【写真・画像】「食事もトイレも手錠をかけながら…」無罪で逮捕された社長が獄中でメモした“被疑者ノート”で明らかになった取り調べの実態【大川原加工機冤罪事件】 1枚目
【映像】相嶋さん遺族が無念を語る「めちゃくちゃにされて…」
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 冤罪で逮捕され、被告のままガンで亡くなった、大川原化工機元顧問の相嶋静夫さん。相嶋さんの妻が、その胸中を明かした。
 
【映像】相嶋さん遺族が無念を語る「めちゃくちゃにされて…」
 
「『俺、何にも悪いことしていないのに、なんでこんな目に遭うんだろう』。老後の一番大事な時期にめちゃくちゃにされて、悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれない」(相嶋さんの妻)
 
 相嶋さんらは、大川原化工機の主力製品であるスプレードライヤ(噴霧乾燥機)が「生物兵器を製造可能」な機器だと疑われ、輸出を制限する外為法違反の容疑で逮捕された。大川原化工機は静岡県富士宮市に、液体を霧状にして、瞬時に乾燥させることで、粉末を作るスプレードライ(噴霧乾燥)の実験施設を持っている。相嶋さんが設計した肝いりの施設だ。ここから見える富士山を愛した相嶋さんは6年前、施設の近くに夫婦で引っ越した。研究・実験を指揮しつつ、富士山の麓で「第2の人生」を楽しむはずだった。ただ、わずか1年たらずで、平穏な生活は幕を閉じる。任意の事情聴取に応じるため、月1回は東京へ足を運ぶことになったのだ。そんな日々は1年半ほど続いた。
     
 相嶋さんの妻は、当時の警察とのやりとりについて「理解してもらえない」と言っていたと振り返る。そして2020年3月11日の明け方、自宅に突然捜査員が訪れ、相嶋さんは逮捕された。

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「捜査員が私にあいさつもしない。何にもしない、連れていく時も何のあいさつも。私はただ任意の事情聴取に行く続きかなと思って、行く時は警察の車で行くんだったら、帰り迎えに行くからと。その晩、帰ってくるのかなと思った。ずっと待ってた、遅いなと思いながら……」(相嶋さんの妻)
 
 妻が逮捕を知ったのは、警察の連絡ではなく、翌日ニュースを見た親戚からの電話だったという。面会が許されたのは、逮捕から1カ月後。相嶋さんは疲れた表情ながら、怒りに満ちていた。「なんでこんな目に遭うんだろう」と嘆く夫に、同意するも返す言葉はなく、「二人でうなだれていた」そうだ。黙秘を続け、劣悪な環境下で拘束されていた相嶋さんだが、体調に異変が確認された。東京拘置所での健康診断で、極度の貧血が判明したのだ。
 
「弁護士から聞いた話では、『体調を崩して輸血をしたらしい。シャッターが下りたみたいに、前が真っ暗になって動けなくなった』」(相嶋さんの妻)
 
 医療の専門家は、輸血が必要なほどの貧血の場合は「その原因を詳しく調べるのが常識」と指摘するが、それ以上の検査はなされなかったという。体調が悪化する中で、相嶋さんの被疑者ノートには「専門医にかかりたい」といった内容もあった。ようやく拘置所内で内視鏡検査をした結果、胃の出口付近に大きな潰瘍が発見される。結果的にガンだと判明するが、本来なら必ず行われるMRIやCTなど詳しい検査は行われなかった。体調は日増しに悪化し、車椅子を使用する状態に。その頃の印象を、妻は「主人の目の色が薄い。グレーがかった目。太陽に当たらないからかな、色も白くなっているな」と思い出す。
     
 長男は父親を救おうと保釈請求するが、すべて却下された。拘置所所長に外部の病院での検査入院を求める手紙を何度か送るも、こちらもリアクションはなかった。「保釈も蹴られちゃうし、早く外の病院に出さないと死んじゃう」(相嶋さんの長男)。
     
 そんな状況を打開するために、弁護士は、数時間のみ外出できる「勾留執行停止」を求めた。しかし当日、大学病院では簡単な検査のみで、精密検査は行われなかった。
 
「事前連絡なしに犯罪者が来られても困る。これ以上ここでは診察できないから、今日はお引き取りくださいと……」(相嶋さんの長男)
 
 その後、他の病院もあたったが、どこも同様の理由で受け入れてくれなかった。ようやく受け入れてもらえる病院が見つかり、入退院を繰り返すも、すでにガンは肝臓にも転移し、緩和ケアを選ぶほかなかった。事件を担当する高田剛弁護士は「ご家族だったらどうか。登場人物をご家族に置き換えて考えてみたらどうか。恐ろしい」と訴える。
     
 妻はある日の面会で、黙秘を続けて憔悴している夫に、たまらずこう言った。「あなた、嘘ついて『やりました』って言ったら、ここから出られるんでしょ」。相嶋さんはその時、うつむき加減で、ずっと黙っていたという。その胸中を知る術は、もうない。
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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