八冠王をもってしても、まるで憧れのスターを見つめるように瞳を輝かせた。日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選B戦リーグ1位決定戦、中部 対 九州が3月9日に放送された。豊島将之九段(33)と佐々木大地七段(28)が激突した第4局では、藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が豊島九段の手厚い指し回しに大興奮。「さすがです!」「そこっ!そこっ!」と嬉しそうな声を上げたほか、終局を前にパチパチ手をたたき“フライング”で勝利を喜んだ。
チーム九州で長崎県出身の佐々木七段の3連勝とスタートから大きく出遅れることになったチーム中部。ピンチの局面とあり、監督の杉本昌隆八段(54)は「棋士チェンジ」で愛知県出身の豊島九段の投入を決断した。地域対抗戦初登場となった豊島九段と佐々木七段の対戦は、横歩取りの出だしに。佐々木七段は藤井竜王・名人を破った前局でも横歩取りを用いていたが、細かな変化を用意していたとあり、八冠王も「やっぱり、こうやって(作戦の)ストックを複数作っておくんですね」と感心していた。
しかし、自軍からはストッパーとして頼れる先輩・豊島九段が出陣。藤井竜王・名人は過去に「印象に残っている将棋」の問いにたびたび豊島九段の対局をピックアップしていることでも知られており、豊島九段の一局をチームメイトとして観戦できることに瞳を輝かせていた。
中盤の勝負所で、ペースを握るべく攻めに出た豊島九段の▲4四角打ちには「お、打った!」。藤井竜王・名人は身体をのけぞらせ、“やはり豊島九段はその決断ですよね~”とばかりに、嬉しそうに笑い声を上げていた。さらに優位立ったところでも冷静に受けの手筋で対応を見せると、大きく頷き「さすがです!」。ぐんぐんとリードを拡大させて迎えた終盤戦では、手厚く迫る▲3四歩の一手に「そこっ!そこっ!難しいですね~」とキャッキャと声を上げ、“楽しくてたまらない”とばかりの笑顔を見せた。
“序盤・中盤・終盤、隙がない”と評される豊島九段だが、そのファンは出身地とは無関係ながら「東京都豊島区」にかけて「豊島区民」と総称されている。まるで“区民化”したような藤井竜王・名人の表情にファンもワクワク。「リスペクってるな」「マサ好きを隠さない聡太」「なに今のリアクションw」「やっぱ聡太は豊島の将棋すきなんだね」「聡太めっちゃ楽しそうだな」と多くのコメントが押し寄せていた。
対局は豊島九段がギリギリの攻めを繋げるように優勢を広げると、藤井竜王・名人は仲間の勝利を確信したとばかりに終局前に“確信”拍手で祝福。4月に開幕する名人戦七番勝負では豊島九段を挑戦者に迎えることが決まった藤井竜王・名人だが、この日ばかりはチームメイトとして尊敬してやまない先輩の勝利を称えていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)