13日、大阪府の吉村洋文知事が「0歳児選挙権もやったらいいと思う」と話し、話題になっている。当然、0歳児が投票所で候補者の名前を書くのではなく、親が代理となって投票するというもの。日本維新の会のマニフェストにも組み込みたいとしているが、背景にあるのが、少子高齢化の中で若い世代の意見を政治に反映させて子育て支援や少子化対策につなげようという考えだ。
ネットでは「非現実的な発想だな」「突拍子もない」など疑問の声もあがるが、海外ではすでに議論が進んでいる国もある。その実現性と選挙制度改革について、『ABEMA Prime』で議論した。
■駒崎弘樹氏「日本が先陣を切る価値は十分にある」
一橋大学の青木玲子教授の分析(2011年)によると、「0歳選挙権(ドメイン投票制)」を導入した場合、2007年の有権者構成は「親」が24%→37%、「その他」が33%→28%、「55歳以上」が43%→35%になる。
法政大学教授の小黒一正氏は、「2030年、2040年になると55歳以上が半分以上を占めるが、ドメイン投票を認めると5割を切るようになる」と説明。具体的な効果について、「日本の財政上の問題を考えると、社会保障を改革する必要がある。例えば、高齢者の医療費負担を一律3割に引き上げることを選挙の争点にしても、今の有権者構成では実現が難しい。しかしドメイン投票制なら、そういう意見を持つ親御さんのパワーが増すことになり、制度が変わっていくようなトリガーになる」と述べる。
認定NPO法人「フローレンス」会長の駒崎弘樹氏も、ドメイン投票制に大きな意義を見出している。「これまでの民主主義は、若者層がある程度多い人口ピラミッド型の社会で成り立ってきた。短期的に非合理的でも、中長期的な合理性があれば許容できる土壌があったが、逆ピラミッド型の社会で機能するかは未知数だ。世界最速で少子高齢化に突き進んできた日本が先陣を切る価値は十分にある」との考えを示す。
ただ、課題もある。公明党の伊佐進一衆議院議員は「1人1票の原則が崩れる」「大家族の親に過度な政治的影響力を与える」点を問題視している。これに対し駒崎氏は、年齢によるグラデーションを提案する。
「保育園でも、議論の場を設けると自分たちで意見を言い合えるようになる。そういった意味では、議論ができる・できない年齢は分けて考えるべきだ。一方で、例えば認知症の方の選挙権をはく奪するということにはなっておらず、代理人(成年後見人)という制度がある。なので、0歳〜3歳ぐらいに関しては親が代理するという考え方もまたあるのではないか。さらに、14、15歳ぐらいになれば、親の言うことを常に聞いてくれるということもない。子どもたちが自ら考える機会にもつながるので、国民的な議論が必要だと思う」
■「余命投票制」「年齢別選挙区制」などの考えも
さらに考えられるのが、「余命投票制」。限界余命を125歳などとし、今の年齢を引いて票数を変えていくもので、例えば20歳は105票(125−20)、90歳は35票(125−90)となる。
小黒氏は日本でしか議論されていないとした上で、「1つあり得る仕組みだ」と述べる。「“1人1票”という原則に反すると思われるかもしれないが、若い時はウエートが高く、だんだん下がっていくとしても、同じぐらい生きれば同等のウエートを持っているという発想。一橋大学の竹内幹先生が提唱された仕組みだ」。
さらに、選挙区内の有権者を30代までの「青年区」、40代〜50代の「中年区」、60代以上の「老年区」に分け、それぞれの有権者数で議席数を割り振る「年齢別選挙区制」という考え方もある。
これらに小説家の室井佑月氏は「やっぱり1人1票の原則を壊すのは怖い。自分がこの先、“年をとったから1人1票の権利じゃなくなる”と言われたら、一人前として認められなくなるような嫌な感じを受ける」と危惧する。
駒崎氏は「もちろん高齢者の方から選挙権を剥奪するわけではなく、子育て層などに追加しましょうという話。国会の平均年齢が60歳を超えている、そして女性はほとんどいない状況の中で、“それが本当に民主的か”ということは問わなくてはいけない。適宜修正を入れるという時、子どもたちに選挙を開いていくというのが1つの方向性だと思う」と述べた。(『ABEMA Prime』より)
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