「船の墓場」と呼ばれる、船の不法係留が問題となっている。東京都江戸川区と千葉県市川市の境を流れる旧江戸川を訪れると、朽ちた船が沈んでいる様子が目に付いた。他にも、船の残骸が散乱し、ゴミ置き場のような状態に。東京側は整備されているが、千葉側は“無法地帯”となっていた。
水辺の問題に詳しく、船舶の免許スクールを運営する、東京都港区議の榎本茂氏が背景を語る。
「プレジャーボートはすべてマリーナに係留することになっているが、コストも高く、『高いところが嫌だ』と不法係留する。そうすると結局、管理が行き届かず、水も電気もないため沈んでしまう。そして捨てられる悪循環がある」(港区議・榎本茂氏)
これらの船は「そもそも持ち主がわからない」という。船体番号のステッカーを剥がせば、誰が所有者なのか不明になり、「1隻処分するのに、100万円や200万円では無理」だとも話す。加えて船ならではの事情として、車庫法がなく車庫証明が不要な点もある。「自動車のように『止める場所を確保しないと船を買っちゃダメ』と、購入時の条件になっていない」という。
現在進行形で「墓場」となりつつある場所もある。ABEMA的ニュースショーでは、千葉県富津市の新富水路を取材。川幅およそ70メートルの範囲に、見渡す限りの不法係留船で、実際に確認すると150隻もあった。
釣り船を営む男性は「元々は不法係留だったが、登録制になってから、『私の船はここに置いてある』と届け出がしてある。工事などで『退きなさい』と言われたら、無条件で出ないといけない」と説明する。近くにプレジャーボートを止められるマリーナもあるが、年間数十万円から数百万円かかるため、金銭的な問題で不法係留する人が多いという。
先祖代々、この街に住む男性が語る。「前はこんなになかった。(指さしながら)ここまでは漁業権があるが、この辺にはない。漁業権がある人は港の中に係留している」。管理する木更津港湾事務所によると、新富水路は原則プレジャーボートの不法係留が禁止されているが、現時点でおよそ340隻の不法係留船が確認されているという。
「当然、監視・パトロールしている。張り紙や、所有者が判明していれば移動を促す手紙を出したりしているが、なかなか減らない。多少減ってもまた増えていく、いたちごっこ。地道な活動だが、指導してこれ以上増やさないようにしなければならない」(木更津港湾事務所の担当者)
行政が取り締まることはできないのか。船舶の法律に詳しい行政書士の高松大氏は、河川法による罰金刑はあるものの、「誰も告発しない」と解説する。現行の河川法では、河川に船や車両などを無断放置した場合、3カ月以下の懲役、20万円以下の罰金が課せられる。無断で桟橋などの工作物を設置すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる可能性があるという。しかし、これは刑事告発があればの話で、通報がなければ取り締まることもできない。
「『行政代執行すれば?』と言っても、代執行は血税から出るため、議会の承認を得られないこともある。いざ撤去しても所有者が死んでいたら、どれだけ(作業費用を)回収できるのか。目をつぶるというか、どうしようもない」(高松海事法務事務所・高松大氏)
千葉県市川市を流れる真間川でも、およそ500メートルにわたって、船が係留されている光景が見られた。沈没し船体が朽ちてしまっているものや、壊れた自動車もあり、河川敷には約50隻の船と15台の車が放置されていた。
各地が「船の墓場」と化していく中で、打てる対策はないのか。榎本氏は「船を撤去しようとすると、代船を持ってきて、ダイバーが潜りワイヤをかけるなど処理費用がかかる」と話す。
「これを税金でやるのが適切かどうかと議論になると、ほったらかしになる。所有者責任を法体系で持たせることが大切だが、そうはなっていない。日本は『全面的にダメ』から、『例外的にここはいいよ』とやるから、停泊所の料金が高くなり、勝手に係留してしまう。手作りの桟橋をいっぱい作って崩れ、船もダメになる悪循環がある」(榎本氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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