将棋の第95期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局が6月17日、新潟市の「高志の宿 高島屋」で行われ、藤井聡太棋聖(竜王、名人、王位、叡王、王座、棋王、王将、21)が挑戦者の山崎隆之八段(43)に勝利した。この結果、シリーズ成績は藤井棋聖の2勝0敗に。防衛5連覇で達成となる最年少での永世位獲得に“王手”をかけた。ストレートで決着をつけるのか、後が無くなった山崎八段が踏ん張るのか。注目の第3局は7月1日、愛知県名古屋市の「亀岳林 万松寺」で指される。
藤井棋聖が開幕から連勝を飾り、防衛5連覇に大きく前進を遂げた。前期、藤井棋聖が防衛を決めた「高志の宿 高島屋」を舞台に争われた第2局。後手番の挑戦者の山崎八段がやや意表の「向かい飛車」を志向すると、藤井棋聖は居飛車で対抗した。
じっくりとした駒組みが続いたが、山崎八段は玉を固めきらずに独特な桂使いを披露。一方の藤井棋聖は金銀4枚で堅陣を築き、自然な指し手を重ねてポイントを積み上げていった。玉形の差から、ABEMAの「SHOGI AI」は藤井棋聖の優勢を表示。繊細な指し手が要求される山崎八段に対し、藤井棋聖は自玉の危険をいとわず果敢に踏み込み、激しい展開を選択した。
角を切って勝負に出た山崎八段に対し、藤井棋聖は攻守自在の指し回しから天王山に桂馬を据える強烈な一着。金の踏み込みから後手陣攻略へとつながる構想に、ABEMAの解説を務めた棋聖3期の屋敷伸之九段(52)からは「すさまじい組み立てですね」との声が漏れた。ここまで来れば、絶対王者を止めることはできない。切り裂くようにリードを拡大し、攻め合いを狙った山崎八段を振り切った藤井棋聖が一気に勝負を決めた。
勝利した藤井棋聖は、「本局はかなり早い段階で予想していない展開になり、序盤はなかなか主張を作るのが難しかった。一手一手難しかったが、玉の堅さを活かして行くことができたのかなと思う」と一局を総括。防衛とともに永世称号獲得が近づくが、「シリーズ中は意識せずに、次は後手番となるのでよりしっかり準備しないといけないのかなと思います」と冷静に次戦を見据えていた。
一方、敗れた山崎八段は「向かい飛車と右玉の組み合わせを考えてどうなるのかなと思って、後手番なのでおとなしく行くつもりで組んでいたが、桂が飛びたくなってしまって自分から動いてしまった。良い勝負に出来ないかなと思っていたが機敏に動かれてしまった。チャンスが来るのを我慢していたが、一手見切られていた」とコメント。「追い詰められているが、(第3局は)先手番になるので、よりしっかり準備を。やってみたい作戦を考えて、3局目はまとめきって良い勝負にしたい」と闘志を燃やしていた。
この結果、シリーズ成績は藤井棋聖の2勝0敗に。通算5期で付与される“永世棋聖”資格まであと1勝に迫った。永世棋聖は、歴代に大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、米長邦雄永世棋聖のほか、資格保持者は羽生善治九段、佐藤康光九段と将棋界のレジェンドが名を連ねているが、藤井棋聖が獲得した場合は6人目の快挙となる。なお、永世称号獲得の最年少記録は、23歳11カ月で達成した中原永世棋聖が保持しており、藤井棋聖が達成した場合はその記録を更新することとなる。
ストレートの3連勝で新たな大記録を打ち立てるのか、15年ぶり2度目のタイトル戦に挑んでいる山崎八段が一矢報いるのか。注目の第3局は来月1日、名古屋市の「亀岳林 万松寺」で予定されている。
藤井棋聖はヒューリック杯棋聖戦五番勝負と同時並行して、同学年の伊藤匠七段(21)を挑戦者に迎えた叡王戦五番勝負にも臨んでいる。叡王戦は現在2勝2敗と両者同星となっており、フルセットで決着を付けることになった。藤井棋聖が防衛で全冠保持を続けるのか、伊藤七段が絶対王者の牙城を崩すのか。叡王戦最終局のゆくえからも目が離せない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)