【写真・画像】“もしトラ”でEVに逆風? イーロン・マスク氏の支持表明は「業界全体がダメージを受けてもテスラは十分に体力がある」 “EV不毛地帯”日本がとるべき戦略は 1枚目
【映像】1位はフォード アメリカ新車販売車種“トップ10”
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 バイデン大統領が撤退を表明し、新たな局面を迎えたアメリカ大統領選。その行方を強い関心を持って見ているのが自動車業界。共和党の候補に正式指名されたトランプ氏は、バイデン政権が進めているEV(電気自動車)の普及策を見直し、補助金を廃止すると公言している。

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 CO2削減のため世界規模でEVへの転換が進められているが、アメリカでは販売の勢いが減速。ハイブリッド車がシェアを伸ばし、ヨーロッパでも合成燃料エンジンの容認や、2030年までに新車販売のすべてをEVにする計画を延期するなど、EVシフトが緩和されている。

 そんな中、EV大手「テスラ」のイーロン・マスクCEOは、トランプ氏への支持を表明。一見矛盾するようにも思えるが、そこにはどのような思惑があるのか。そして、“もしトラ”で起こる影響は。『ABEMA Prime』で議論した。

■“もしトラ”の影響は? マスク氏の支持表明は「テスラは体力があるから」

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 ジャーナリストの岩田太郎氏は、トランプ氏が再選したとしても「すぐに天地がひっくり返るような変化は起こらない」と指摘する。「大統領令でできることは限られていて、EV推進の根拠法となっているインフラ法とインフレ抑制法を、議会で改正・廃止する必要がある。上院と下院のどちらかを抑えられなければ、民主党が抵抗して廃止できないので、惰性的にEV推進は続くことになる」。

 一方、EV販売台数に陰りが見られる現状について、アーリーアダプターは入手済みであり、普及しない地域にはその地域の理由があること。テスラの廉価版が2〜3年以内に登場予定であることや、レンタカー会社が大量売却していること。アパートは夜間の充電が難しかったり、充電ステーションに列ができたりするなど、充電問題が解消されていないことをあげる。

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 そんな中、マスク氏はなぜトランプ氏を支持するのか。完全自動運転の実現を目指すチューリングCOOの田中大介氏は、「例えば、去年世界で一番売れた車はテスラの『モデルY』だ。業界の中でもかなりの地位にいて、体力も十分にあるので、EV業界全体がダメージを受けてもそんなに食らわない。また、AIやロボタクシーに軸足を置いていて、直近でも大きなブレイクスルーを起こしている。つまり戦える別のフィールドを持っているので、トランプさんを支援しても自分たちは相対的に良いポジションを築ける、という戦い方ではないか」と述べた。

■EV普及は踊り場に?今後も普及?

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 岩田氏は、アメリカにおけるEV普及は「踊り場に入った」との見方を示す。「テスラが2025年に小型の廉価モデルを出すという話がある。また、フォード、BMWなんかも、小さい型にチャンスがあるのではということで開発を急いでいる。ボルボの『EX30』が期待されていたが、中国との貿易摩擦や技術的な問題もあり、まだアメリカには入ってきていない。そこでEV普及が踊り場に入ってしまった感じはある」。

 EUは、2035年にガソリン車の新車販売を禁止するとしていたが、合成燃料のエンジン車を容認していく方針に変更し、2023年にはハイブリッド車のシェアが拡大。また、ドイツではEV購入補助金を終了し、メルセデス・ベンツは2030年の新車販売の全EV化を延期した。

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 田中氏は世界の状況として、「自動車は政治的・地政学的な要素を多分にはらんでいる産業で、EVの普及は国や地域ごとに見る必要がある。普及率が高い所ではまず補助金と、ガソリン車に対するペナルティがあり、“EVのほうがコスパが良い”ということで普及しているかたちだ。また、欧州ではディーゼルゲート事件により、EVに思いきり振っていった流れがある。そんな中で、政治的な要素に目をつけて思いきり伸ばしてきたのが中国。今、ものすごく輸出を強化していて、欧州はやられている状況があり、この政治的ブーストは若干お休みになるのではないか。ただ、中・長期的にはEVの普及率は上がっていくと思う」との見方を示す。

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 一方、岩田氏は「アメリカは自動運転で事故が起きた時、2、3カ月後に“ソフトを改修した”“今度は大丈夫だ”と、失敗したら少し休んで立ち上がって、という繰り返しだ。EV普及が再び加速するのはおそらく2年後。フォードやテスラ、BMW、ボルボなどが新しいモデル、みんなに手が届くモデルを出せば、はずみがつくのではないか」とした。

■日本はハイブリッド車で攻めるべき?

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 日本の新車販売(普通乗用車)において、EVの割合は2023年で1.7%(4万3991台)。田中氏は、補助金は出てもハイブリッド車に価格で勝てないこと、新車販売の3分の1は軽自動車でEVの選択肢がそもそもないこと、バッテリーが原価の6割で儲けが少なくメーカーに売るインセンティブが働かないことから、「日本はEV不毛地帯だ」と指摘する。

「EVは買う人をめちゃくちゃ選ぶ。自宅充電ができなければ、“そのメーカーが好き”などの強烈な信仰心や、家族がその会社で働いているなどの理由がいる。日本の自動車産業はハイブリッドで世界の覇権をとり、間違いなく一番外貨を稼いでいる。トヨタやホンダ、日産など国を誇る企業がある中で、お膝元で不利なことをしなくてもいいのではないか」

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 とはいえ、チューリング社のミッションは「テスラ超え」だ。「テスラはフルセルフドライビングのバージョン12が出て、これがブレイクスルーを起こしている。ニューラルネットワークを制御に活かし、動画を見ると人間より上手だ。テスラは自動車会社という枠で捉えられているが、明確にAIの会社だということを証明している。NVIDIAのチップに何千億円も投資しているが、AIに軸足を置いているイーロン・マスクだからこそできる経営判断で、普通の自動車会社にはできない。僕らは頑張ってそこを一直線で追いかけようとしている。自動運転のレベル5の概念はまだ社会的にも法的にも認められていないが、テスラのようなやり方で人々が慣れていけば、“自分たちはどう受け入れるべきか”という社会的な情勢は高まると思う」と展望を語った。(『ABEMA Prime』より)

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