7月3日から発行がスタートする新紙幣。20年ぶりにデザインが一新。さらに世界で初めて最先端のホログラム技術を導入し、肖像が立体的に動いて見えるなど、一層偽造が難しい作りとなった。今年度末の備蓄量45億3000万枚を目指し準備が進んでいるが、お札が新しくなれば、精算機や両替機などあらゆる機器も対応させる必要がある。そのため設備費や手間に苦しむ店も。
現金にこだわる理由はどこにあるのか。キャッシュレス時代に必要なのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■現金のみのラーメン店「券売機導入や手数料が負担に」
ある発券機販売サイトによると、券売機の導入コストは約126万円から、電子決済や高額紙幣への対応によって価格が上がっていく。現金のみ対応の券売機で営業している兵庫のラーメン店「Ramen Dream桐麺」店主の桐谷尚幸氏は「新500円硬貨の時に6万円ぐらい、今回の千円札対応は7万円ぐらい。お金を入れる所だけメーカーに交換してもらう」と話す。
現金対応にしている理由は、キャッシュレス化で手数料が発生することなど。「“古き良き”というか、作ったものを食べてもらって、お金をいただいて『ありがとうございました』と言うのが、客商売の基本だと思っている。妻と2人では手が回らないので券売機を導入したが、キャッシュレス対応に数十万円、手数料を取られるのも負担だ」と明かす。
NIRA総合研究開発機構の「キャッシュレス決済実態調査2023(速報)」によると、「現金で支払いたい」は19%。桐谷氏は、キャッシュレス化の要望を受けたことはないそうで、「うちは現金だとわかっているお客さんが来る」とした。
では、どうしたらキャッシュレス対応をするのか。「キャッシュレス減税みたいなものがあれば、5%の手数料を払ってもいいと思う」と答えた。
■「キャッシュレス化と現金は“表と裏”の関係がある」
現状について、ニッセイ基礎研究所金融研究部金融調査室長の福本勇樹氏は「やはり導入コストと手数料、またクレジットカードだと入金が1カ月後とかになり、その間の運転資金を借り入れないといけないという追加コストがかかると言われている。デフレが続くとそれらを価格に転嫁するのが難しく、お店がのまないといけない状況になっている」と説明。
貨幣・紙幣は財務省、キャッシュレス化は経済産業省の管轄であるために調和がとれていないのではないか。「その影響はあると思う。ただ、キャッシュレス化と現金は“表と裏”の関係にある。海外だと現金が汚い、偽札が多いという事情でキャッシュレス化が進んでいる国はたくさんある。逆に、日本は現金にすごく安心感があるので、店も現金オンリーにできるわけだ。ただ、お店側が選択できるような状況にあるのは、仕組みや技術がちゃんとしているからとも言える」と述べる。
経産省の発表によれば、2022年時点でのキャッシュレス決済比率は36%。これを2025年度に約4割とする目標だという。「東京オリンピック開催時の海外の平均が大体40%くらいと言われ、それを目指そうというもの。去年の段階でおそらく38%まではいっているので、40%はほぼいけるだろう」。
一方で、広く見ればそれよりも高いと指摘。「日本は銀行システムが非常に優れていて、銀行振り込みや口座振替を使う人も多い。それを含めれば6、7割ぐらいまではいっているだろうと推測されている。世界標準までいっているというのが、国の認識だ」とした。
その上で、「日本はもう少しキャッシュレス化を進めていい」と提言する。
「世界的にはGAFAが日本である程度データを取る状況の中で、日本内でうまくデータを利活用するための話を政府も進めている。レジ締め業務や帳簿の効率化と売上との対比を見た時、特にラーメン屋さんみたいなお店はその恩恵が見えにくい。逆に、大手で多くのレジがあり、たくさん決済が発生するようなところはデジタル化すべきだ。今はデジタル化したほういい業種と、そうではない業種で分かれている。政府には推進する動きの中で、接点を密にして情報を交換できるような状況を作ってほしいと訴えている」
(『ABEMA Prime』より)
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