【写真・画像】無実の罪で逮捕され、胃ガン判明も保釈されず病死…「人質司法」の犠牲となった相嶋静夫さん 大川原化工機・冤罪事件 1枚目
【映像】冤罪から自分を守る方法
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 不動産デベロッパー会社の社長が横領容疑の疑いで逮捕され、のちに冤罪と判明したプレサンス事件。無罪を勝ち取るまでの道のりは困難を極めるものだったという。
 
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 2019年、大阪の不動産会社プレサンスコーポレーションの創業社長・山岸忍氏は、身に覚えのない横領容疑で逮捕された。学校法人の土地売却をめぐり、21億円もの不正流用が発覚。そのうちの18億円を山岸氏個人で捻出していたため、業務上横領罪の疑いで大阪地検から逮捕、起訴された。

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 山岸氏は、土地売却の前の学校移転などの再建費用として貸付けた認識だったが、実際は、新理事長が学校法人の理事を買収するために資金が使われていた。大阪地方裁判所は山岸氏に無罪を言い渡した。
 
 この「プレサンス冤罪事件」では、言葉巧みに有罪へといざなう検事に対抗すべく、山岸氏は9人もの最強弁護団を結成。それでも独房から外に出られるまでは248日間、そして無罪を勝ち取るまでおよそ2年の月日を要した。
 
 山岸氏は勝てた要因は2つあるとして「まず『人質司法に耐える精神力』。これがなかったら虚偽自白させられて有罪。それと『優秀な弁護団を雇う経済力』と思う」と語り「大前提として検察官というのは『正義の味方』『真実を追求する人たち』と思い込んでいた」と反省点を口にした。女性検事はあの手この手を使って山岸氏を落とそうとし、こちらの懐に入り込んでくるような検事の手法に山岸氏は「敵ながらあっぱれ」と評価し「検察官はどうやったら有罪にできるか全部、法律的にわかっている。この2人の勝負になるので、プロボクサーと素人の戦いになる」と、当時の圧倒的に不利な状況を振り返った。
 
 5度目の保釈請求も棄却され、精神的にはもはや限界だったという山岸氏は弁護士に「証拠請求手続きよりも保釈を優先してください」「私が無実であることは私が一番よく知っています。証拠なんかなくても無罪になるはずなんです」と訴えたが、弁護士は「後戻りできなくなりますよ」と諫めたという。
 
 逮捕直後から弁護を担当していたのは中村和洋弁護士と渡邉春菜弁護士ら弁護士3名。起訴されてからは元検事の亀井正貴弁護士ら2名が加入した。さらに保釈を決めるのは裁判官という観点から元裁判官の西愛礼弁護士の加入も決まった。のちに合流する証人尋問のエキスパート、秋田真志弁護士。そのほかビジネス専門の弁護士2名も入れ、合計9名の最強弁護団が結成された。

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 山岸氏はこのドリームチームとともに“150パーセント”通用する保釈請求書を目指した。山岸さんの保釈請求が通らない理由はほかの要因があった。それが山岸氏が起訴された直後に発生した、カルロス・ゴーン被告の国外逃亡だ。この事件は経営者として成功していた山岸さんには逆風だった。そこで最強弁護団は、ゴーン被告の保釈条件を参考にし、保釈条件をより厳しくした6度目の保釈請求書を出した。
 
 6度目の保釈請求の結果を待っているあいだ、不安で心が折れそうになったとき山岸氏は弁護士チームから「絶対無罪、負けるな!」という激励をもらったという。山岸氏は「普通の弁護士さんて『絶対』という言葉を使わない。けどその『絶対』、自分の弁護士人生をかけても『絶対』みたいな。その熱量というか、それが伝わってきて、すごいうれしかった」と振り返った。結果、この保釈請求は認められた。
 
 山岸氏は会社の倒産を防ぐため、拘留中に代表取締役を辞任。個人の株式だけで75億6168万円を失った。また、自身や部下Kなど、関係者の取り調べの録画もすべてチェックし文字に書き起こし、弁護に活用した。この録画の確認は弁護士にしか許されていない。

「200時間の取り調べ。文字起こしするのには、簡単に考えてもその10倍くらいの時間がかかります。弁護士のタイムチャージの相場というのは大体1時間4万円。これだけでも莫大な費用がかかる」(山岸氏)
 
 人質司法の闇に飲み込まれ大きな代償を支払った山岸氏はみずからの経験からすべての人々に「正々堂々と完全黙秘をしてくれと言う。今の制度が変わらなかったら、これしか自分を守る方法はない」「向こうは聖人君子ではない。功名心と保身の塊。だから完全黙秘するしか方法はないと思う」とメッセージを送った。
 
 亀井正貴弁護士は無罪を勝ち取るために必要なものについて「まずメンタルの強さと本人の頭の良さ。それから(弁護団を)構成できる、戦えるだけの財力。それからもう1つは支援者、人望があるということ」
 
 一方、財力がないケースの場合は「メンタルが大事。これまでの経歴で蓄積したものはないものと考える。なにかあってもすぐにリセットして、目の前の事件のことに集中する。明日のことは考えない。そして勾留中は動物のように生きる。原始的人間として生ききる、これが大事。将来のことは出たときに考えればよい」と解説した。
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)

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