「ねぇ、おじいちゃん聞いてー。なんかさ、ママめっちゃキレちゃってさ。うち髪染めたじゃん? 可愛いと思ってやったのにー」
【映像】「うち髪染めたじゃん?」“祖父”に話しかける“女子高生”
金髪にあどけない顔立ちが可愛らしい女子高生。これは女子高生のおじいちゃんのSNSに投稿された動画だ。
彼女が呼びかけている「おじいちゃん」とはXで活動している写真家・會田与作さん(83歳)。4.8万人ものフォロワーをかかえる人気アカウントだ。
現役引退後、今は自由気ままに友人や孫などの写真を投稿している會田さん。しかし會田さんが撮影したというこの画像、何か違和感が。よく見ると、手のひらをホースの水が勢いよく貫通している。
「僕としては画像を見た時に一瞬だけ『え?』ってなってくれたらうれしいので、生成AIの不自然な点をあえて修正しなかったりする」
こう話すのは、會田与作さん……ではなく、會田さんの“マネージャー”こと長橋さん(仮名)だ。そう、孫設定だった女子高生の動画も含め、今までの作品はすべて生成AIで生み出されたもの。會田与作という人物自体も、架空のものなのだ。よく見れば、アカウントのIDは「aidayo(AIだよ)…」。
「アカウントの存在を知らない人は、ほとんど一瞬実在だと信じるようだ」
本業はフォトグラファーだという長橋さん(仮名)。できあがる生成AIの画像は、クオリティにばらつきがあるものの、良いものは写真の構図などの参考になると思い、実験的に架空の人物、會田与作として様々な生成AIの画像や動画を投稿するアカウントを開設したという。
「友人に『これ、お前の理想の老後だろ』と言われてはっとしたのだが、無意識に自分の老後を作っている気がして。非現実的なおじいちゃんおばあちゃんたちのパワフルな老後を画像で見て、それをみんなで共有して、明るく老後を考える時間が楽しい」
投稿する前には作った画像を画像検索にかけ、他の作品の著作権を侵害していないかなど、細心の注意を払ってチェックしている長橋さん。あえて生成AIだとわかるバグなどを残し、皆がジョークだと分かって楽しめるよう気を付けている。
本物のような写真や動画を作れる生成AI。生成AIを使っている当事者だからこそ、警鐘を鳴らす。
「爆笑と同時にこれだけのクオリティのものが出てくることに物凄く恐怖を覚える。正直、今の法律の整備状況ではまだデメリットの方が大きいと感じている。僕の両親にも『僕から僕の顔でお金の無心があっても絶対に疑ってくれ』と伝えている。ビデオでも簡単に作れる時代が来ているから、と」
會田与作さんの投稿について、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「女子高生の写真があまりに完成度が高く、完全に騙された」と白旗をあげた。
その上で神庭氏は「今回のように微笑ましいAI活用ならいいのだが、AIで存在しないジャーナリストやインフルエンサーを仕立て上げてSNSなどで発言させ、世論操作を狙う事例もある。そこら中にフェイクが蔓延しており、『自分は騙されない』と思ってる人こそ危ない。自戒を込めて警鐘を鳴らしたい」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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