政府は16日、少子化対策の強化に向け「子ども・子育て支援法」などの改正案を閣議決定した。財源となる支援金は2028年度に1人あたり月平均500円弱を見込んでおり、医療保険料と合わせて徴収するとしている。
Xでは疑問の声があがるが、一風変わったアプローチで話題となったのが岡山県。伊原木隆太知事が政策の一つにあげたのは、「同窓会」の支援。まずは男女を出会わせるという、独身者の支援ということだ。
少子化対策にはどのような支援が必要なのか。『ABEMA Prime』で議論した。
■「参加者に焦りを覚えてもらう」 同窓会支援はアリ?
番組取材によると、岡山県の同窓会開催支援の予算額は500万円。県内では4町が独自に実施中で、県として全国で初めて支援に動く(年齢制限を検討中)。子ども未来課の担当者は「結婚している参加者を見て、他の参加者には焦りを覚えてもらい、結婚への意識を高めたい」と話している。
タレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやかは「女子校出身なので同窓会には女子しか集まらないが、久しぶりに会った友達が結婚していたりお母さんになっていたりする。独身組は焦るので、一定のショック効果はあると思う」とコメント。
一方、テレビ朝日の田中萌アナウンサーは「ある本には、結婚は“周りがするからするんだ”と書いてあった。いくら自由な時代になったとはいえ、結婚していると社会的に認められるという部分は、ある年齢以上はあると思う。私は子育てしている周りの人を見るといろいろ考えて自信がなくなってしまい、逆に子どもが欲しくなくなる」と明かす。
政治学者・YouTuberの岩田温氏は結婚していく同窓会メンバーの影響を受けた1人だそうで、「“周りが結婚しているから”は効果があると思う」とコメント。一方で、「行政が人の生き方にどこまで介入していいものなのか。少子化は大きな問題だと思うけれども、リベラリズムが前提とされている国家において、“結婚している人生のほうが正しい”とすることには慎重であるべきだ」と疑問を呈する。
Flags Niigata代表で2児の父親の後藤寛勝氏は「少子化対策の傘の下にこの支援を行うのは慎重になるべきだが、30歳、40歳、50歳という節目で自分の価値観をリセットする、周りと比べてみるきっかけとして、キャリア軸で考えたほうがいいと思う。少子化対策と言うと、既婚者は参加していいのかとか一部の人に限られるとか、やましい見られ方が出てきてしまうのでは」と指摘した。
これにジャーナリストで人口減少対策総合研究所理事長の河合雅司氏は「これはあくまで出会いの場の提供で、結婚だけでなくビジネスが生まれるかもしれないし、趣味仲間ができるかもしれない。引いて見た時、結果としてそれが少子化対策になっているというだけのことだ。国家や行政が個人の価値観に介入して、こうしろああしろとモデルを押し付けるのはありえない」と述べた。
■子育て支援から独身支援へ? 効果的な対策は
山形・庄内町は去年9月に「メタバース 婚活」、栃木・宇都宮市は去年10月に「『住替×婚活』バスツアー」を開催。東京都は2024年度の早い時期に「TOKYOふたりSTORY AIマッチングシステム」を本格稼働させる予定など、“独身支援”の動きが広がっている。
河合氏は「少子化の理由の7割以上は結婚できない状況にあるということで、この6、7年、政策を変えてきた。そのタイミングで各自治体がいろんなことを始め、マッチングアプリの出会いなども政府は支援すると言っている。おそらく10年前だったらこの議論はテレビでできなかっただろう。少子化に対する危機感で社会の雰囲気も変わった」と述べる。
一方、異次元の少子化対策については「若者から徴収して若者に配るという、何をやっているかよくわからない政策だ」と苦言を呈する。「本来は、他の財源を削って子育て支援や結婚サポートに持っていかないといけないのに、全部そのままにして、足りないから新たに月500円と。おそらくこれはもっと高くなっていくだろう。今子育てしている人たちも、子どもが成長した途端に負担だけ残るという話だ」。
岩田氏は「未婚化率が高くなっている原因の1つとして、“女性は若いうちに結婚して子どもを作る”という風潮は悪しきもの、古臭いという考え方が社会に是認されてきたことがあると思う。フランスのエマニュエル・トッドは“女性の識字率が上がれば出生率は下がる”と言っているが、子どもを増やすには逆のことをすればいいという極端な議論も出てくるので、そこのバランスを政治はどうとるか。少子化は世界的な現象で、“先進国の病”みたいなものであることは認識しておいたほうがいいと思う」との見方を示す。
後藤氏は「新潟市では妊婦健診や子どもの一時預かりに予算がついて、うちの家庭も“子育てしやすい街だ”という感覚になっている。しかし、同窓会に行った時、“ここで子育てするのつらい”“子どもは1人のほうがいい”という話をしたら、“やっぱ結婚考えちゃう”という話になる。独身支援よりも、“生き生きと子育てしている”と周りが捉えられる環境にすることが大事ではないか」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)
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