【写真・画像】 1枚目
【映像】ティファニーが高さ5メートルからダイブで躍動した女子チェンバー戦
この記事の写真をみる(2枚)

 昨年10月、SNSの総フォロワー数が世界で10億人を超えるアメリカが誇る世界最高峰のスポーツエンターテイメントであるWWEのメイン大会「RAW」と「SMACKDOWN」の放送が日本で開始された。さらに先月27日(日本時間28日)に行われた「ロイヤルランブル」以降は、放送席の容を一新。自他ともに認める“WWEフリーク”の塩野潤二アナウンサーらが加わった。そんな塩野アナが、自らの実況回ごとにWWEの魅力や楽しみ方を振り返る連載コラム。第3回目のキーワードは「ライブイベントというWWEの本当の姿」。

【映像】ティファニーが高さ5メートルからダイブで躍動した女子チェンバー戦

【写真・画像】 2枚目
拡大する

■覚えてほしいスター候補は「ティファニー・ストラットン」

「WWEの何が良いの?」と言われたら、真っ先に見て欲しい大会になったと思います、オーストラリアで開催されたPLE(プレミアムライブイベント)『イリミネーション・チェンバー』は。早速、興奮ポイントを振り返って行きましょう

 まず何と言ってもロケーションが素晴らしかったです。オーストラリアの巨大屋外スタジアム。青空の時間から始まり、黄昏時・そして夜と、屋外スタジアムは様々な顔を見せます。そして屋外ゆえの派手な演出! スタジアム内はいつもの何倍増しかのパイロ(花火)演出、もう爆発に近い。また、スタジアムの横を流れるスワンリバーから上がる花火は、まるでオリンピックのようでした。観客数は5万2590人。アリーナ・スタンドまでビッシリ埋まっていて、さながら野外フェスのよう。さらにWWEを待ち望んでいたであろうオーストラリアのユニバース(ファン)たちの凄まじい盛り上がり。このスケール感こそ、WWEを見て欲しい理由の一つです。

 この大観衆とスーパースター(選手)のやりとりがまた面白かったです。日本のASUKAとカイリ・セインの『カブキ・ウォリアーズ』は、本戦前のキックオフ・ショーに登場。対戦相手は、地元オーストラリア出身のスーパースター・インディ・ハートウェルだったので大ブーイングを浴びましたが、それを楽しんで逆に煽っていたのがさすがでした。試合は地元のスーパースターを活躍させた後、きっちり勝利。やはり良い仕事をしますね。

 さて、本戦に入りいきなり女子イリミネーション・チェンバーです。余談ですが我々日本語放送チームは、生放送のPLEでは、基本試合順を知らされないでやっています。現地でも試合順が直前まで決まらないことが多いらしく、視聴者と同じタイミングで『あ、次はこの試合なんだ』と知るわけです。現地はどれだけ慌ただしいんでしょう…。

 女子チェンバー戦で印象的だったのが、ティファニー・ストラットンへのユニバースの反応です。彼女はNXTからスマックダウンに昇格したばかりで、デビューまだ2年3カ月・24歳のルーキー。大抜擢と言えるイリミネーション・チェンバーは、彼女の評価が決まる一戦でした。

 ティファニーは、スーパースターやユニバースの心を逆撫でするようなちょっとウザいタイプのキャラクター。昇格早々トップスターたちに『アナタたちはもう古い』とあっさり言ってしまうほどの強心臓の持ち主ですが、この日はさすがに緊張していました。表情が固い。この一戦の持つ意味をわかっていたのでしょう。

 しかし彼女はここで才能を発揮します。実況していても、明らかに目を引く動きをしていました。最初はブーイングが飛んでいたのですが、彼女の頑張りが伝わり次第に歓声へと変わって行きました。こういったキャラクターを超えた反応にWWEは目を光らせているはず。ティファニー自身に価値がある証拠だからです。こういうスーパースターはすぐ出世します。ティファニー・ストラットン、覚えておいてください。

