【写真・画像】「多くの人が理想的な恋愛をしていると思っているが、合理的にマッチングされた“偽恋愛”だ」  “童貞學”提唱の現役東大生が疑問視する現代の恋愛主義 1枚目
【映像】東大「童貞學研究會」の会合の様子
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 出生数が過去最少の今、政府が強い危機感を示す「少子化問題」。解決するための入口の一つが「恋愛」だが、そのステップに疑問を持つ人がいる。

【映像】東大「童貞學研究會」の会合の様子

 「童貞學」という独自の学問を掲げ、恋愛が当たり前の世の中に疑問を投げかける、現役東大生で「童貞學研究寫會」会長の猫跨ぎさん。東大の会議室で行われた会合を覗くと、研究会のメンバーと議論を繰り広げていた。

「私は彼女いない歴=年齢。個人としては、“恋愛はしなきゃいけないもの”“恋愛をしないと取り残されている”という感は非常に強く感じる」
「女性に対するスティグマ(差別や偏見)って、性体験を済ませていないことに対するものもあれば、済ませてしまったことに対するものもあると思う」

 吐き出される、恋愛をめぐる生きづらさ。さらに、議論は深い方向へ。

「民主主義というのは、個人主義が理想。個人によって決められる結婚は、必ず恋愛結婚になる。一方で、市場が家族を利用する構造がなければ、利益追求ができない。合理的な結婚というのも、もう1つの軸で必要になる。それを私は“夢と現実”だと、“恋愛主義は近代の夢である”と言っている」(猫跨ぎさん)

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 ほかにも、歴史や哲学、宗教など様々な議題があがり、気づけば2時間が経過。恋愛論の研究者である福岡大学・鈴木隆美教授は「世の中に元気を与えるようなことが研究としてできるのではないか」と評している。

 少子化対策を見据えて、恋愛と結婚の仕組みをどう考えたらいいのか。『ABEMA Prime』で猫跨ぎさんとともに議論した。

■「“誰かいい人いないかな”“この人にしよう”というのは偽恋愛だ」

 童貞學研究會は2022年設立で、軽視されてきた「童貞であることによって発生する問題」を研究。文学や歴史における位置づけ(童貞史)、様々な著作・研究・統計から各国の比較(比較童貞学)、歴史や社会などの軸を入れず存在論的に問う(童貞哲学)など、様々なキーワードと組み合わせている。

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 猫跨ぎさんいわく「社会は恋愛という『夢』を見ている」。恋愛→セックス→結婚と、恋愛があらゆるステップの前提にあり、恋愛できない人は“普通”から外れてしまうという観点だ。「一般的には、恋愛なき結婚に違和感を感じる人は多いと思う。“結婚するため”“童貞でなくなるため”という目的のため、恋愛が手続きになる。また、それを求める人たちが出てきてしまう」。

 作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は2021年のメルマガで、昭和前期までは見合い結婚が一般的で、自由恋愛・恋愛結婚は「階級社会からの解放」だと指摘。一方で、現代は「恋愛しなければならない」という義務感から抑圧に転じた状況だとしている。「お見合いや職場結婚がなくなり、自由結婚になった結果、恋愛強者と言われる男性だけが女性を独り占めするようになった。また、30代ぐらいの女性と話していると、“恋愛めんどくさい。でも子ども産みたいし、生活の安定が欲しいから結婚したい”と言う人は多い。“恋愛はいいから、いきなり目の前に夫が現れればいいのに”という状態になっている」と述べた。

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 これに猫跨ぎさんは、「民主主義的に理想的な恋愛結婚をみんなしている風に思っているけれども、実際にはかなり合理的なロジックによってマッチングしている。私からすれば、みなさん偽恋愛をしている。その“安定を求めている人たち”は、マッチングの過程を恋愛と捉えようとしているということだ」とした。


 猫跨ぎさんによれば、「恋愛」はしたくなくても落ちてしまうもの、「偽恋愛」は恋愛したいと思って探しにいくもの。「マッチングした後に生まれるものは“親密さ”として、恋愛と一度区別して考えたい。まさに雷に打たれるという、一目惚れという表現に該当するのが恋愛だ」「“誰かいい人いないかな”“この人と恋愛しよう”というものは、偽恋愛と定義できないかと考えている」と述べる。

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 これに佐々木氏が「純粋な恋愛と、完全に合理的なマッチング、この2つしかないことはなく、間にはグラデーションがある」と指摘すると、「合理的なものと個人主義的なものとの間を行き来するのが、近代の恋愛の移行の仕方ではないか。日本はこういう方向に向かっていくと思っている」との考えを示した。

■マッチングサービスはあり? この先の“理想の恋愛”は

 東京都が「AIマッチングサービス」を開発中で、今年の夏に実用化予定となっている。こうした自治体の取り組みは「当然の成り行きだ」と猫跨ぎさんは話す。

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「利益追求をしたいのは市場の欲望。家族から労働力を引っ張ってきて、市場にいらなくなった人は家庭に返すということを、日本はずっとやってきた。家族ができないことには何も始まらないという意味で、市場としては合理的なマッチングをしてほしい。マッチングサービスで探しに行った恋愛を、みんなが“運命の恋愛なんだ”と思うようにしていったほうが、恋愛主義と矛盾しない合理的なマッチングを加速できる」

 一方で、問題視しているのが「インセル(望まない禁欲者)」。北米などで非モテを指すネットスラングで、インセルを名乗る人物の中には女性蔑視の投稿も見られる。また、恋人ができないことに起因したとみられる事件も発生した。「“モテない”“付き合えない”ことが大きな圧力となって出てきている。昔は多くの人が苦しんでいたかもしれないが、今は少数の人が過激化しているような状況もある」との見方を示す。

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 猫跨ぎさんは、偽恋愛主義の先に待つのは高度に発展したアルゴリズムに支配され、合理的にマッチングする「修正恋愛主義システム」の世界だという。「偽恋愛が悪いと言っているのではなく、偽恋愛をすることすら難しい人たちは社会から取り残されてしまうということだ。結婚が恋愛からのみ繋がっているものとするのは時代遅れで、いろいろな可能性を開いていくべきではないかと言いたい」とした。
(『ABEMA Prime』)

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