日本全国を8つのブロックに分けた団体戦で行われる「ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治」予選B戦リーグ1位決定戦、中部 対 九州が3月9日に放送された。優勝候補とされるチーム中部をここで止めると挑んだチーム九州との一戦は、第2局で佐々木大地七段(28)が藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)に勝利。その快勝っぷりにはチーム監督で師匠の深浦康市九段(52)も「強いじゃん!」と声を上げるほどだった。
佐々木七段は、2016年4月にプロ入り。すぐに頭角を現し、2018年度将棋大賞の最多勝利賞、翌年度には最多対局賞を獲得した。さらに2023年度には棋聖戦と王位戦のダブルでタイトルに挑戦。藤井竜王・名人と繰り広げた“真夏の十二番勝負”は、ファンに強烈な印象を残した。いずれもタイトル奪取には至らなかったものの、ネクスト・タイトルホルダーの一角として常にその勝負には大きな注目が集まっている。
予選B戦リーグ1位決定戦では、第2局で藤井竜王・名人と佐々木七段が激突。本局は公式戦ではないものの、昨年8月の王位戦七番勝負決着局以来の“再戦”とあり、第2局にして早くも見どころを迎えていた。後手番の佐々木七段は「(2つのタイトル戦では)後手番で1勝もできなかった。今回は後手番となるので、その借りを返せるように思いっきりぶつかっていきたい」と闘志を燃やして対局場へと向かった。
佐々木七段は、作戦会議で発言していた通りに横歩取りに誘導。やや珍しい立ち上がりから、難しい中盤戦に突入するとペースを握ったのは佐々木七段だった。時間、形勢ともに佐々木七段のリードで終盤戦に突入すると、藤井竜王・名人も底力を見せるように強く反発。白熱の最終盤では佐々木七段が絶対に譲らないと強い気持ちで対応し、桂馬を右から左からと敵陣に送り込んで包囲、72手で絶対王者から鮮やかに白星を奪ってみせた。
この激戦を作戦会議室から見守っていた監督で師匠の深浦九段は、ハラハラドキドキの表情を見せつつも「いや~、ビックリした。こんなことあるんだね」「強いじゃん!」と浮き立つ気持ちを抑えるようにポツリ。棋界きっての師弟愛で知られているとあり、視聴者からも「師匠ドキドキ」「弟子信じてあげてー!」「いやこれはすごい」「大地せんせーい!」「だいち!だいち!」「これは地球防衛軍」との声が殺到していた。
後手番で絶対王者を仕留めた佐々木七段は、「苦しい後手番。フィッシャールールということで一回形勢が傾くと難しいと思っていた。本譜は攻めのターンが回ってきて、なおかつ自玉の堅さがあるというのがあり、ツイていたという気がします」とホッとした表情で勝利の喜びを噛みしめていた。一方、敗れた藤井竜王・名人は、「中盤から甘い手が続いてしまった。この負けは痛い」と悔やしそうに一局を振り返っていた。
◆ABEMA地域対抗戦 inspired by 羽生善治 全国を8ブロックに分けた「地域チーム」によって競う団体戦。試合には監督とチームから選ばれた出場登録棋士の4人の計5人が参加可能。試合は5本先取の九番勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。試合は1試合以上出場する「先発棋士」と、チームが3敗してから途中交代できる「控え棋士」に分かれ、勝った棋士は次局にも出場する。先発棋士は1人目から順に3人目まで出場し、また1人目に戻る。途中交代し試合を離れた棋士の再出場は不可。大会は2つの予選リーグに4チームずつ分かれ、変則トーナメントで2勝すると本戦進出。ベスト4となる本戦は通常のトーナメント戦。
(ABEMA/将棋チャンネルより)