 同じくユニバースの反応と言えば、第2試合のドミニク・ミステリオへの特大ブーイング。マイクを持って仲間のダミアンとベイラーを紹介しようとしたら発生し、ドミニクの声は無情にもかき消されました。WWEにおいてブーイングは大切なバロメーター。ブーイングの音量はユニバースをいかにヒートさせているかの物差しとなります。一番まずいのは反応が無いことですから、ドミニクの評価は高いと言えます。レイ・ミステリオの息子から一本立ちした彼を、WWEがどう売り出して行くのか楽しみです。

 男子イリミネーション・チェンバーは、展開が秀逸でした。今のWWEは細かいところまで伏線が張られています。よくもまあ丁寧に考えるなと、いつも感心します。この試合で言うと、LAナイトが失格した場面。ナイトが必殺のBFTをマッキンタイアに決めて勝ったかと思った瞬間、何と試合が組まれていないAJスタイルズが乱入。ナイトをイスで滅多撃ちにし、そこへマッキンタイアが覆い被さり3カウントが入りました。

 AJはチェンバー戦の予選で、ナイトに妨害されマッキンタイアに敗れていました。考えてみると、さらにその前のロイヤルランブルの4WAYタイトルマッチ辺りから、二人は揉め始めていました。

 私はAJが予選で遺恨の残る負け方をしていたので、万が一に備えAJの情報も仕込んでいました。そしたらホントに来ましたAJスタイルズが。あの一瞬の乱入劇だけの為に、オーストラリアまで!

 そして、ラストのローガン・ポールの行動。マッキンタイア相手に勝利目前のランディ・オートンに対し、失格したはずのローガンがブラスナックル攻撃。崩れ落ちたオートンにまたもマッキンタイアが覆い被さり、レッスルマニアのチケットはマッキンタイアにさらわれました。ここでもしっかり次への伏線が張られたわけです。そして、2度の敗退の危機を救われ勝利したマッキンタイアの悪運の強さ。この話の描き方、WWEのストーリーは質が高いとつくづく感じます。

 メインイベントは、オーストラリアが生んだスーパースターである’’マミー"ことリア・リプリーの故郷凱旋。ナイア・ジャックスに押されながらも地元の大歓声を力に勝利しました。リプリーは、WWEの進化の象徴です。地元でなくても、ブーイングとかそういうものを超えた存在になっていると感じました。

 それにしてもエース格のローマン・レインズも出ない、コーディ・ローデスもセス・ロリンズも試合をしない。言ってしまえば4試合しかないのに、異国のオーストラリア大会で5万人が入るというWWEのパワーには驚く他ありません。4月のレッスルマニアはオールスターキャストで、ハリウッド俳優のドウェイン・ジョンソンことザ・ロックも出るというんだから、どうなっちゃうんでしょうか。

 今回改めて感じたのは、WWEは体験型アトラクションに近い。歌って、叫んで、ブーイングして。みんなで作り上げるライブイベントというWWEの本当の姿を見た気がしました。

 ちなみに我らがR-トゥルース氏は、オーストラリアと間違えてオーストリアに行ってしまったそうです。最高!!

文/塩野潤二
Ⓒ2024 WWE, Inc. All Rights Reserved. 

【映像】ティファニーが高さ5メートルからダイブで躍動した女子チェンバー戦
【映像】ティファニーが高さ5メートルからダイブで躍動した女子チェンバー戦
日本人女子レスラー、妖艶衣装で“肩出し、舌出し”敵地ファンと煽り合いの珍事 「姐さん格が違う」圧巻のヒールっぷりにファン興奮
日本人女子レスラー、妖艶衣装で“肩出し、舌出し”敵地ファンと煽り合いの珍事 「姐さん格が違う」圧巻のヒールっぷりにファン興奮
「ピアスが…」「ちぎれた?」女子レスラーを襲った戦慄シーン 「なんか転がった」「ピアスが飛んだら痛い」ファンも放送席もドン引き 
「ピアスが…」「ちぎれた?」女子レスラーを襲った戦慄シーン 「なんか転がった」「ピアスが飛んだら痛い」ファンも放送席もドン引き 
日本人女子レスラー、妖艶衣装で“肩出し、舌出し”敵地ファンと煽り合いの珍事 「姐さん格が違う」圧巻のヒールっぷりにファン興奮

WWE 配信情報はこちら

この記事の写真をみる(2枚)