今年上半期の訪日外国人が過去最多となり、岸田総理は「2030年に6000万人」という政府目標が視野に入る状況になったと明かす一方で、ある衝撃的な試算が話題になっている。「2050年には外国人比率100%の街が生まれる」。そう予測するのは、不動産コンサルタントの沖有人氏だ。
沖氏の試算によると、2022年から2023年にかけて、外国人は約26万人増加したが、日本人は83万7000人減少。このペースが毎年進むと、将来複数の町村で外国人率が100%に達する可能性があるという。都道府県で外国人比率1位は、東京都で15.7%まで増加し、新宿区では38.45%、豊島区では38.40%が外国人になる。増えゆく移民と、いかに共生するべきか。『ABEMA Prime』で考えた。
■日本に“外国人率100%の町”ができる?研究者「少なめに見て2050年に新宿区・豊島区は4割近くに」
沖氏は「国立社会保障・人口問題研究所が出している日本人と外国人の市町村単位の人口を分母として、昨年のペースで外国人が増えた場合の2050年の人数を分子とすると、100パーセントを超える市町村が出てくる」と説明する。「東京都の外国人比率は現在4.5%で、全国平均の2.5%より高い。これが2050年に15.7%になる。外国人は集まって住む傾向があるため、新大久保のある新宿区や、池袋のある豊島区は急速に増加し、少なめに見ても2050年には4割近くまでになる」と試算している。
背景には日本政府による政策もある。「外国人を受け入れる『特定技能』の枠を、5年間で34万5000人から、82万人に増やすと閣議決定された。一方で日本の人口は減る。出生率の減少を単純計算すると、100万人いた人口が、2世代進むと36万人、3世代進むと21万6000人になる」と日本の人口減少ペースについても危惧した。
こうしたデータを紹介しつつ、「単純労働者の受け入れに疑問を持っている」と持論を語る。「労働力人口は10年間で6.7%増加した。その要因には『女性の社会進出』『高齢者の就業率上昇』『外国人労働者の増加』があるが、1人あたりのGDPは下がっている。非正規雇用の単純労働者を入れすぎた結果であり、国の発展のためには、留学生を増やしたり、日本で働くインセンティブを与えたりして、毎年のように技術や年収が上がる人材を増やさなければならない」。
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「安い労働力が不足して、安い給料で雇うと、給料が上がらない」と指摘する。「そうなると賃上げもできず、1人あたりの生産性も上がらないため、高度な技能を持つ移民を入れることは重要だろう。ただ、その先の『どうやって共生するか』が大切で、外国人参政権の問題も絡んでくる」と述べた。
いま日本が学ぶべきは、ヨーロッパだという。「90年代ごろから移民が大量流入して、『多文化共生』を掲げてきたが、30年間で完全に失敗した。移民排斥・反移民の極右政党が勢力を伸ばしている状況で、日本がそうならないためには、どうすればいいかを議論しないといけない」と、受け入れすぎる流れにも警鐘を鳴らした。
■住民5人に1人が外国人 群馬県大泉町の現状「外国籍の子どもが40%の学校もある」
群馬県大泉町は、町ぐるみで外国人との共生を進めてきた。すでに住民の5人に1人が外国人で、特にブラジル人が多く住む街として知られている。町内で在住外国人との共生に尽力する大泉国際交流協会の糸井昌信会長は、「群馬県では昨年1年間で、日本人が1万8000人減った。これは小さな町が1つ消えるのと同じだ」と分析する。
2050年には外国人比率が43.2%になると試算されるが、実感としても「いまの状況が続けば、そうなるのではないか。外国籍の子どもが約40%の学校もある」。共生する上で重要となる点については「言葉や文化の違いといった壁を、ひとつずつクリアすることが大切だ」と、コミュニケーションをあげた。
交流協会では現在、日本語講座や学習支援、交流を図る文化講座などを行っている。「孤独でどうやって生活すればいいかわからない外国人に、居場所を作る側面もある」とし、移住者への苦情をアイディアに変える試みも行っている。「ポルトガル語で『この地域のゴミの出し方』をチラシにして」、面談しながら配布した。
共生を目指す過程では、以前からの住民との距離感もあった。「当初は日系人が多く、日本語やルールをある程度理解していたが、移住者が増えると徐々に『田舎の理論』が働き始める。『地域活動に参加しない』『子どもが学校に通っていないんじゃないか』と拒絶反応を持つ住民もいた」と、当時を振り返った。
■日本で移民が増える理由「日本は魅力的」「非常に住みやすい」整備が遅れる“共生”ルール
ドイツ出身エコノミストのイェスパー・コール氏は、「人口減少の問題は、数十年前からの予測が大体当たっているが、政治でほとんど議論されていない」と指摘する。「西洋やアジアの友人と話すと、日本は非常に住みやすい。ドイツやアメリカよりも移民に優しく、だからこそ日本に来るわけだが、社会的にどうすべきかの議論は不十分だ」と、増える移民に対しての準備不足を指摘した。
佐々木氏は「議論しないのは、『移民を入れたくない』国民意識の表れだ」とみる。「国際社会での“移民”の定義は、1年以上の在留資格を持つ人で、日本はすでに移民大国だが、絶対に認めず『透明な存在』として扱っている。タブー視しているのは、自民党政権だけでなく、国民もそうだ」と、国民感情の側面にも着目した。
よく出る「給料が安いから日本には来てくれない」という意見には、「大卒のエリート中国人が、中国の競争社会に疲れて、食文化や自然、行儀の良さに憧れて来日するケースも多い」と説明。「日本が魅力的な移民先であるのは間違いない。ただ、日本人はそれを見ないようにしている。国民的なコンセンサスが取れないまま進むと、移民排斥が始まる可能性がある。参政権の範囲や、日本文化のルールの順守など、線引きする必要があるのではないか」と、新たな課題・火種が生まれる点についても触れた。
■移民に与えられる権利、どこまで?“参政権”には賛否「税金を収めているのだから…」「乗っ取られる」
国連広報センターHPによると、国際移民とは「移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」を指し、3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と区別している。
外国人参政権は、どこまでの範囲が適切か。コール氏は「ドイツでは約10年前、外国人が仕事で1年間税金を払うと、地方参政権が与えられるよう改革された。国政には参加できないが、地方政治には関われる」と説明する。
時事YouTuberのたかまつななも、諸外国の取材を通して、「国政参政権はないが、地方参政権はある」地域が多いと語る。「住む町に税金を払っているのに、自分たちのことは決められない。これは排斥に近いのではないか」と権利を認める意見を述べた。
「ヨーロッパでは、EUの枠組み内で参政権を認めるケースが多いが、非EUの参政権を認めている国は少ない」と、佐々木氏が解説する。「人口減の中で、参政権の範囲決めは難しい。国内の移住ブームにも、どこかの村に大量移住すれば、地方議会を掌握できてしまう懸念がある。どこまで認めるかは、丁寧な議論が必要だ」と、慎重な姿勢を取った。
沖氏は「地方参政権も反対」との立場を示す。「中国には『砂を混ぜる』という政策がある。内モンゴルやチベットの自治をさせると言いながら、そこで80%の人口を取って、中国語で教育を行う。彼らが水源などのインフラを抑え、不動産売買を規制すれば、日本国民が今までと同じ生活ができなくなる可能性がある。その地域を完全にのっとることができてしまう」と、危険性についても言及していた。
(『ABEMA Prime』より)
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