視覚障害者を狙った性被害。ある調査では、68人中48人が被害に遭った経験があると答えている。盲導犬を連れて歩く女性、アスカさん(40代)もその一人だ。「電車に乗ったらいきなりおしり触られるとか」「家の前で急に後ろから抱きつかれて体を触られて…」。
そもそも性被害を受けたことに気づかなかった人もいる。全盲の女性(30代)は「一人暮らしの家の中に小型カメラを仕掛けられたり、外で待ち伏せされてスカートの中を盗撮された」と話す。知らない男に合鍵を作られて部屋に侵入され、カメラを3つ仕掛けられた。半年以上気づかず、母親が部屋を訪ねてきた時に発覚し、その後、男は逮捕された。
相手の目が見えにくいことにつけ込んだ盗撮や痴漢、つきまといなどの性加害行為。視覚障害者はどうやって自分の身を守っていけばいいのか。そして周りができることは何なのか。『ABEMA Prime』で考えた。
■7割が経験 視覚障害者の性被害の実態
アスカさんは左目が全く見えず、右目もちくわの穴から覗いているほどの視野。外出時は盲導犬や白杖が必須だが、今までに何度も被害に遭ったという。「通勤の帰り、家の前で後ろから抱きつかれた。白杖がかえって目が見えないことの象徴になり、狙われてしまう」。
さらに「善意を装って近づいてきて、物陰に連れて行かれそうになることもあった。予想外のことで、パニックで頭が真っ白になった」と振り返る。
被害に遭った直後、助けを求めて交番に駆け込んだが、警察官に「事情は分かったけれど、あなたも目が見えないんだから外に出ないように気をつけなさいね」と言われたという。「逆に私が怒られてしまって、ショックだった」と明かした。
一般社団法人「日本視覚障がい者美容協会」代表の佐藤優子氏は視覚障害者を狙う犯罪心理について「自分の顔が見られず、特徴が警察に伝わらない、犯罪がバレにくいことから、ターゲットにしやすい。もう1つ、目が見えないだけなのに、知的障害もあるんじゃないかと、言いなりにさせられると勘違いしていることもある」とした。
■当事者&社会ができること
大阪教育大学・特別支援教育部門の奈良里紗准教授は、視覚障害者ができる自衛の例として「歩行訓練士などの専門家に防犯上安全なルートを教えてもらう」「いざという時に駆け込める場所として、近所の“子ども110番”の家や店舗を把握」「見えないからこそ周囲の目を意識した服装や立ち振る舞いをする」などをあげている。
一方で、佐藤氏は「障害者がスカートを履いているのが悪い、などと言ってしまうのは良くない。逆に、これ(服装)しか対策がないというのが問題だ」と述べた。
実際の生活の中で周囲に望むことはあるか。アスカさんは「“何かお困りですか?”と声を掛けてくださると、助けてくれる人なのだと分かるのでありがたい」と答えた。
誘導の仕方については「その人によって右がいいか左がいいか違うと思うので、どう誘導したらいいか聞いていただけると良いと思う」とした。
佐藤氏は「外に出たら、いろいろな人から声を掛けてもらえる社会が理想。断られてもいいので、声掛けが必要だ」とした上で「私たち健常者側が、不安にさせない誘導の仕方を知っておくのも重要。基本的には自分に捕まらせることだが、なかなかこの発想がない。引っ張っていたり、押していたら、助けてあげてほしい」と呼びかけた。
■デジタル化による弊害も
今後の課題として、佐藤氏はデジタル化による情報格差を指摘する。「視覚障害者は“接触”が必要な障害だ。コロナ禍の影響で非接触社会になったことで、例えばセルフレジは目が見えない人は使えない」。また、「視覚障害者は情報障害者とも言われていて、画像が多いインターネットから情報を取り入れにくい」と説明する。
PCやスマートフォンには音声読み上げソフトがあるが、特にSNSなどでは画像が多く一般的な情報を得にくいという。アスカさんは「アプリの中で画像認証があったりすると、操作ができなくなって止まってしまう。個人情報を証明する写真も自分で撮影できないので、そこから先の登録ができない」と明かした。
導入が進んでいるセルフレジ、飲食店のタッチパネルなどについては「声を掛けられる人がいないので、そこには行けない」。続けて「どんどん自立が妨げられているような、自由が奪われている感覚だ」と訴えた。
(『ABEMA Prime』より)
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