特定危険指定暴力団「工藤会」の元幹部が、北九州市・小倉でうどん店を営んでいる。10年前に工藤会を脱退した、「元祖 京家」店主の中本隆氏(58)だ。
 
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 工藤会をめぐっては、総裁の野村悟被告(77)が4つの市民襲撃事件に関わった疑いで、一審では死刑判決が出ていたが、控訴審でそのうち1つの事件が無罪となり、無期懲役が言い渡された。中本氏は、この司法判断を受けて「要は立件ができなかった。ただトップが持っていかれたというのは、他組織のトップもこれから大変」との認識を示した。
     
 暴力団の世界に憧れていた中本氏は、当時の工藤会の下部組織に足を踏み入れ、20歳前後で、いわゆる「杯」を交わした。「約30年間いた。生い立ちや過去の環境から、僕たちは居場所を求めて歩いていた」と話す。そして後には、工藤会の専務理事という幹部にまでなった。「鉄の結束」と言われる厳しい統制も、みかじめ料を拒む店などに危害を加えるのも、当時は組織として当然なことと受け止めていたという。結果として、計11年の刑務所暮らしを送った。
     
 1992年に暴力団対策法が施行されたが、むしろ「それに対して、暴力で返すとなった。『暴力団お断り』の標章を張ったところには嫌がらせをする、刺しに行く」といった状態。しかし2010年、北九州市暴力団排除条例が施行されたことで、空気が変わってきた。
 
「一般の人たちも罪になりますよという風になってきて、それからちょっと変わってきた。入札ができない、仕事もできない、となると(暴力団を)応援したくてもできない。『みかじめを払うと、今度あんたが罰金。何回もしたら逮捕』と。それが功を奏した。うたう(自白する)人間もいっぱい出てきた。トップは収監されているから、うたいやすくなった」(元工藤会幹部・中本隆氏)
 
 福岡県警の「頂上作戦」により、2014年に野村被告が逮捕された。「北九州には工藤会という組織しかなく、やっぱり頭絶対」だと語る中本氏は、総裁にはカリスマ性が「あると思う」と指摘する。
 
「野村総裁が逮捕された時、私は本家にいた。その当時から『もう逮捕されるだろうな』という情報は漏れていた。市民感情というか、あれだけ女性とかに手を出したりすれば、仕方がない」
 
 野村被告逮捕の2014年、中本氏は工藤会を脱退。「僕らが憧れた組織では、もうないのかな。そうは言っても、すぐ辞められないが、最後に逮捕された件が引き金になった」。そして工藤会の本拠地である小倉に、うどん店を開いた。しかし、組から表立った嫌がらせはなかったという。
 
「無言の圧力は、常に感じている。例えば私が覚醒剤を売っているとか、辞めた人間を集めて新団体を作るとか、そうなると組織は許さない。ちゃんと真面目にうどん屋をやっている。そこに(報復する)大義名分はない」
 
 今後の工藤会は、どうなるのか。中本氏は「多分あり続ける」と予測する。
 
「そこを居場所として選ぶ人も、これからも出てくる。以前より若手も入らず、しのぎがしにくくなる都市になるだろうが、それでも生き残っているのが組織。誰かが必要としているから」
 
(『ABEMA的ニュースショー』より)