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【映像】アポロ11号、世紀の月面着陸(1969年)
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 「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大なる飛躍である」。1969年に月面着陸を果たしたアポロ11号、アームストロング船長の言葉だ。

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 世紀の瞬間から55年。2024年2月23日、アメリカの企業が民間として世界初の月面着陸に成功した。27日時点で、船体は横倒しだったが電力供給の問題はなく、実験設備でのテストを開始。NASAのビル・ネルソン長官は「きょう半世紀以上ぶりにアメリカは月へ戻ってきた」と述べた。

 中国が2020年に月の土を採取することに成功し、昨年にはインドも無人探査機を打ち上げて月面着陸に成功するなど、いま月面探査が再び注目されている。

 日本もJAXAが無人探査機『SLIM』をピンポイントで月面に着陸させ、26日にはマイナス170℃の環境で2週間の夜を越え、無事に通信を再開させて驚きと感動が広がった。現在は着地地点が夜を迎えたため再び休眠に入り、月面が昼になる3月下旬に活動を再開する見込みだ。

 なぜ、いま再び月面探査が活発になっているのか。『ABEMA Prime』では専門家とともに考えた。

なぜ月面探査が「再び熱い」のか

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 JAXAなどを経て独立、投資事業を通じて宇宙開発に携わる大貫美鈴氏は、『SLIM』について「14日間は夜マイナス170℃まで下がり、昼は100℃を越え、約300℃の温度差があった。この環境下で通信できたということは、他の様々な電子部品や、それを構成する全てのパーツが正常に生き残ったことの証左。それがすごい」と評価した。

 『SLIM』は、昨年9月7日に打ち上げられ、先月20日に日本初、世界でも5カ国目となる月面着陸に成功。今月26日に活動を再開させた。

 大貫氏は「日本の技術として示せたのはピンポイント着陸だ。100メートル以内を目標に、10メートル以内の精度で降りられたのではないか。少し不具合があったようだが、目標を達成する55メートルのところで降りた。他国の探査機だとキロを超える。これは科学技術として、国際協力でプロジェクトをやっていく上でも日本の売りになる」との見方を示した。

 また、「アポロの時代は様々な国家間の競争があったが、今は月面に行って持続可能に探査・開発し続ける、あるいは住むことが目的。無人の探査目的ではなく“行くところ”になってきている」と、現状を説明。

 「昨年から目に見える形でムーンラッシュと言われるようになった。今年着陸するのは数機だが、周回衛星を月に送ったり、ローバを全部数えると40ミッション以上ある。来月にも中国が周回衛星を入れてそこから小型衛星を放出するなど次々と動きが出てきている」というように、月面探索は再び活発になってきている。

 さらに、将来的には月を拠点に火星を目指すことも期待されているが、「従来から火星は地球と似ているため興味の対象だったが、水氷が発見され“人間が住めるのではないか”“宇宙船の燃料にできるのでは”ということで、注目度が高まった」と解説した。

月への貨物輸送ビジネス 最大4兆8000億

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 大貫氏自身も宇宙開発に携わっている。

 15日に打ち上げられたアメリカのインテュイティブ・マシーンズ『Nova-C』は、月への物資輸送を民間企業が担うNASA事業の一環で、民間企業で世界初となる月面着陸を成功させた。

 今回、載せられた民間の搭載物資6つのなかの1つに大貫氏が携わる組織が載せた月面望遠鏡があり、その現状と今後を「目的は月からの観測。石が当たってまだ観測はできていないが、望遠鏡も生きていて通信もできている。民間初の望遠鏡で今年また次の挑戦がある」と述べた。

 また、民間企業の動きについて「今は民間が事業として月への輸送ビジネスを行なっている。日本ではispaceがある。打ち上げとしては民間初で、取れたデータでビジネスなどを行う」と言及。

 「いま2040〜2050年代を目指し、1000人が月面で暮らす“月面社会”を作る動きがある。そのためには水氷から空気を作って水素で燃料を作る必要があり、掘削して3Dプリンターで居住区を作って植物を栽培するなど、様々なことが考えられている。出張など約1万人も含めて月で働くために往還する、そんな展望の中で進められている」と、注目が増す貨物輸送ビジネスの展望を解説した。

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 月への貨物輸送ビジネスは急拡大し、2036~2040年の5年間合計で、最大約4兆8000億円規模のビジネスに拡大すると予測されている。

 大貫氏は、今後について「宇宙産業全体では2016年に約36.9兆円だった市場規模が、40年代に100兆円を超える見通しだ。2.7トリリオン=300兆円くらいの経済圏になると予測する調査もあり、月は大きなマーケットになっていく。最初の顧客は政府で、予算が作られ、それを“輸送してくれ”“データをくれ”と、民間に仕事を出すところから始まり、事業として拡大していく。国という資金源があるうちに、民間の事業として、官需に依存しない体制をいかに作っていくが重要だ」と指摘。

 また、具体事例もあげ「スペースXが、無人で最初に月に着陸させる『スターシップ』はかなり大型なので、そこでコスト感覚がガラッと変わる。最初のビジネスは資源利用で観光もある。日本の宇宙産業は政府の支援もあり、宇宙関連の予算も上がっている。宇宙以外でも今の内閣はスタートアップ支援を強化しており、入口は広がっている。以前とは異なり、非常に追い風がある」と述べた。

「日本品質」に熱視線? トヨタから世界初の探査車両も 

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 今後の宇宙開発に関する大きなトピックとしては、NASAが主導し、日本も参加する月面探査プログラム『アルテミス計画』がある。

 これは2025年以降、月面に人類を送って月面拠点を建設する計画だが、大貫氏は『SLIM』のピンポイントで着陸できる技術が「売りになる」と分析。

 アメリカ、日本、カナダなど8カ国が、アルテミス計画に先立ち「すべての活動は平和目的のために行われる」と合意しているが、「日本は最初から協定に入り、“一緒にやっていく”といち早く表明した。他国のパートナーとして見た時、他国より秀でた“勝ち筋技術”があることは重要。今後はビジネス的にどう進めていくかが問われる」と述べた。

 また、自動車メーカーのトヨタが、2019年から月面での有人探査活動を目的に共同研究している有人与圧ローバー『ルナクルーザー』について「アポロの時に使われた、屋根などがなく、乗船に宇宙服の装着が必要なものが一般的だが、宇宙服を着なくても乗れる与圧ローバーを開発しているのは世界でトヨタだけ。注目されているし、日本人宇宙飛行士が月面に立つ日も近いかもしれない」と期待を滲ませた。

 ジャーナリストの堀潤氏も、JAXAと三菱重工業が開発するH3ロケットを引き合いに「H3の完成品は、ここに三菱のマークが入る。三菱で打ち上げてトヨタが走る。日本人にとっては夢のような未来だ」と言及。

 「H3の1回目の打ち上げ時に “それを俗に失敗と言う”などと一部報道で追及された。僕は失敗と思わない。次への経験が積まれたということだ」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)
 

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