後輩が必死に蓄えたものを、先輩が優雅に趣味で使っちゃった!?日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選Bリーグ1回戦・第2試合、関東B 対 九州が2月10日に放送された。第4局には、九州から名人経験者の佐藤天彦九段(36)が登場。関東Bのレジェンド・森内俊之九段(53)に対し、昨年から本格的に転向した振り飛車を採用。盤面狭しと飛車が動き回る、師匠・中田功八段(56)ばりの指し回しに周囲から「師匠降臨」「ロマンがある」と大盛り上がりになった。
佐藤九段はもともと居飛車党で、名人も3期獲得した実力者。ただ普段から、将棋に関する新たな可能性を模索し、居飛車党が多く指す相掛かりや角換わりではなく、一時期は横歩取りも多用。さらに昨年からは本格的に振り飛車党に転向した模様で、公式戦でも四間飛車、三間飛車を指しこなしては高勝率を出している。
関東Bとの試合は、弟弟子である古賀悠聖五段(23)が渡辺明九段(39)、永瀬拓矢九段(31)という超トップクラスの棋士の続け様に撃破。第3局で森内九段に敗れたものの、スコア2-1とリードして、兄弟子にバトンタッチするという理想的な展開になっていた。弟弟子の勇姿を目の当たりにし、気合を入れて盤面に向かったところ、先手の森内九段が予想通りに居飛車で進め、後手の佐藤九段はあまり指したところを見られていない向かい飛車を採用。チームの控室では、振り飛車も指す都成竜馬七段(34)が「向かい飛車やってほしいな」とつぶやいた瞬間、8筋の飛車が大きく2筋に展開されたことで、チーム全員から「おおー!」と歓声があがった。
クラシック音楽を好み“貴族”とも呼ばれる佐藤九段の世界観が展開していったのは、この後だ。△8三銀と上がり、飛車の横利きが通ったところで、九州の控室では一同が「おおー」とどよめき。佐々木大地七段(28)が「まさか!?師匠降臨」とつぶやくと、深浦九段も「こーやん、喜んでる」と、振り飛車の使い手である中田八段を思わせる飛車の大展開に期待を寄せた。
指しては進み、ついにその時がやってきた。当初、8二の地点に戻ると思われた飛車だが、端攻めを始めていたことで一気に9筋へ。解説していた村山慈明八段(39)も「ロマンが溢れる。この手が見たかった」と熱っぽく語った。
ただ対局はといえば、重厚な指し手を繰り返した森内九段の前に、佐藤九段の軽い攻めが跳ね返されることとなり、結果は敗戦。控室に戻った佐藤九段は「古賀君に勝ってもらった余裕を趣味に費やすみたいな」と苦笑いしたことで、一同は大爆笑。深浦九段が「間違いなく師匠は大喜び」とつなぐと、再び佐藤九段は「本当にうちの師匠みたいな将棋」と、飛車にでもなったような珍ジェスチャーまで交え、さらに笑いの輪を大きくしていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)