革新的なアイディアで今までにないビジネスを作り出すスタートアップ企業。
日本でも急速に伸びているものの、その規模は世界的にはまだまだ。短期間で企業評価額が1400億円を超える成長を見せる非常に稀な成長を見せるユニコーン企業はアメリカの100分の1程度と言われている。
そんな中、シンガポールに本社を構え、これまで1000社以上に投資してきた世界的ベンチャーキャピタルが、この秋、東京で「10週間にわたる集中ブートキャンプ」を開催する。ここに集まるのは、将来のユニコーン企業のトップを狙う優秀な人材たち。彼らを10週間かけて早朝から深夜まで、独自のメソッドで鍛え、会社を創業するチームを結成。そのビジネスアイディアを磨き上げる。
最終的にはベンチャーキャピタルは、最大10社に対して2800万円を投資する予定だ。このプログラムを率いるのは、日本で起業経験のあるジョーダン・フィッシャー氏だ。彼は生活密着型のマッチングサービス「ゼヒトモ」を創業し、これまで37億円の資金調達に成功した。
起業のきっかけは不動産会社に窓の工事を相談したことだという。
「不動産会社に『2重窓にできないか?』と相談をした際、『私たちは大手なのでもちろんです』と言われたが、その後コンシェルジュを紹介され、それから下請け、さらにその下請けと複数の中間業者を経由して、なぜか大阪から東京まで窓を測りにきた。結局、1カ月ほどかかって届いた見積もりは約400万円。私は納得できず、妻と一緒に様々なところに問い合わせて、最終的に神奈川県にある社員3人名ほどの専門会社に依頼。1週間後に40万円で工事してもらい、おまけでベビーモニターまでつけてくれた」(ジョーダン・フィッシャー氏)
これがきっかけでジョーダン氏が思いついたのが、日常生活の様々な問題に対し最適な業者と繋げてくれるマッチングサービス「ゼヒトモ」だ。
雪かき代行やペットのお世話など個性的な依頼でも業者が見つかり、登録事業者10万人、登録ユーザー100万人という規模に成長した。
そんな母国アメリカから遠く離れた日本で起業したジョーダン氏だからこそ、日本のスタートアップ業界の“ある課題”に気付いたという。
「日本起業は売上が1億円の時に上場を考え始め、10億円で上場するが、海外視点ではちょっとあり得ない。狙っている“市場の大きさ”が足りない。これでは、100億円を投資して何兆円の会社になるというポテンシャルがない。また、自分の(会社の)成長率も不足している」
さらに「日本で起業する人の一番の課題は野望が足りないことだ。ひょっとしたら野望を持っているかもしれないが、実際に起業し大きな会社を作るための筋肉がついていない」と指摘した。
今回の10週間の集中ブートキャンプは東京で開催されるが、日本人の応募はわずか2割ほどだという。
ジョーダン氏は「次の時代のソニーやトヨタのような企業を作っていかなければならない」と日本のスタートアップに変革をもたらしたいという熱い気持ちを語った。
ベンチャーキャピタルなどによるブートキャンプにはどのようなメリットがあるのか?
VISITS Technologies株式会社 CEOの松本勝氏は「指導を受けたり、ピッチ(短く説得力のあるプレゼン)をして資金調達を得る以外にも、『あのプログラムに選ばれたならば安心だ』などと信頼を得てその後の企業成長の資金調達もしやすくなることも可能だ。日本にはこういったケースがなかなかないが、そういう文化ができれば、こうしたプログラムに参加することで信頼を得やすくなる」と解説した。
さらに、参加者同士のコミュニティができることを指摘し、「プログラムに参加した人同士のコミュニティができ、終了後にも、苦しいことがあった際に慰め合ったり苦しい時も助け合うことができる。さらに、情報も手に入りやすくなるのでメリットは大きい」と語った。
また、松本氏は日本人の応募者が2割程度だったことについて「すでに資金調達をしている起業家などはプロダクト作りなどで忙しく、本当は参加したくても他に時間を割けない状況だったのでは」と推測。さらに日本のスタートアップは上場するタイミングが早すぎるため、もっと規模を大きくしてユニコーンを目指すべきではないか、という指摘に対して「日本における投資家と起業家の関係性」を説明した。
「理想的にはその通りだ。だが、日本のスタートアップは赤字でもいいから世界最速でプロダクトを作って将来大きく成長するという戦略を取っている。ただ、赤字なので定期的に資金調達をする必要がある。ところが、ある程度会社の規模が大きくなってくると、日本では出資してくれる投資家の数が減ってくる。起業直後は資金調達しやすいが、次のステージではより高い成果が求められハードルが高くなっていき、どんどん淘汰されていくのが実情だ。実は、ベンチャーキャピタルの投資サイクルの多くが10年なので、10年以内に回収しなければいけない。回収するには上場が必要なので起業後10年が近づくと投資家から『そろそろ上場してくれよ』というプレッシャーがかかり、そこまで成長できない」
アメリカに比べてまだまだ小さな日本のスタートアップ市場。だが、この10年で資金調達額は10倍となり、ユニコーン企業も7社輩出されたという実績もある。
この点について松本氏は「全体的に非常に盛り上がっている。アメリカの利上げなどを受けて少し落ち込んだが、大きな流れとしては非常に伸びてきている」として、日本のスタートアップ環境を語った。
「スタートアップがどんなビジネスモデルで、社会にどういう価値をもたらすのか、だんだんと世の中に認知され、応援する施策やファンドもどんどん立ち上がってきてエコシステム全体が活性化してきている。今までであれば『起業方法』や『ビジネスの作り方』が全然わからないことがあったと思うが、国が政策を進めたり、今回のように国外から日本に来て支援をしてくれたりと環境が揃ってきている」
そもそもなぜ、日本は国を挙げてスタートアップを応援しているのか?
松本氏は「アメリカでは、かつてスタートアップであったGAFAも少し前まではベンチャーだったがいまや国の経済を活性化しており、将来の雇用・所得・財政を支える新たな担い手になっている。とはいえ、何もサポートしなければスタートアップが作った斬新なサービスも大企業にマネをされて潰されてしまう。そのため、フランスでもニューヨークでも政策的にスタートアップを支援し、活性化させているのだ」と説明した。
松本氏は「東大生の進路にも変化が起こっている」と指摘する。
「昔は一番優秀な学生はトラディショナルな大企業に就職していたが、最近はトップの学生は起業し、次に優秀な学生はスタートアップを選び、そうではない学生が大企業に行くという順序になってきている。シリコンバレーでは起業する人がトップであり『GAFAに行く』となっても、『起業する準備がまだできてないのね』と見られる。日本もどんどん変わってきている」
最後に松本氏は「日本のスタートアップをさらに伸ばすためにはマインドと仕組みの両輪が必要だ」と強調した。
「起業する意味はなんだ、社会的にどんな価値を生み出すのか、といった『やるぞ』というマインドと、国などが仕組みを作っていく両輪が大切だ。この両方が合わされば大きなユニコーンのようなスタートアップが生まれてくるはずだ。起業を志す人は先人などから積極的に情報を取りにいったり、成功と失敗のポイントは何なのかを吸収して学びながら成長すると、筋肉がついていく。ビジョンで共感し合える仲間も集めてほしい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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