【写真・画像】冤罪はなぜ起きたのか「人質司法」の実態SP 大川原社長の獄中ノート、内部告発文書で見えた闇 18日12時~放送 1枚目
【映像】“生物兵器に転用可能”とされた「噴霧乾燥機」
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 生物兵器に転用できる機械を不正輸出したとして外為法違反で逮捕、起訴され、のちに社長らの起訴が取り消された「大川原化工機(おおかわらかこうき)」の冤罪事件が世間を震撼させている。

【映像】“生物兵器に転用可能”とされた「噴霧乾燥機」
 
 警視庁公安部に逮捕された大川原化工機の社長ら3人の勾留は11ヶ月にも及んだ。元顧問は勾留中に胃がんが発覚したが、適切な治療が受けられず、自身の潔白が証明される前に亡くなってしまった。
 
 違法捜査で逮捕、起訴されたとして、社長らが国と都を相手に損害賠償請求をした裁判では、捜査員が「捏造ですね」と証言するなど異例な展開に。2023年12月、裁判所は約1億6千万円の賠償を国と都に命じたが、国と都は判決を不服として控訴、社長らも控訴した。
 
 法廷で捜査員が異例の証言をした“冤罪”事件、その背景に一体何があったのか。改めて事件をおさらいする。

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 事件の舞台となったのは、神奈川県横浜市に本社を構える大川原化工機。液体を粉末に加工する「噴霧乾燥機」の国内トップシェアを誇る企業だ。執行役員の初沢悟氏によると、液体原料を霧状に噴霧し、熱をかけ粉にする技術で、もともと牛乳を粉ミルクにする用途で開発され、漢方薬やインスタントラーメンの粉スープなどにも用いられるという。

 しかし2020年3月、「生物兵器に転用可能な殺菌機能がある」として、大川原正明社長を含む幹部3人が逮捕された。中国やロシア、北朝鮮などに武器や軍事転用可能な技術を輸出するには、経済産業大臣の許可が必要(外国為替および外国貿易法)なことが理由とされた。

「手錠をかけられた状態で外に連れ出され、その時には報道がたくさん目の前にいる状況。我々自身は非常に不審な顔をしている。いかにも悪い顔をしている」(大川原社長)

 その10カ月後、公判に向けた従業員らの実験で、殺菌機能がないことが判明する。

「こちらは初めから、いろんな意味で(殺菌は)できないよと話をしている。中国が力を持って、米中関係の力の均衡が近づいた。それを日本の政権が慮ったのか、公安が察知して、一生懸命お膳立てしたのでは。たまたまターゲットになった」(大川原社長)

 大川原社長ら3人は2021年2月に保釈され、11カ月ぶりに身柄拘束から解放された。そして7月、初公判を4日前に控えたタイミングで、東京地検は起訴を取り消すという異例の判断をし、東京地裁は不当な身柄拘束への刑事補償として、国に1130万円の支払いを命じた。和田倉角法律事務所の高田剛弁護士は、これは最低限の補償額だと説明する。

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「今回のひどい冤罪事件で、会社も傾いたことを鑑みると、1000万円の補償を受けても全然足りない」(高田弁護士)

 弁護団は「真相を明らかにする」「名誉を回復」「金銭的な補償」の3点から、さらに大きな国家賠償請求訴訟に乗り出し、国と東京都に対し、総額約5億6500万円の賠償請求を行った。

 2023年6月、捜査を担当した警部(捜査当時は警部補)が「逮捕に至った捜査手続きは間違っていない」と法廷で証言。しかし1週間後、別の警部補が「驚きの証言」を行った。

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「まあ捏造ですね。捜査員の個人的な欲でこうなりました」(警部補)

 出廷した経産省の担当者は「噴霧乾燥機が規制対象外だと何度も伝えた」と証言。しかし大川原社長らを起訴した担当検事は、法廷でこう述べたという。

「(起訴は)間違っていたとは思っていない。当時、私が見聞きした証拠関係で、同じ判断をするかどうかと言われれば、同じ判断をする。間違いがあったと思っていないので、謝罪という気持ちはない」(担当検事)

 大川原社長が、担当検事の様子を振り返る。

「まばたきが非常に速くなったりするところを見ると、非常に無理して頑張っている。ちょっとかわいそうな感じもした」(大川原社長)

 高田弁護士は、検察の態度を「いかに勝つかしか考えない。だから最初の主張を少し曲げて、それでも有罪を勝ち取りたい」として、検察官にとってはゲーム感覚だと指摘する。

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 大川原化工機は社長らの逮捕以来、大手取引先との仕事がストップ。取引銀行からもそっぽを向かれ、倒産寸前に追い込まれた。加えて、ともに逮捕された会社顧問の相嶋静夫さんは、保釈と同時に胃がんで亡くなった。

「(相嶋さんは)責任感が強いだけに、他の人間のこと、会社のことを心配していながら、我々が『無実だ』と頑張らなければいけないということもあったのでは」(大川原社長)

「便が黒色便になって、『検査してくれ』と何度もお願いして、ようやく検査してもらい、ステージ4のがんが見つかった。過酷な環境下に置かれ、体調の悪化につながったのではないか」(高田弁護士)

 「検事が絶対反対すると、裁判所は保釈しない。そういう所にも、検事が威張る理由が出てくる」と語るのは、東京高裁判事や最高裁調査官を歴任した、ひいらぎ法律事務所の木谷明弁護士だ。

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「裁判所だって、『絶対俺たちが反対すれば保釈するはずない』と被告に言う。取り調べの録音録画が始まったが、検事は取り調べ中に録音録画されていても平気で脅しつけているのが、全部録音に残っている。平気な顔して取り調べしている。恐ろしい」(木谷弁護士)

 そのうえで木谷弁護士は「間違いをするはずがない」という考えが間違いだとして、「人間だから必ず間違う。判断を間違うことはあり得ると思わないといけない」と、考えを改める必要を示す。

「ことさらにうそを言ったり、ことさらに冤罪を作り出すというのは、あっちゃいけない。いつ何時、その立場に自分が置かれるかわからないという気持ちで、制度のあり方を根本的に考えなきゃいけない」(木谷弁護士)

 日本弁護士連合会は現在、再審法の改正に向けて取り組んでいるが、木谷弁護士は「この問題は重大。ぜひとも実現したい」との考えだ。

「検察(の立場で)は改正しないほうがいい。どんどん再審が認められるようになったら困るわけだ。最高裁もやったことを間違いだったなんて言われたくない。裁判所は最高裁までやって慎重に審理したのに、それを間違ったのかと思われるのが嫌だ。裁判の権威に関わると考える人はいっぱいいる」(木谷弁護士)

(『ABEMA的ニュースショー』より)

※この記事は、2023年7月20日に掲載した記事を再編集したものです。

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ABEMA的ニュースショー 冤罪の闇“人質司法”の実態SP
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