康宏七段(26)も撃破。アマチュア時代から対戦も多く、お互い手の内を知り尽くした同士の一局では、劣勢で迎えた終盤、粘りに粘って逆転した。
スコア4-2から伊藤匠七段(21)に佐々木七段、都成竜馬七段(34)が敗れ、フルセットにもつれ込んだところで九州男児の魂を見せたのは、名人経験者の佐藤天彦九段(36)だった。弟弟子の古賀五段が活躍しつつ、自身は第3局で森内九段に敗戦。ここまで応援する以外いいところなしだったが、決定局では昨年から本格的に転向した振り飛車の一つ、四間飛車を用いて、開催中の棋王戦コナミグループ杯五番勝負にも出場中の伊藤七段と、対抗形の将棋に。序盤から全く迷いなく指してくる伊藤七段にプレッシャーを受ける時間も長かったが、ここで間違えることなくじっくりと指し進めると、中盤から抜け出しそのまま逆転を許さずゴール。「こういうシチュエーションなのでだいぶ震えました」と、ABEMAトーナメントでも度々、リーダーとして決定局を任されてきた経験を地域を背負った大事な一局でも活かし、チームを初戦突破に導いた。
控室で笑顔を絶やさず、常に後輩たちを激励してきた監督・深浦康市九段(51)は「理想的な勝ち方だった」と、自分を除く4選手が対局し、それぞれの持ち味を出して、強敵・関東Bを打ち破ったことにニッコリ。勝利を決めた佐藤九段も、改めて「若手2人が流れを作ってくれた。そういう将棋に刺激を受けて、やる気が出たところも大きい。導いてもらえた」と感謝した。
人数は少ない分、顔を合わせる時間も多く、雰囲気のよさが控室を見るだけでも伝わる先頭集団・九州。優勝候補を倒したことで、一気に大会の注目株になった。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)