将棋の第82期名人戦七番勝負第5局が5月26・27の両日、北海道紋別市の「ホテルオホーツクパレス」で行われ、藤井聡太名人(竜王、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)が挑戦者の豊島将之九段(34)に勝利し、シリーズ4勝1敗で初防衛を達成した。終局後に行われた記者会見では、「今回の名人戦ではあまり経験したことのない将棋を考えることができ、勉強になった。それを活かしていけるように取り組んでいきたい」と今後の意気込みを語った。質疑応答の主な内容は以下の通り。
――挑戦者の豊島九段は力戦志向の将棋が多かったが、印象に残った点は?
豊島九段とはこれまでに何度もタイトル戦で対戦していますが、今回の名人戦は大きく違い、序盤から構想力を問われる将棋が続いたと感じています。その中でも、第4局や本局のような早い段階で端歩を突く指し方というのは今までの実践例も比較的少なく、いろいろ工夫の余地の大きい指し方なのかなと感じました。
――紋別対局の感想は
空港に着いた時から地元の方に歓迎していただき、対局の前日にもアザラシと触れ合ったりリラックスして対局に臨むことができ、素晴らしい環境の中で対局することができました。(勝負メシも)地元のお店からメニューをご用意いただいたとのことで楽しみにしていましたし、実際に頂いてみて海の幸を堪能することができたと思っています。
――自身の指し手で印象に残る手や場面は?
うまく指せたところを挙げると、第2局の角を上がった手です。序盤の方針を決めるところでかなり悩ましい局面でしたが、積極的な手を選んでいけたのは良かったです。ただ、第2局は手応えよりも課題や反省が残る一局だったと思います。
――名人連覇でタイトル獲得数は22期に
ただ4月から対局の結果も内容の良くなくて、それほど前進できているかはわかりません。今回の名人戦ではあまり経験したことのない将棋を考えることができて、すごく勉強になるところが多かったと感じているので、それを活かしていけるように取り組んでいきたいと考えています。
――最年少での名人防衛
シリーズの内容という意味では今期はうまくいかないところも多く、前期と比べてもそれほど手応えがあった訳ではないです。今期はいろいろな戦型や展開を指して良い経験ができたかなと思っていますし、そういう力は今後も必要になるものかなと思っているので、今の段階で成長できたとははっきり言えないですが、今期の経験も今後の成長に繋げられればと思っています。
――シリーズの課題
第2局では有利なところから苦しくしてしまったり、第4局では早い段階でバランスを崩してしまったりしたところがあったので、その辺りは自分の弱さというのがはっきり出てしまったのかなと受け止めています。
――自身の現在の調子と叡王戦第4局(5月31日)に向けての意気込み
この2カ月くらいはミスが少なからず出てしまっている印象がありますが、対局して得たものもあると思っています。叡王戦第4局はカド番で迎えることになりますが、臨む上での気持ちや、やるべきことは今までと変わらないと思っているので、対局すぐにありますがしっかり準備して全力を尽くしたいと思います。
――地元の子供たちへメッセージ
紋別は勝浦修九段の出身地ということもあり、将棋が盛んなところと聞いています。今回こちらで対局させていただき私自身も思い出にもなりましたし、紋別で対局を見ていただいた方にも楽しんでいただけたのであれば嬉しく思います。子供たちをはじめ、紋別の方がこれからもぜひ将棋を様々な形で将棋を楽しんでいただけたらなと思っています。
――将棋界はもちろん、スポーツ界でも「奪取よりも防衛が大変」という声もある
シリーズが始まればタイトル保持者も挑戦者も対等な立場で、どちらが有利というのはないと思っています。タイトル保持者ですとシリーズの開幕に向けて状態を整えていくというところが求められるところですし、今回は難しさを感じた部分もあったかなと思います。
――北海道での対局は7戦全勝
あまり結果は意識していませんでしたが、北海道は(タイトル戦を)開催していただくことも多く、どこも食べ物も美味しいですし、良い環境の中で対局させていただいていると思っています。
――4月からミスが出ている要因は?
はっきりとはわかりませんが、少し読みの精度が下がってしまっているところがあり、それがミスにつながってしまったところがいくつかあったかなと思っています。名人戦をはじめ、これまで経験の少ない将棋になることが最近は多かったので、そういった局面における判断力がまだ十分ではないのかなと感じています。
――ファンへのメッセージ
紋別に来るのは今回初めてで楽しみにしていました。地元の方に歓迎していただき気温も涼しく快適に対局することができました。叡王戦の第4局もすぐにありますし、大きな対局が今後も続くので、そちらでも良い将棋が指せるように精いっぱい頑張っていきたいと思っています。
(ABEMA/将棋チャンネルより)