アメリカに「素数ゼミ」が襲来すると予測され、人々が戦々恐々としている。2024年は13年ごとに大量発生する「13年ゼミ」と、17年ごとの「17年ゼミ」の周期が重なり、アメリカ中西部や南東部では、221年ぶりに大量発生するとされ、生活への影響が不安視されている。
日本でも昨年、カメムシが大量発生して、農林水産省が「カメムシ注意報」を出す事態に。Xでは「この世から全ての虫が消えてくれ」「虫が嫌いすぎるから殺虫剤は常備!」といった声も。農作物への被害防止のため駆除する場合もあるが、いま実は虫たちは減少している。『ABEMA Prime』では、嫌われがちな虫との共生を専門家と考えた。
■素数ゼミとは?アメリカに「1兆匹襲来の試算も」!?
素数ゼミは、一般的に「周期ゼミ」と呼ばれる。北米大陸東部に生息し、セミ科チッチゼミ亜科マジシカダ属に分類される。今回発生するのは17年、13年の周期ゼミの一種で、大きい素数である17や13は、最小公倍数が大きいため、他の集団と出会う確率が下がり、同時発生を避けることで、種を保存しやすい。前回の同時発生は221年前の1803年だった。
周期ゼミの進化を研究している「ミスター素数ゼミ」こと、京都大学名誉教授の曽田貞滋氏は、素数ゼミは「マジシカダ属は『魔法のセミ』を意味する」と説明する。「幼虫期の長さが13年や17年と決まっていて、同じ場所では1世代しかいない」。周期ゼミには「祖先によって3つのグループ」がある。「鳴き声や形態はほぼ一緒で区別がつかない。大雑把に言うと、暖かい南部に適応したのが13年ゼミ、涼しい北部に適応したのが17年ゼミ」とした。
セミたちは「ブルード」という同世代ごとのグループで分類されている。「今回は17年ゼミが“ブルード13”、13年ゼミが“ブルード19”だ。今年はブルード19が広範囲で大規模に出るが、そこに17年ゼミも重なり、推定1兆匹が出るとの試算もある。少なくとも1億匹は出るのではないか」と推察した。
大発生の影響として、音100デシベルという報道や、死骸からの悪臭、大量の抜け殻や死骸で滑りやすくなっての自動車のスリップ事故も考えられる。ただし、周期ゼミは農作物を食べない。「成虫の寿命が、ひと月ほどしかない。少し我慢していればいなくなるので、そんなに大きな被害はない」と述べた。
■8割が“虫嫌い”も…地球に欠かせない存在?
影響は少ないとしても、セミなどの虫を見かけるだけで、嫌悪感を示す人は多い。埼玉県の「衛生害虫についての意識調査」(2022年)によると、好きな人は3.9%、どちらかといえば好き18.5%、嫌い30.9%、どちらかといえば嫌い46.6%となった。
虫の役割として、ひとつは「花粉の運搬」がある。植物は虫に蜜を与える代わりに、花粉を運んでもらい、子孫を残す。2つ目が「土壌を肥沃にする」で、地中の虫や幼虫が、他生物の死骸や枯れ葉などを食べて分解する。そして最後が「他生物の食料となり、生態系を維持する」。アブラムシがテントウムシの食料であるように、特定の生物が増えないよう、バランスが維持されている。
周期ゼミの大量発生にもメリットがある。曽田氏は「エサが豊富になり、その年は鳥の繁殖がうまくいく。長期間にわたって、木の根から栄養を取っているが、最後は死んで根元で腐り、土壌に栄養を戻す。植物の受粉を助けたり、上位の栄養段階を支えたりする役割を持っている」と説明した。
また、食物連鎖はピラミッド構造だ。細菌・バクテリアが最下部にあり、植物、昆虫など、草食動物など、肉食動物などを経て、最上位に人間が置かれている。虫が少なくなることで、生態系に影響が出る。「ただ、虫が入って困るのは、うちの家庭でもあり、あまり気にしないが、娘には『カメムシをつまみ出してくれ』と言われる。家庭内ではある程度やむを得ない」とした。
では、大都会で虫が果たす役割はあるのか。「都市のあり方によるのではないか。虫と完全に縁がない空間にすれば、果たす役割はなくなる。自然保護と直接結びつかなくても、多様な生物と縁があって、そこに生きている方が快適なのではないか」との見方を示した。
(『ABEMA Prime』より)
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