意表の作戦選択に、的も味方も驚きを隠せなかった。将棋界の早指し団体戦「ABEMAトーナメント2024」予選Dリーグ第1試合、チーム稲葉 対 チーム佐々木の模様が6月1日に放送された。第5局に登場した稲葉陽八段(35)は、チーム佐々木の伊藤匠七段(21)を相手にまさかの振り飛車を採用。仲間からも「中飛車!これはちょっと予想してなかった!」の声が上がった。
チーム稲葉の3勝1敗とリードして迎えた第5局。仲間で同門の弟弟子・藤本渚五段(18)、上野裕寿四段(21)の奮闘に、リーダーとしても置いて行かれるわけにはいかないと満を持しての登場となった。対するはチーム佐々木のエース・伊藤七段。タイトル戦の連続登場の活躍はもちろん、超早指し棋戦のABEMAトーナメントでも好成績を挙げている注目株だ。稲葉八段も「研究が深く、年齢的には若手だが活躍で言うとトップ棋士の中でもかなり上位で本当に手強い。研究にはまらないよう、うまく相手が時間を使ってくれるような展開にしたい」と警戒しながら対局に臨んだ。
伊藤七段の先手で始まった一局。後手の稲葉八段が用意した作戦は、まさかの“ゴキゲン中飛車”だった。これには、チーム佐々木の佐々木勇気八段(29)、振り飛車党の第一人者の久保利明九段(48)も「ゴキゲン!」「へ~!」。さらに、チームメイトの藤本五段、上野四段も「中飛車!中飛車!?」「これはちょっと、予想してなかった!」と驚きの声を上げていた。
居飛車党の稲葉八段だが、直近では振り飛車を指しこなしていることでも注目を集めている。今年1月に行われた第82期順位戦A級7回戦・対永瀬拓矢九段戦では角交換振り飛車を採用、2月の王座戦二次予選2回戦の谷川浩司十七世名人戦では三間飛車、3月の第37期竜王戦1組5位決定戦2回戦でも四間飛車を志向するなど、振り飛車の採用率が急上昇している。
しかし、ABEMAトーナメントでのまさかの振り飛車採用とあり、ファンもビックリ。「ほー!」「まじか」「なかびしゃ!?」「ゴキゲン稲葉?」「めっちゃ新鮮」「稲葉さん振り飛車いけるん?」とコメントが殺到していた。
対局は、穴熊に組んだ伊藤七段が果敢に攻めに出たが、馬を活用し攻撃を受け切った稲葉八段が力を見せつける展開に。劣勢に追いやられた伊藤七段が必死の粘りを見せたものの、△7七歩から切れ味鋭く迫ってみせた。最後は△6九飛が決定打となり、稲葉八段が212手に及ぶ大熱戦を見事制してみせた。
◆ABEMAトーナメント2024 第1、2回が個人戦、第3回から団体戦になり今回が7回目の開催。ドラフト会議にリーダー棋士11人が参加し、2人ずつを指名、3人1組のチームを作る。残り1チームは指名漏れした棋士が3つに分かれたトーナメントを実施し、勝ち抜いた3人が「エントリーチーム」として参加、全12チームで行われる。予選リーグは3チームずつ4リーグに分かれ、上位2チームが本戦トーナメントに進出する。試合は全て5本先取の9本勝負で行われ、対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)