相次いで報じられる、高齢者ドライバーによる交通事故。ハンドル操作やブレーキとアクセルの踏み間違えなど、運転ミスが大きな要因とされている。北海道警察公式チャンネルが公開した動画には、車が急発進して運転手がパニックになる様子が映っている。
全国の警察や自治体が高齢ドライバーの免許返納を推奨しているが、車がないと生活が不便だといった理由から、数は伸び悩んでいるのが現状だ。『ABEMA Prime』では、2019年に自主返納した超魔術師のMr.マリックとともに、この問題を議論した。
■「じいじ、危ない」孫の言葉が“啓示”のように
Mr.マリックは経緯について、「孫を乗せて車を運転していたら、『じいじ、危ない』『まっすぐ走ってないよ』と。妻からも『危ない』と声をかけられ、それがずっと残っていた。免許の更新が来て列に並んでいる時、返納のポスターが目に入って、孫の言葉が啓示のように浮かんだ。更新ではなく返納の相談窓口に行き、怖いと感じた話を相談に乗ってもらって、返納した」と話す。
「まっすぐ走っていない」と指摘されたことについては、「電柱を避けようとした時で、まっすぐ走っているつもりだった。自分ではよくわからずもやもやしていたが、他の人がだんだん一緒に乗ってくれなくなってきた」と明かす。
免許を返納したくない理由として「身分証明書」を失うこともあげられる。この点については、「免許を返すと、運転経歴証明書をもらうことができる。パッと見は免許証と同じだし、財布に入れておけばそれまでとなんら変わらずに使える」と語る。
現状、生活の上で困っていることはないという。「駐車場は高いし、運転するのもストレスがかかるし、時間どおりに着かないし、都会で車は必要ない。返納して本当によかったと思っている。仕事で地方に行く時もスタッフの車で移動する決まりになっているので、悩みはない」。
■都会と地方で異なる環境 明石市はキャンペーンで返納数10倍に?
交通評論家で高齢者安全運転支援研究会会員の中村拓司氏は「安易に免許を返納すべきではない」という考えだ。地方の問題として、「横浜の郊外部なんかでも、車がないと買い物や病院にも行けない。もっと地方に行けばタクシー自体もなくなってくる。やはり生活形態が都会と全く違うので、地域に合わせた免許返納の仕組み、バックアップを考えていかなくてはいけない」と述べる。
また、運転技術の個人差も大きいと指摘。「それは若い人でも高齢者でも同じだ。“最低限このレベルがないと”という感覚がみんなに共有されれば、もう少し返納しやすくなると思う。これだけの高齢化と運転社会は人類が初めて経験することで、こうなったら免許を返納すべきだという議論にまだいきついていない。事故が相次いで不安になるのもわかるが、一面的では世間の納得は得られない。そこが一番難しい部分だ」とした。
一方、前明石市長の泉房穂氏は、同市が実施したキャンペーンを紹介。70歳以上の市民が自主的に返納してプロジェクトに申し込めば、タクシーかバスの利用券5000円分・商品券5000円分・反射材付きのエコバック、また返納を勧めた市在住の家族らに、中学生以上ならクオカード1000円分、小学生以下なら子ども商品券3000円分を配ったという。
「父親の認知症が始まった時に車の話になったが、言い合いになってしまってダメだった。しかし、孫から言われるとおじいちゃんは『危ないからやめよう』と思いやすい。このキャンペーンによって返納数は前年度の10倍ぐらいになった。併せてコミュニティバスの路線の見直しをしたり、スーパーと提携してバスを出してもらったりして、車がなくても問題ないようにした」と説明する。
Mr.マリックは「ヒヤッとしたり、『危ない』と他人に言われたら、返納も1つの手だと一度よく考えていただきたい。何かが起きてからでは遅い」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)
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