シリーズ史上最高のベストバウトだ。UFC戦士二人の推薦選手とボンサイ柔術の代理戦争は、最終ラウンドに衝撃的なKO劇。両陣営の持ち味を出し切った名勝負に会場は喝采。ファンからも「これがアマの試合か?」と驚きの声があがった。
「格闘代理戦争-THE MAX-」のトーナメント準決勝第二試合で、中村京一郎とギレルメ・ナカガワが対戦。3ラウンド、中村がパンチの連打からギレルメをKO。「柔術には付き合わない」という言葉通り得意の打撃戦で決勝へコマを進めた。
準決勝は二人の日本人UFC戦士とボンサイ柔術推薦による文字通りの“代理戦争”となった。岡見勇信&中村倫也が推薦する中村は、一回戦で秋山成勲が推薦するミスターホンデに1ラウンド1分36秒でTKO勝利。元海上自衛官からMMAファイターに転身してわずか4年、しかも格闘技のバックボーンなしという異色の存在だ。
対するクレベル・コイケ推薦のギレルメは、日本のMMAを席巻しているボンサイ柔術が誇る逸材でアマチュアでの戦績は10戦全勝。準決勝直前に監督のクレベルが不在という混乱はあったものの、現RIZINライト級王者・ホベルト・サトシ・ソウザが代役と万全の状態で臨んだ。
試合前に「柔術フル無視、打撃戦のみ」を試合テーマに掲げた中村が有言実行の戦いを見せた。肩の力の抜けた脱力スタイルでサークリングしながら伸びのある打撃を見せる中村に、ギレルメはなかなか手が出ない。
ラウンド中盤、中村の低空のボディ打ちに合わせ、ギレルメがタックルを仕掛けるがこれも簡単に切られる。
中村は離れ際に打撃、さらに強いプレッシャーをかけ左をギレルメのアゴへ。ギレルメも左ハイ二発で対応するが、距離を掌握する中村がさらに左ボディ、さらに顔面へ左と追撃を見せる。
2ラウンド、ギレルメがタックルを仕掛けるが、中村は組みの攻防には付き合わない。ギレルメも打撃に切り替え圧をかけるが、中村は下がりながらの攻防。左と右の大きなパンチ、スーパーマンパンチ、さらには左ボディと当て、ギレルメに何もさせずにラウンドを終える。
3ラウンドは両者の持ち味を活かしたスリリングな展開。まず中村がノーモーションで強烈な左ボディを放つと、ギレルメが組み付いてチョークの体勢。これを振り解いた中村が、飛び込むギレルメを左ストレートで迎撃、左ミドル、さらに左のパンチと連続攻撃。
しかし手負いのギレルメがフルスイングの左、クロスカウンター状態になり中村の腰が一瞬落ちる。この試合ではじめて組みの体勢に持ち込んだギレルメは、シングルレッグを狙うが中村はここも付き合わず徹底して打撃勝負。
ギレルメは打撃とタックルの合せ技で突破口を探るが、着実に左ボディ、左フックと当て、さらにフルスイングの左。体勢を崩したギレルメのアゴに目掛けて中村のパンチが5連発、腰から落ちた相手にさらに追撃の手を緩めず連打。ここでレフェリーが試合を止めた。
徹底した打撃戦で打ち勝った中村の顔には笑みが見えるが、口から出血しギレルメとの激闘がうかがえる。ファンからも「これがアマ?」「両者頑張った」「代理戦争レベルじゃない」とハイレベルの試合への賞賛とともに両選手への労いの言葉も多い。
試合後の中村は「テイクダウンが何度も来たんですけど、打ち合ってくれたし、イイのも貰ったんで。彼もここからだと思うし僕もまだまだ、これから二人上に行くと思います」と強気のなかにも対戦相手のギレルメへのリスペクトを感じさせる発言。
中村陣営の監督・岡見も「ギレルメ選手は強かった。ファイターとして尊敬します」とコメント、中村倫也も「ギレルメ選手は今後上がって行く選手」と最大級の賛辞で称えた。
中村の「トミーとは、一回戦から決勝でやろうぜと二人で言っていたのでいい試合になるかなと思う」の発言どおり、決勝戦はイゴール・タナベ推薦のトミー矢野と中村に決定。勝者に7月の「超RIZIN3」への出場権が与えられる。