衆議院東京15区の補欠選挙での選挙妨害をめぐり、警視庁は17日、「つばさの党」の黒川代表ら3人を公職選挙法違反の疑いで逮捕した。捜査関係者によると、黒川代表らは4月、江東区で他陣営の演説を拡声器などで妨害した疑いが持たれている。
この件について、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「今回の逮捕そのものが例外中の例外だ」と強調した。
「このような事案で逮捕にまで至ったケースは少なくとも戦後の選挙において、極めてレアなケースだと理解しておく必要がある。そして、こんなことが起きたからといって安易に『警察がもっと取り締まった方がいい』という考え方を僕はとらない」
一方で石戸氏は「表現の自由はそもそも無制限ではない」と指摘。
「現場で見ていたが、つばさの党は他党の演説を妨害したという行為は成り立つと思った。彼らは有権者の演説を聞く機会を奪っている可能性は極めて高く、これをもって自由妨害に問うこと自体は法の範疇だろう」
さらに石戸氏は「このような政党が出てきた背景にも目を向けなくてはいけない」と見解を示す。
「つばさの党代表の黒川氏は元々旧N党の幹事長まで務めている。旧N党を取材してルポも書いたが、彼らは『悪名は無名に勝る』ことを基本戦略に据えて、当面の当選よりもまず名前を売ることを優先し、最終的に参院選などで議席を獲得、政党化することで入る政党助成金で儲けると豪語していた。今後、二番煎じのような連中が出てくることは想定内だった」
今回の件を受けて、野党などが公職選挙法の改正案を検討している。
改正案について石戸氏は「安易な規制強化には反対だ。やはり選挙においてはやじも含めて自由な発言が行われるべきである。『音量』などについて細かく定めても“ギリギリを攻める”政党が出てくるだろう。見直しが必要であることはわかるが、その時々の文脈・状況を鑑みて現行法でできることを精査していくべきだろう」と述べた。
今後のポイントについては「事件化していった以上、当面は起訴まで行くかどうかが焦点だ。そしてもし裁判になった場合、『選挙の自由妨害とは一体何なのか』についてかなり突き詰めて法的に判断していくことになる。表現の自由が守られるのは当然だが、そことの兼ね合いはもう少し丁寧な議論が必要。ただ厳罰化すればいい、という方向で終わらせてほしくない」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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