ラッパー:Itaqが、23歳のビートメイカー:BEとのコラボアルバム『SPRINGBOARD』をリリースした。
『SPRINGBOARD』は、「春の訪れ」と「跳躍台」という二つの意味が込められており、このアルバムが二人のキャリアを大きく変え得る意欲作である事を意味している。
古き良きヒップホップの真骨頂とも言えるレイドバックしたビートの上でItaqが遥かな洗練を経たスキルフルかつ音楽的なフロウで、改めて自らの意気込みをラップする1曲目「Reborn」に端を発し、Itaqの人生を変えてしまったスキャンダルを題材に世の不条理をシニカルに綴った「Question & Answer」、BEと:Plueによる凶悪なドリルビートの上で、宗教ラッパーの目線から政治の腐敗を痛烈に批判した「KAIKEN ZONE」と、前半には濃厚かつ強いインパクトの楽曲が並ぶ。
BEとBuddhabeatzによる神秘的なトラップビートの上でItaqが日々の日常を皮肉たっぷりにラップした「Celebrity」、BEによる極上のジャジースキット「Nekomaru」を経て、アルバムは色鮮やかな後半部分へと入って行く。
初期のカニエ・ウェストを思わせる普遍的でありながらオリジナリティの光るビートの上で、時間の大切さを噛み締める「Time Goes By」、温かみのあるピアノトラックで神の大きな愛をストレートに歌い上げた「愛されて生まれた」、Itaqが自身の恵まれた家庭環境を振り返り、敢えてその感謝を創作に昇華した「理由」等、Itaqの人となりが多面的に伝わる楽曲が続く。
9曲目「Dopamine」には現在18歳、何とラップ活動を始めてまだ8ヶ月でありながら末恐ろしい才能を持つMadlloが参加。
いつまでも完全な両思いが達成されない恋愛の難しさと虚しさを俯瞰的に描き出す。そして、UK Garageも彷彿とさせる様なビートの上で人生をひと夏のキャンプに例え、それぞれの毎日が幸せで実り多い時間となる事を祈る10曲目「Have Fun!」によって、アルバムは締め括られる。
ヒップホップ的な毒々しさを含む濃厚さと日常生活での聴きやすさ、そして爽やかな後味を両立した黄金比の名盤が完成した。アートワークはItaq自身が三脚を使い撮影したセルフポートレート。
現在住んでいる沼袋の公園で、交流がある中野区の服屋で揃えた衣装を着ている所からも、飾らない日常生活と中野区への愛を感じさせる一枚となった。
また、アルバムのリリースに合わせて、1曲目「Reborn」のミュージック・ビデオが公開された。
監督と編集はItaq本人が担当、Itaqが住むアパートの自室から見える満開の白木蓮で幕を開け、静かな日常の中にありながらドラマチックさを決して失わない、瑞々しい映像美を感じさせる映像作品となった。