3月17日(日)東京体育館にて“RISE年間最大のビッグマッチ”「ABEMA presents RISE ELDORADO 2024」が行われ、通算3度目となるRISE×K-1対抗戦が実現。『THE MATCH 2022』の再戦となったRISE・鈴木真彦 vs K-1・金子晃大は、金子が合計2度のダウンを奪ってリベンジに成功した。
鈴木と金子は『THE MATCH 2022』の第1試合で対戦。RISEとK-1の現役王者対決として注目された一戦は、軽量級のトップ選手らしいスピーディな打ち合いの末に鈴木が判定勝利を収めた。
この大一番に敗れた金子だったが、鈴木戦以降はK-1スーパー・バンタム級王者としてムエタイの超強豪コンペット・シットサラワットスアやライバル玖村将史との防衛戦をクリア。6戦6勝(3KO)と勝ち星を積み重ねて、鈴木にリベンジするチャンスを掴んだ。
試合は前回同様にスピード感溢れる打ち合いで幕開けとなったが、1R、3Rに金子が右フックと右ストレートで1度ずつダウンを奪って、大差の判定勝利。KO勝ちこそ逃したものの『THE MATCH 2022』のリベンジを果たした。
試合後、マイクを握った金子は周囲へ感謝を述べたあと「K-1が弱いと思われたのは僕の責任なので……ずっと苦しかったんですけど、やっと前に進めます」と涙も浮かべて感情のままに言葉を続けた。普段は飄々として、人を煙に巻く発言が多い金子だけに、その涙と言葉に胸を打たれたファンも多かったはずだ。
そもそも2022年6月に『THE MATCH 2022』で初めてRISE×K-1の対抗戦が実現した際、当時K-1プロデューサーだった私は「対抗戦は1回限り。『THE MATCH 2022』のような対抗戦は年に1回とか期間を決めてやるものじゃない。選手・ファンが見たいと思う熱のあるカードがあった時にやるべき」と定期的な対抗戦には否定的なスタンスを示していた。それを変えた理由の一つが金子の存在だった。
昨年3月に2度目のRISE×K-1対抗戦が行われた際、私は「彼(金子)はあまり自己表現をするタイプではないのですが、メディアを通して『鈴木選手にリベンジしたい』と意思表示しているのを見ました。それが実現するかどうかは別ですが『THE MATCH 2022』が終わったあと、そういった思いを持った選手がいることを知ったことも、また対抗戦をやろうと思った熱の一つです」と話していた。
今回の試合後のバックステージで、金子は前回鈴木に敗れてからの約1年9カ月を「試練が多かった」と振り返った。金子自身、鈴木との再戦を実現させるためにはそれ相応の試練を乗り越えなければいけないと思っていたのだろう。ベルトをかけてコンペットや玖村と戦ったことも海外の強豪と試合を重ねてきたことも、すべては鈴木へのリベンジを実現するために己に課した試練だった。
そして鈴木から2度のダウンを奪った右のパンチは前回の対戦では出せなかった金子の得意技だ。この日の金子は鈴木に、そして『THE MATCH 2022』でK-1の強さを証明できなかった自分自身へのリベンジを果たしたと言えるだろう。
金子は記者会見で試合のテーマを一言で表すことが恒例になっている。例えば今回の鈴木戦は「死神」だった。私がプロデューサー退任を発表した際、金子から届いたメッセージは「おつかれさまでした」というねぎらいの言葉と「志」という一文字だった。
多くを語るわけではないが、勝ち負けを背負う覚悟がある。自分の力で道を切り拓く強い意思を持って戦う。それが金子晃大というファイターだ。これからは一記者として、金子の新たな「志」を見届けたい。
なおRISEでの対抗戦は3勝2敗でK-1勢が勝ち越したが、大将戦のRISE・中村寛とK-1・与座優貴の一戦はフィニッシュとなった与座の内股へのバックスピンキックが金的だったかどうかSNS上でも議論を呼んだ。一筋縄ではいかない“何かが起こる”のも対抗戦特有のものか。3月20日にK-1で行われる対抗戦5試合の結末はいかに――。
文/中村拓己