【写真・画像】「自衛隊は国民を守るものではない」「“災害救助隊”にすべき」 憲法9条への“自衛隊”明記の是非 リベラル派重鎮と議論 1枚目
【映像】「絶対無理です」憲法改正反対派も集会
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 5月3日の憲法記念日、集会で岸田総理が訴えたのは「憲法改正」の必要性。同日、別の場所では反対する護憲派の集会が開かれるなど、国民の中でも賛否が分かれている。一番の焦点は、自衛隊明記をめぐる憲法9条。「戦力を保持しない」という条文に対し、自衛隊を明記することは違憲との論争が続いており、これを解決するため自民党は憲法改正を急いでいる。

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 今年4月から、衆議院の憲法審査会が今国会で初めてとなる実務的な話し合いを行い、注目が高まっている。ネットでは「有事の時はどうする?」「護憲派は頭が『お花畑』」という声もちらほらあがるが、自衛隊不要を訴えるのが評論家でリベラル派重鎮の佐高信氏。「自衛隊に守ってもらえるという思考こそがお花畑」と主張する。

 憲法9条に明記すべきか、自衛隊は本当に不要なのか。佐高氏と自民党の和田政宗参院議員を招き、『ABEMA Prime』で議論した。

■佐高氏「自衛隊をやめ“災害救助隊”にすべき」

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 憲法改正に向けた若手の議連の代表を務める和田氏は、自民党案について「国防の任にあたっている自衛隊の違憲論争に終止符を打つことが、至上命題だと思っている。いざという時に国を守る方法も手段も憲法に明記されていないのは、人口約2000人のニウエ、約1万8000人のクック諸島、約3万8000人のモナコ、そして日本。一定の人口と国土面積を持っている国は日本だけで、世界でも稀な珍憲法だ。そもそも現行憲法は、GHQが素案を書いた英米法の体系。これはなんでもできるという考え方で、極端な政権になった時に歯止めが効かない可能性もある。そういった観点からも、自衛隊を明記しておくことは極めて重要だ」と説明。

 一方、佐高氏は「自民党には改憲派だけではなく、護憲派がちゃんといた。岸田さんが尊敬してやまない、部屋に写真を飾っているという宮沢喜一さんもそうだ。そういう選択肢があったが、今は維新や国民民主なども含め改憲一色のようになってしまっている。また、和田さんは『珍憲法』だとおっしゃったが、日本国憲法は世界で唯一原爆を落とされた国、広島・長崎の亡くなった人たちのいわば位牌だ」と述べる。

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 佐高氏は、軍隊を持たないことこそが一番の安全保障・抑止力だとし、「自衛隊をやめ、“災害救助隊”にすべき」「今の自衛隊は“ジャパニーズ・アーミー”で、他国にとって国防軍と変わらない」と論じている。さらに、自衛隊の元トップ・栗栖弘臣(元統合幕僚会議議長)が著書『日本国防軍を創設せよ』(2000年)の中で、「国民を守るためにあると誤解している人が多いが、それは警察の役目で武装集団たる自衛隊の任務ではない」と記していることを引用し、「自衛隊は国民を守るものではない」と指摘する。

 これに和田氏は「国際環境がやはり変わってきている」とした上で、「自衛隊ができた時に憲法改正をすべきだったと思っている。国防のための部隊が現に存在していたとして、それが違憲だとなると、相手国の侵略を受けた時に戦えるのかという論が必ず出るわけだ。政治家は最悪の状況に備えなくてはならないし、どんな状況になっても国土と国民を守らなくてはならない」との見解。

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 佐高氏は「外交によって戦争を防ぐのが政治家の役割だ。“攻められたらどうするか”は軍人の思考で、それは政治家の仕事の放棄だ」と投げかけた。

■河崎環氏「“あなたの子どもの喉元に武器が突きつけられても護憲と言えるのか?”に返す言葉がない」

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 佐高氏は、2019年にアフガニスタンで銃撃され死亡した中村哲医師こそが“歩く日本国憲法”だとの見方を示す。

「“攻められたらどうする”とそればかり言うが、中村哲さんは生活・暮らしを立て直して戦争を防いだ。戦争に行った人も元の所に帰ってきて、砂漠を緑地に変えるのを手伝ったわけだ。中村さんは上空を砲弾が飛び交っている中で水路を掘った。まさに今も同じような状況の中で、それが意味するのは単なる理想ではない。中村さんはアフガニスタンで切手になっているし、肖像画もある。私は一万円札の顔にしろと言っているが、そういうふうに世界に押し出していくことが必要だ」

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 一方、コラムニストの河崎環氏は「私は長い間護憲側にいたが、7年前、北朝鮮のミサイル発射が激しくなった頃の討論で、改憲に強い意識を持っている論客に『あなたの子どもの喉元に武器が突きつけられた状態で護憲と言えるのか』と問われ、返す言葉がなかった。戦後80年近くが経ち、日本の周りもきな臭くなり始めたからこそ、どこかを見直すという動きが政治的に現れていると感じる」と投げかける。

 これに佐高氏は「中村さんは『死んでも撃ち返すな』と言っていた。そして、国とは何なのか?ということ。(小説家の)城山三郎さんは17歳で海軍に志願するが、自分の理想としている軍隊、天皇の軍隊とは違うことをつくづく悟らされて、その後国が信じられなくなる。国と自分が直接結びつくと考えられているが、そうではないと。安倍晋三さんが“我が軍”と言ったのは、皮肉の意味で正しい。つまり権力者のための軍隊だ」とした。

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 和田氏は「日本は民主主義国家で、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣。つまり、時の内閣がおかしいということであれば、内閣を交代して統制を取ることもできる」と指摘。「佐高さんの話は理想論だと思うが、否定するものではない。ただ、日本のように平和を希求するばかりではない国々が周りにあり、過去にも侵略や覇権主義的なことをやってきている中で、それが通るかどうか。“平和が重要だ”“武装ではなく限定的な警察力でそれぞれやっていきましょう”という思想が世界に拡大していくには、1000年という歴史がかかるのではないか」と述べた。(『ABEMA Prime』より)

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