マンション建設によって「富士山」が半分しか見えなくなると、完成目前にマンション解体が決まる前代未聞の騒動が起きた。
不動産コンサルタントの長嶋修氏は「業界に30年以上いるが、このようなケースは初めて聞いた。引き渡しギリギリになって、すべてを中止・解体するのは驚きだ」と語る。
そのマンションが建っているのは、「学生の街」として知られる東京都国立市だ。文字通り富士山が見える「富士見通り」があり、「関東の富士見100景」にも選ばれている。その通りに面して建てられた、10階建てのマンションが、話題となっている物件だ。
近隣の飲食店「深川つり舟」店主の湊実さんは、「建つ前から『日照権で揉めていたのか』と思っていた。『国立のわがままな人が反対しているのか』と思ったら、いざ建ったら富士山が半分になっていた。あれでは反対だ」と話す。
周辺住民から「富士山が見えない」との反対意見があり、メーカーの積水ハウスは住民説明会を3度開催した。当初の予定から高さを5メートル下げ、11階建てから10階建てへ変更するなど、国立市の承認を得つつ、5月に工事は完了した。マンションは全18戸、7000~8000万円台で売りに出されていたが、引き渡し目前で解体が決まった。積水ハウスは、このように説明している。
「本事業は適法に手続きを進め、法令上の不備はございませんが、特に遠景からの富士山の眺望に関する検討が不足していたことが引き起こした事態であり、ご契約者様及び地域の皆様に、さらにご迷惑をおかけすることを避けるべく、建物竣工直前ではありましたが、中止を判断いたしたものです」(積水ハウス)
近隣に住む女性は、「みんながもちろん反対だった。一軒家しか建っていないところに、こんな大きい物が建つ。それだけでびっくりする」と言う一方で、今の心境は「複雑だ」とコメントする。
国立市の永見理夫市長は「私どもは条例・法令に基づいて、適正な指導と手続きをもって進めてきた。この積水ハウスの“やり方”は非常に遺憾だ」との見解を示した。長嶋氏は、今回の事例が、後々の懸念材料になる可能性を指摘する。
「全国のマンション建設現場で、同じように反対運動があった時に、『あそこは解体できたのに、なぜ(ここは)できない』と主張するケースが出るかもしれない。(今回の積水ハウスは)大手で体力があるため、この判断ができた」(不動産コンサルタント・長嶋修氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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