【写真・画像】インバウンド客向けの“二重価格”はアリ? 導入の飲食店オーナー「外国人客は接客コストなどが発生する」 夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気が」 1枚目
【映像】インバウンド向け?築地の高額「9600円うに丼」
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 このゴールデンウィークは、円安もあいまって全国の観光地に外国人観光客が訪れた。そんな中で深刻化しているのが「オーバーツーリズム」。鎌倉では観光客が地元住民の負担となり、連休中は長谷寺や鎌倉大仏など、観光名所への移動に徒歩を勧める実証実験が行われた。山梨・富士河口湖町のローソンでは、コンビニの上に富士山が見えるとして、観光客らの交通妨害や敷地侵入などが多発し、黒い幕を立てる対策が決まった。

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 また、議論になっているのが「二重価格」だ。各地の観光スポットでは、外国人用に高い値段設定をした食事などが登場。都内でも、日本人客を割安にする店も現れている。『ABEMA Prime』では、二重価格の是非とオーバーツーリズムについて考えた。

■値上げではなく日本人客の値下げ「接客や食材コストが高くなりがち」

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 4月に渋谷にオープンした海鮮バイキング店「玉手箱」では、二重価格を設定している。国産生本マグロや紅ズワイガニなど全60品・90分の海鮮バイキングで、アルコールを含む飲み放題を実施。ランチは平日5980円、土日祝6980円、ディナーは平日6980円、土日祝7980円としているが、日本人と国内在住者は税別1000円が値引きされる。

 オーナーの米満尚悟氏は「海鮮食べ放題に慣れてない外国人へ説明しなければならない」と、二重価格の理由を説明する。「英語のメニューを作ればいいという問題ではない。どうしてもつきっきりになり、接客コストがかかる。焦がしたり、食べられるところを残したり、ロスが出れば原価も上がる。日本人が『食べ方を知っているのに同じ値段を取られるのか』と感じないようにしている。評判は良く、客の1割強を占める外国人も『理由があれば問題ない』という」。

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 対象者の判断基準は「日本語ができるかどうか。ある程度理解できれば、確認しないこともある」という。「在日外国人は日本人と同じ料金だが、話せなければ在留カードを確認して、ルール通りやる」。日本人と外国人が一緒に来た場合でも「もし観光客なら、ルール通り」だ。「ネット予約では、そもそもプランを分けている。日本人向けの『割引プラン』を予約する人は基本的に確認しないが、明らかな外国人観光客は確認させてもらう」。

 観光学が専門の佐滝剛弘・城西国際大学教授は、「日本人と外国人の線引きを厳密にやろうとすると大変だ」と指摘。「個人店がやるのは自由。かつては食べ放題で男女別料金にしたケースもあった。ただ、確認方法には懸念があり、見た目や言葉だけで判断していいのか。日本に住んでいる留学生でも、日本語が不自由なケースもあり、その逆もある。グレーゾーンを設けるべきでは」との見方を示した。

■夏野剛氏「日本の信頼感を崩していく気がする」

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は、「フェアネスが日本の美徳だ」との考えを述べる。「外国人からぼったくりと捉えられないように、『日本人だから割り引く』ではなく、時間や曜日などでの割引がいいのでは。日本の信頼感を崩していく気がする」。

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 海外では、文化芸術施設などで、地元住民と観光客に価格差が設けられている例がある。たとえば、ハワイ・ダイヤモンドヘッドでは、ハワイ在住者が無料、観光客が約800円。エジプト・ピラミッドは、アラブの人たちが約200円、外国人が約1800円、フランス・ルーブル美術館は、欧州の26歳未満などが無料、一般が約3700円に設定されている。夏野氏は「税金で作られているものを住民が使う場合には、ちょっと考え方が変わる」とする。

 その上で、「外国人でにぎわう飲食店が増えれば、地元住民の参入チャンスになる」とも指摘。「観光地になれば経済効果がある。住んでいる人には申し訳ないが、地元は潤う。この国は人口が減少し、経済も成り立たない。50年、100年先を見たときに『海外の人は来なくていい』と考えるのは危ない」と警鐘を鳴らした。

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 佐滝氏は「公の施設でないから、二重価格が認められる」側面もあると語る。「渋谷がそういう店ばかりになれば、『2030年に6000万人の外国人観光客を』という日本政府のメッセージに逆行する可能性がある。(JRの鉄道などが乗り放題になる)ジャパン・レール・パスや、高速道路割引のような外国人優遇施策もある。発信するメッセージがよくわからなくなっていて、『観光立国』を目指す立場として、整理する時期に来ている」。

■オーバーツーリズムの真の課題は“見えない部分”?

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 真の課題は「見えない部分」にある、というのが佐滝氏の持論だ。オーバーツーリズムの「見えない」課題として、ホテル・旅館が建ち過ぎた結果、土地や住宅が高騰し、住みたい人(特に生産人口)が住めない状況になる。また、市民相手の生活店がつぶれ、外国人向けの土産店になると、ますます市民にとって住みにくい街に変わる。長期的・トータルな目線で、国などが対策する必要性があると指摘する。

 大阪府では、オーバーツーリズムの予防・対策や、街の美化を目的に「宿泊税」の引き上げを検討している。現状の宿泊税は、7000円~1万5000円は100円、1万5000円~2万円は200円、2万円以上は300円だ。宿泊税と同程度の「徴収金」も検討されている。大阪府の吉村洋文知事は、地元住民と外国人観光客の共存共栄が重要と位置づけ、財源として一部負担してもらう方針を示している。

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 こうした動きについて、夏野氏は「ヨーロッパでは、以前から言われている」と語る。「ベネチアは、何十年もオーバーツーリズム。観光客に対して“入島税”を課すのは、二重価格ではなくゲートウェイを作るだけの話だ。ただ大阪の例は、自治体による徴収になるため大変。国として『入国時の航空券代に載せる』などの方法を考えた方がいいのでは」との見方を示した。(『ABEMA Prime』より)

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