国会では政治資金規正法改正に向け与野党それぞれが提出した法案について審議が行われているが次の衆議院議員総選挙を見据え、折り合う見通しは立っていない。
【映像】政策活動費、パーティー券、あと1つは?…西田教授の「政治とカネ3点セット」
「政策活動費の透明化」や「政治資金パーティーの禁止」は実現するのか? 日本大学危機管理学部教授/東京工業大学特任教授の西田亮介氏に聞いた。
━━政策活動費の扱いについて、各政党の現在の立場は異なるが、これをどう見るか?
「与党においても自民党だけが非公開を原則としている一方で、野党各党は廃止を原則とし、公明党は明細書で使途を公開していくとしている。ただし重要なのは、立憲民主党は将来的に廃止を目指しつつも現在は運用している一方で、公明党や維新は段階的に廃止・あるいは既に止めているという状況だ」
━━政策活動費を廃止することで問題は生じるのか?
「もとより政党支部に措置されているお金があり、政治家個人にも公開の必要もなく広い用途で使用可能である調査研究広報滞在費(旧文通費)もあるので問題はないはずだ。政治にカネがもっと必要ならそれは公費で措置し、使途公開すればよい」
━━なぜ自民党は非公開を主張するのか?
「自民党は『外交や防衛等に関わる情報が第三国に漏れることを防ぐため』として『非公開を原則とするべきだ』と主張しているが政党支部でいえば外交や公安・安全保障に関わる人物の出入りは限定的だ。自民党の主張に沿うのであれば、原則として公開、使途を明らかにし、その上で安全保障に関するものなどは例外的に非公開、そして例えば10年など期間を空けて公開するような制度を設計すればいい。なぜ自民党がそのように主張しないか疑問だ」
━━そもそも政策活動費は実際何に使われているのか?
「さっぱりわからない。現状、事実上領収書は必要とされず、使途を明らかにする必要もないが、政治家は必要だと主張する。組織の勢力拡大に必要だというが、何に使っているのか国民の目線からは全くのブラックボックスだ。さらに、『公費と自ら集めてきたお金を分けている』との主張だが、お金に色はないためどこかの過程で混ざっても区別がつかない。政治の透明性の観点、我々の知る権利の観点から、原則として政治とお金の流れを透明化し、広く社会の目が向くようにすることが重要だ」
━━立憲民主党が政治資金パーティーの開催を禁止する法案を国会に提出している中、大串議員が6月にパーティーを開催予定だという。これについてはどう考えているか?
「『説得力がない』と感じられた人もいるだろう。僕も半分はその通りだと思う。『さっさと止めてしまえばいい』というのもわかる。ただし、政治資金パーティーでお金を多く集めることができるのはやはり与党中心であるため、与党が事実上止めていないか見直していない中で野党から先行して止めてしまうと(資金力などの面で)規模も小さく、野党が与党に伍していくのがますます難しくなってしまう」
━━パーティー券の公開基準の見直し案において、自民党は10万円超で公開、そして公明党、国民民主党、維新は 5万円超で公開としている。この金額の差をどう考えたらいいのか?
「『全て公開されるとわかりやすくて、気持ちいい』との思いはよくわかり、こちらについてもやはり半分は同意できる。ただ、日本は『どの政党に関わっているのかあまり明らかにしたくない』という社会であると考えるのであれば、例えば個人が一般的な常識の範囲内でパーティー券を購入して政党・政治家を支持しているという情報が公にならないということがあっても場合によっては許容されるのではないか。その金額のラインをどこに引くのかは難しいところだが、一回の政治資金パーティに個人が払える上限は決まっているが、より常識的な金額、例えば 月1万円、年間で10万円を少し超えるような水準(12万円)程度まで非公開とするのは、場合によってはあり得るのではないか。ただ、それらを超過するような非常識的な金額や企業等購入分については明らかになる方が好ましい」
━━調査研究広報滞在費(旧文通費)も気になるとのことだが。
「政治と金の問題において、政策活動費、政治資金パーティーに加えて、調査研究広報滞在費(旧文通費)は3点セットで考えるべきだ。数年前にも、税金を原資とする資金でありながら月100万円、領収書を取らなくてもいいということで問題になり、法改正が行われた。だが、名称改正による現状追認と日割のみ実現され、本丸だった透明化については見送られたままであるため、政策活動費などとセットで思い起こされるべきだ。また政治に必要なコストがあれば、それらは政策秘書をもう一人増やすなど正面から措置されるべきで、使われ方は原則として透明化する必要がある」
(『ABEMAヒルズ』より)
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