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【映像】五輪辞退を発表した会見の模様
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 パリ五輪の開幕直前、女子体操日本代表の主将・宮田笙子選手が、プライベートの場での喫煙とトレーニングセンター内での飲酒行為を理由に出場を辞退した。強化合宿中に内部通報で発覚し、合宿から離脱。協会側が本人と話したうえで、出場辞退に至った。

【映像】五輪辞退を発表した会見の模様

 これに対して、多くの疑問や非難があがり、ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏も「他人に迷惑をかけない喫煙をした19歳がオリンピックの夢を奪われるのは過大すぎる」とXで反応。宮田選手は2カ月後に20歳になるが、現在は法律違反だ。SNS上では「罰が重すぎる」「ルールには厳格であるべき」との議論が交わされている。果たして、出場辞退は厳しすぎるのか。『ABEMA Prime』では、ひろゆき氏を交えて議論した。

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■賛否両論を大きくした協会会見「取材した事実とだいぶ異なる」「辞退じゃなくて実質的な処分」

 「五輪辞退はいたしかたない」と考えるスポーツライターの小林信也氏は、「記者会見を見ると『厳しすぎる』と思うのは当然だが、記者会見で語られていた内容は、取材した“事実”とだいぶ異なる。取材を通して『一度ではない』と聞くと、辞退もやむを得ない印象を覚える」と語る。

 スポーツ庁のスポーツ審議会委員の境田正樹弁護士は、反対に「今回の五輪辞退は厳しすぎる」との見方を示す。「宮田選手がモナコから呼び戻されて、協会役員の事情聴取を受けて、翌日会見したという手続きに違和感がある。本人は辞めざるを得ない状況に追い込まれた」。不利益な処分を科すのは「絶対的な権力者」だとの考えから、「弁護人もいないなか、密室で『辞めざるを得ない』と処分が下されたのではないか」と推測する。

 境田氏自身も各スポーツ協会で理事を務めている経験から、「調査委員会で専門家が判断して、最終的に理事会が決定する案件だが、そうした過程もなく、役員が早急な幕引きを図ったように見える」と指摘する。「協会としての処分は結局下されず、『本人が辞退した』とされているが、実質的な処分だ。透明性や公平性なしに、人生を奪ったのではないか」。

 コラムニストの河崎環氏は、「同じ女性の立場から見ると、記者会見で『プレッシャー』という言葉が繰り返されていたことが気になった」と指摘する。「あの場で許された唯一の弁護だったのではないか。19歳の少女の双肩にプレッシャーがかかっていたのは否定できない」。

 境田氏も「追放に近い処分を科すのであれば、そこに至るデュー・プロセス(適正な手続き)が必要だ。彼女にもいろいろ弁明があるかもしれない。しかし、それを調べず、報じず、不利なうわさばかりが流れる。体操協会としては、自分たちが責められないために、辞退してもらわないと困る」と協会側の動きを問題視した。

 日本体操協会は行動規範として、20歳以上であっても、代表活動中は飲酒禁止と、喫煙の原則禁止を定めている。小林氏は「記者会見を正当化するために、規範を示したとも思われるが、そこには“やぶ蛇”な部分もある。『今まで20歳以上の選手は吸ってなかったのか』とツッコまれる側面を持ち、選手と自分たちを守ろうとすることが、かえって誤解を生んでしまった」と、喫煙の実態にも触れた。

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■ひろゆき「内部ルールを作るのはよくない」「法律上の処分は受けた。それ以外の罰はいらない」

 ひろゆき氏は「法律以外の内部ルールを作るのはよくない」と語る。「変な権力を作らないためにも、基本的に成績で決めるべき。『品行方正であれ』というのは理解できるが、そうでない人でもスポーツが得意で、成果さえ出せば、日の丸を背負える環境を残したい」とした。

 未成年の喫煙・飲酒に関しての法律は、20歳未満を保護するためのものであり、制止しなかった親権者などは制止義務違反として科料などがあるが、本人への罰則規定はない。「刑務所に行くなどの刑罰はないが、注意されることで、法律上の処分は受けた。すでに罪を償ったと言え、それ以外の罰はいらない」と、辞退へと追い込んだのは行き過ぎだと改めて主張した。

 境田氏は、ひろゆき氏の「内部ルール」をめぐる持論に理解を示す。「協会役員の好き嫌いで、処分が変わってはいけないため、不祥事に対して科す不利益は、ある程度ルール化されている。しかし今回は、役員だけが密室で決めた。違法性の程度や常習性、被害者の有無、チームへの影響などを考慮して、処分を決めれば納得がいった」と述べた。

 そして今回の問題は、協会側の手続きにあるとする。「家族は同席したとされるが、そこに協会上層部がいて、『出ないよな』と言われれば、19歳の女の子は『はい』と言うしかない。スポーツ庁が“ガバナンスコード”を作り、全競技団体に順守を求めているが、今回はその手続きを経なかった」と、過程についても言及した。

 小林氏は「記者会見で会長が『五輪に出してあげてもらえませんか』と言った方が、よっぽどスッキリした」と振り返る。その上で「そういう結論に行かなかったのには、なにか事情があったのではないか」と推測する。「スポーツ界には支配体制があったが、数年前にパワハラ問題が多発し、監督やコーチ、連盟や選手の関係が大幅に変わった。いまは実力評価のウエートが高い。体制が変わった環境下で、宮田選手は代表入りしていたが、直前にどんでん返しが起きたのは不思議だ」と、各競技で起きた不祥事を踏まえ、透明性が進んだ上で起きた今回の騒動に首をひねった。

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■日の丸を背負う「日本代表」と「五輪」は特別か

 河崎氏は「五輪レベルの選手育成が、青少年育成と次元が変わるのは理解できるが、やはり日本のスポーツは本来、青少年育成のための場だ」と感じている。「選手に注意して、協会内の罰を与えることまではわかるが、五輪出場を辞退させるところまで追い込み、4年間の選手人生を奪うのはバランスが悪い」。

 ラッパーの呂布カルマは、喫煙について「たまたま1回だと信じるのは無理」としつつ、「五輪だから」という論調に疑問を投げかける。「五輪に興味のない自分からしたら、高校球児が喫煙して、甲子園に出られないのと何が違うのかと感じる。小学生の時から目指していて、たばこが見つかって出場不可となるのと同じではないか」と、日本を代表して戦う大会の特別視を警戒していた。
(『ABEMA Prime』より)

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