【写真・画像】ハリス氏の強みと弱みは? 専門家「分断と拮抗の中、現在の差は誤差のようなもの」 1枚目
【映像】「ルールを破るペテン師、私はトランプのような人物の相手は得意だ」と話すハリス氏
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 銃撃事件以降、トランプ氏が勢いを増していた状況の中、有名投資家やアーティストが相次いでハリス氏への支持を表明するなど、バイデン氏の撤退によって選挙戦は大きく動き出した。

【映像】「ルールを破るペテン師、私はトランプのような人物の相手は得意だ」と話すハリス氏

 ハリス氏の強みと弱みとは何か? これからの選挙戦はどうなるのか? アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授に聞いた。

━━ハリス氏にはどのような強みがあるのか?

「まずは『多様性』だ。ハリス氏はジャマイカ人の父、インド出身の母を持つ移民2世であり女性であり、正に“新しいアメリカ”を体現する人物だ。その意味において『新しい民主党』をPRして巻き返すチャンスなのだ。もう一つの強みは、副大統領として3年半活躍してきたことであり、やり足りなかったことは色々あると思うが、バイデン政権の中で政策などを見ながら実際に仕事をした経験はプラスだ」

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━━ハリス氏には「人気が無い」と指摘する声もあるが、どのような課題があるのか?

「バイデン政権においてあまり実績を残せなかったことだ。バイデン政権は“オバマ政権の三期目”のような形で、ブリンケン国務長官ら、ずっと同じ仕事をしてる人が政権の中にたくさんおり、そうした中で副大統領として新しい役割がなかなか与えられなかった。ハリス氏は移民問題や南部での平等な選挙の実施の徹底など共和党の猛反発があって実現が難しく実績が見えにくい仕事を任されていた。一方で、3年前に実際に本人に会った時にはハリス氏はメディア対応にもあまり慣れていない印象があったが、その後経験を積んでいるので、直近の記者会見はうまく、大いに新しいスタートを切れると感じた」

━━民主党はどのような戦い方を展開していくのか?

「若さや多様性を前面的に出していくことが民主党の戦い方になる。『もう史上最高齢の大統領候補はバイデン氏じゃなくトランプ氏だ』と一気に情勢が逆転した。若くて、これからのアメリカが民主党なのだ、とPRすることで民主党側を固めていく、というのがまず大きなステップだ。“ほぼトラ”“確トラ”などという言い方もされているが、現在の差は誤差のようなものだ。党大会が終わりピークを迎えた共和党に対して、民主党が切り込んでいくのはこれから。情勢は大きく変わりつつある。分断・拮抗の中、最後の最後まで抜きつ抜かれつという情勢になるのでは」

━━現地メディアによると、バイデン大統領の撤退表明から24時間でハリス氏に対して127億円以上の寄付が集まったという報道もある。産業界からの支持をどう見ているか?

「近年、『金額の多寡よりもどれだけ熱心に投票してくれるか』がポイントになっている。つまり、一度にポンと2000ドル寄付する人よりも、10ドル、20ドルを10回、20回に分けて寄付する人の方が熱心であり、友人にも声をかけてくれるため重要だ、という見方だ。加えて、今報じられている献金額はまだ連邦選挙委員会ではなく、自営がPRしている数字。共和党側もトランプ氏が銃撃されて以降、献金が多く集まっているとしているが、どこまで正確な情報か、割り引いて見ながら、一般の小口の献金者の動きを注視する必要がある」

━━アリアナ・グランデなど、影響力があるミュージシャンや著名人が続々とハリス氏の支持を表明しており、“風が吹き始めている”と見る向きもあるが。

「残念ながらアメリカの選挙では風が大きくは吹かない。そもそもアリアナ・グランデやケイティ・ペリーは以前から民主党を応援するだろうと皆が思っている。バイデン氏に対しては‘好々爺”、というイメージの応援だったが、ハリス氏の場合は“我々のリーダー”という応援の仕方になる。そう言う意味では民主党にとっては追い風にはなるが、これまで共和党支持者だった人が『ジョン・レジェンドが応援しているから、ハリス氏に投票しよう』となることはない。共和党を応援するセレブリティもいるが、こうしたセレブリティらの応援は、言ってみれば“大きな選挙産業の中の1つ”と見ている人もいる。『選挙産業として、この人を担いでPRして、人種マイノリティの力や、アメリカの変化などをパッケージしていく』というものだ」

━━情勢が拮抗しているということは、何が決め手になるのか?

「民主党と共和党の支持者はそれぞれ3割程度であり、残りの無党派の中の民主党寄り共和党寄りをいかに固めるかで勝負が決まる。無党派の中であまり選挙に行かない人たちを最終的には個別訪問して説得していくのが今のアメリカの選挙だ。その際も『あっちが頑張ったから、こっちも頑張らなくては』という形になるため、最後まで競ってくるだろう」

━━「激戦州でハリス氏がどれだけ白人層を獲得できるか」は鍵になるのか?

「イエスでありノーだ。激戦州の世論調査は統計力などによって、誤差が大きい上に、都市部では民主党が強く田舎の方は共和党が強いというバランスがある。そんな中、田舎の白人層を集中して狙ってしまうと“新しい民主党”をPRできず失ってしまう票もあるだろう。そこで大事になるのが副大統領候補だ。たとえばミシガン州知事ウィットマー氏のような女性なのか、あるいは同性愛を公表しているブティジェッジ氏らを副大統領候補にしてPRするのか。この点については陣営も日々分析しているだろう」

━━大統領選の行方は環境問題やウクライナ、パレスチナなどの戦争にどのような影響を及ぼすのか?

「実は共和党支持者には『そもそも気候変動なんて起こっていない』と考えている人も多い。トランプ氏も『化石燃料復活の時代だ』と訴えている。そのため、トランプ政権になると欧州の考え方とは“差”が出てくるかもしれない。一方、トランプ氏はウクライナやイスラエルとパレスチナの問題については『どのようにして終わらせるか』ということになるが、トランプ氏は『当選したら就任までにやめさせる』と言っているが、これはウクライナ側に諦めさせるのか、ということ。国連の常任理事国であるロシアによる戦争犯罪に対して、『とりあえずやめさせる』という対処でいいのか、という問題が生じる。イスラエルとハマスの問題も、共和党側はイスラエルを勝たせる方向にもっていこうとするが、民主党側はオスロ合意の2国家共存を考えている。今後の演説で双方からどのような言葉が出てくるか注目したい」
(『ABEMAヒルズ』より)

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